日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2018」 |
2018.10.15
日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2018」
日本マーケティング学会は、本年より、マーケティング理論や実践の普及のため、日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞」を発表します。これは、1年間に日本で出版されたマーケティング書籍(翻訳本を除く)を対象に、日本マーケティング学会の会員が推奨する優れたマーケティング書籍として投票形式で選出するものです。「日本マーケティング本 大賞」は、10月14日(日)に開催された「マーケティングカンファレンス2018」の懇親会(リーガロイヤルホテル東京)にて、発表および授賞式が行われました。
第1回目となる「日本マーケティング本 大賞2018」の受賞書籍は以下の通りです。なお、以下の推薦理由は、2次投票の際に記入された個別の推薦理由を事務局でとりまとめたものです。
日本マーケティング本 大賞2018 大賞
『ブランド戦略論』
田中 洋、有斐閣、2017年12月刊行
推薦理由
「ブランドに関する広範な知識を現代的な視点から体系化した大著」
マーケティングにおいて重要なコンセプトであるブランドに関する広範な情報や議論を網羅し、現代的な視点から体系化することによって、実務家・研究者の双方がブランド戦略を俯瞰的かつ深く理解できる良書である。
ブランドに関する議論を「理論」「戦略」「実践」「事例」の4つの観点から整理しており、幅広い読者が自らの関心領域を入口にブランド戦略を多元的に考察できる内容になっている。特に30もの事例集は圧巻であり、読む者を飽きさせない。さらに、どの時代にも通底する社会や人々の生活を起点としたブランド戦略の本質が語られており、ビジネスのあるべき姿が描かれている点も評価に値する。
日本マーケティング本 大賞2018 準大賞
『世界最先端のマーケティング:顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』
奥谷 孝司・岩井 琢磨、日経BP社、2018年2月刊行
推薦理由
「理論と実践の双方からオムニチャネルの本質に迫った意欲作」
流通・小売業において喫緊の課題であるチャネル環境の変化や、オフラインとオンラインを融合するオムニチャネルについて、その最新動向や狙いを理論的かつ分かりやすく解説した良書である。
オムニチャネルという変化の速い領域を対象にしているが、最新の事例が豊富で情報の鮮度が高く、チャネルシフトなどの分かりやすい理論フレームを用いて事例を分析することで、理論と実践の双方からオムニチャネルの本質に迫っている。デジタル時代の顧客体験のつくり方について理解が深まるとともに、顧客とのつながりの重要性やこれからのマーケティングのあり方を考えることができるだろう。
『欲望する「ことば」:「社会記号」とマーケティング』
嶋 浩一郎・松井 剛、集英社(集英社新書)、2017年12月刊行
推薦理由
「『ことば』が市場を生み出すプロセスを明らかにした刺激作」
「ことば」という捉えにくくもマーケティングに強い影響力を持つ要因について、それがどのように人々の思考や生活様式を変え新市場を生み出すかという価値創造のプロセスを論じるとともに、実践的な示唆も得られる良書である。
欲望を捉えた「ことば」が社会に定着した「社会記号」になるプロセスを、広告業界とマーケティング研究の第一人者が実務家と研究者の双方の視点から明らかにしている。また、市場の意味について実証的に明らかにしようとしている点も興味深い。今後のAI技術の進歩などにより、さらに深い考察が行われる可能性のある分野に切り込んだ着眼点が秀逸であり、刺激的な面白さに満ちている。