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研究報告会レポート

第10回アジア・マーケティング研究報告会レポート「地方の観光地と世界の観光客をつなぐ —デジタルプラットフォーム「TXJ」によるデスティネーション・マーケティング—」

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テーマ:地方の観光地と世界の観光客をつなぐ —デジタルプラットフォーム「TXJ」によるデスティネーション・マーケティング—
ゲスト:村木 智裕 氏(株式会社Intheory 代表取締役)
日 程:2021年1月26日(火)18:00-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 村木氏は広島県庁、せとうち観光推進機構を経て、現在Intheory代表取締役としてDMO(destination management/marketing organization)に関する活動を行っている。村木氏の講演を以下にまとめる。観光コンテンツを磨き上げ、消費者の認知、態度変容から来訪に至るプロセスを市場のムーブメントにするには、数年から数十年という多大な時間を要する。こうした長いスパンで施策を検討する際には、4PsのPlace(流通)とPromotion(販売促進)を分けて考えること、そして、KGI・KPIの段階的なマネジメントが重要である。
 PRの視点も欠かせない。メディアとの関係を継続することによって、海外の有力メディアでの掲載が期待できる。日本とは異なり、英国や米国などの海外ではFIT(foreign individual tour)が旅行会社経由であるという場合が少なからずあり、コンテンツを開発する際には旅行会社との関係構築も重要である。また、行政やDMO、旅行業界等が連携を取っていく際には、リソースを充実させなければならない。リソースを確保しつつ、強みを生かし、不足するものを補完するというステークホルダーとの関係性の最適化を図ることが重要である。
 これを実現するためには、政府、航空、宿泊、旅行会社、SNS、マスコミ等のホームページやデジタルを活用した施策が必要である。村木氏が携わるTourism Exchange Japan(TXJ)は、サプライヤー、流通業者の情報を一元化して、顧客に提示する情報システムである。TXJを通じて、可視化されていない消費者行動情報が明確になり、今後さらに広域的に連携した活用が期待されるだろう。
 質疑応答では、制限時間いっぱいまで参加者から積極的に質問が寄せられた。村木氏からは、効率的なアクセス環境を整備するためには先に需要が喚起されていなければならない、観光地という「1つの商品」を作り出すためにイニシアチブを取る主体を決めることは難しい、流通を担う人と情報発信する人の情報は全く異なるなどの回答がされた。
 多様なステークホルダーが介在する観光業界においてコンセンサスを取り、情報を収集して新しい観光地を創造することは多大な困難を伴う。しかし、村木氏が手掛けるDMO事業では、メディア・リレーションズ担当者を固定することで、継続的にパブリシティを生み出す仕組みができていた。それにより、地域内のシビックプライドを醸成されて、新たなコンテンツと情報発信がされるという長期的な好循環が生まれていた。
 
報告の様子 村木氏を囲んだ記念撮影
写真左は報告の様子、写真右は村木氏を囲んだ記念撮影  
 
(プロジェクトリーダー:薗部 靖史)

 
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