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第122回マーケティングサロンレポート「これからの都市ブランディングとは？～ランキングから、意味のブランディングへ」 |
#いまマーケティングができること
第122回 マーケティングサロン：オンライン
「これからの都市ブランディングとは？～ランキングから、意味のブランディングへ」
日程：2021年1月20日（水）19:00-21:00
場所：Zoom使用によるオンライン開催
ゲスト：株式会社電通 クリエイティブ・ディレクター 若林 宏保 氏
サロン委員：山口 夕妃子・副田 治・小野 和美
【サロンレポート】
今回の九州サロンは、日本マーケティング学会カンファレンス2020でベストオーラルペーパー賞を受賞した「都市ブランドの意味構造の類型化に関する一考察〜関係人口時代における新たなブランド戦略構築に向けて」の研究チームのお一人である株式会社電通の若林宏保氏をお招きしました。地域ブランディングで用いられるブランド指標は、都市の相対的な位置付けを示すものがほとんどで、ブランド・ストーリーを導くような想像的な示唆に乏しいのが現状。「ランキングから、意味のブランディングへ」という視点から、これからの都市ブランディングのあり方を紐解いていただきました。
【概要】
若林氏らは、全国52都市を対象都市として、首都圏に居住する20代から60代の男女1600名を対象に、各都市に対する8つの行動意向と、都市イメージの自由連想による意味構造の調査を実施し、都市を4つのクラスターに類型化しています。
講演の前半では、まず、リッチ・ストーリー型、ユニーク・ストーリー型、コモディティ・ストーリー型、ノン・ストーリー型と命名されたそれぞれのクラスターの特徴、該当する都市、代表的な都市の意味構造を解説。さらに各クラスターがこれから意味のブランディングへシフトするためには、意味構造の特徴を踏まえてどのような方向を目指せばよいのかを示唆していただきました。
＊各クラスターの意味構造の特徴は下記をご参照ください。
> カンファレンス2020オーラルセッション報告概要
> マーケティングレビュー Vol.2 No.1
九州サロンでの開催にちなみ、九州の都市の事例を豊富にご紹介いただきましたので、地元参加者の熱量もグッと高まりました。ちなみに、調査対象となった九州8都市は、「リッチ・ストーリー型」と「ノン・ストーリー型」には該当がなく、「ユニーク・ストーリー型」に長崎、鹿児島、宮崎、福岡が、「コモディティ・ストーリー型」に佐賀、北九州、大分が該当しているとのことです。
講演の後半は、「場所＝PLACEはどう作られるのか？」というテーマのもと、近年、横浜市の意味構造を大きく変えている「みなとみらい」について「プレイス・ブランディング」の視点からの考察の紹介。「みなとみらい」の成功要因として、①立地が明確、②海が街の延長/港町体験（センス・オブ・プレイス）、③キーマンの存在と、民間・行政一体となった世代を超えたコンセプトの継承、④自律的なコンテンツの創出（「赤レンガ倉庫」「ランドマークタワー」など）が挙げられました。
若林氏は10数年間「プレイス・ブランディング」の研究と実践に携わっておられますが、「これまでの地域ブランディングは、どういう方向に持っていくかの議論が不十分」だと感じていたと言います。「ランキングだけではなく、意味構造を取り入れながら、行政・民間が一体となった共創型で、クリエイティブに方向性を探っていくことをもっと普及させたい。本研究をそのベースに。」と講演を締め括られました。
講演後のディスカッションでは、
- 「今回の調査対象者は首都圏在住者だが、居住者との比較もみてみたい」
- 「意味のブランディングによってどのようにブランド力が高まるか、目標を達成できるかを評価することも検討しているか」
- 「目指すべきところはリッチ・ストーリーなのか。リッチ・ストーリーに限定せず、個別に独自性を生かしたブランディングパスを考えるのか」
- 「各都市の都市戦略を考慮した分析やイメージ構造の解釈も必要では」
など、多くの質問や意見交換が行われました。
【サロンを終えて】
今回のサロンには、ご自身も地域ブランディングの研究に携わっておられる先生方が多数ご参加くださり、ご自身のご研究やご経験を踏まえた多様な見地から、若林氏との濃厚なディスカッションが繰り広げられたことが印象的でした。若林氏の研究発表に触発されながら「意味のブランディング」へのシフトを共に考える有益なサロンとなりました。ゲストの若林さん、参加者の皆様に御礼申し上げます。
（文責：九州サロン委員 小野 和美）
