第184回マーケティングサロンレポート 新春特別企画「日本マーケティング本 大賞2023」準大賞受賞記念マーケティングサロン『進化するブランド』(碩学舎)の著者、石井淳蔵氏による受賞記念講演&『スペシャル座談会』 |
第184回マーケティングサロン:リアル・オンライン併用開催
テーマ:新春特別企画「日本マーケティング本 大賞2023」準大賞受賞記念マーケティングサロン
『進化するブランド』(碩学舎)の著者、石井淳蔵氏による受賞記念講演&『スペシャル座談会』
日 程:2024年1月29日(月)19:00-20:30
場 所:事業構想大学院大学 大阪校およびZoom使用によるオンライン開催
ゲスト:
講演・座談会 石井 淳蔵 氏(神戸大学 名誉教授 / 流通科学大学 名誉教授)
座談会 栗木 契 氏(神戸大学大学院 経営学研究科 教授)
座談会 石橋 昌文 氏(ネスレ日本株式会社 社長室顧問)
司会 / モデレーター 廣田 章光 氏(近畿大学 経営学部 教授 / 近畿大学 デザイン・クリエイティブ研究所 所長)
サロン委員:小島 弘雄、信國 恵美
【ゲストプロフィール】
石井 淳蔵 氏
神戸大学・流通科学大学 名誉教授
同志社大学商学部、神戸大学経営学研究科の教授、流通科学大学学長を歴任。神戸大学・流通科学大学名誉教授。著書として、『進化するブランド』(碩学舎)、『マーケティングの神話』(岩波現代文庫)、『ブランド:価値の創造』(岩波新書)がある。
【サロンレポート】
● 石井 淳蔵先生 ご講演『進化するブランド:オートポイエーシスと中動態の世界』
「日本マーケティング本 大賞2023」にて準大賞を受賞された『進化するブランド:オートポイエーシスと中動態の世界』(碩学舎)の著者である石井淳蔵先生に、同書の内容について、具体的な事例を多く織り交ぜながら、ご紹介いただきました。
講演内容
「オートポイエーシス」とは「自己創成」とも訳され、生命が自身の細胞を創り出しつつ成長する姿。企業だと、みずからの伝統やスタイル(「らしさ」)を追求しながら、それに相応しい目的や革新を生み出し成長する姿、そのものである。「組織がみずからの同一性を保ちつつ変容する」姿は、日本人にはなじみがあり、実際にそうした組織をつくってきた。
「中動態」とは、能動態でも受動態でもない、もうひとつの「態」。「山が見える/本が書けた」式の中動態の文章には主語がなく、主体も見当たらないが、欠陥文章ではなく、その表現を通じて、自分自身を含んだ「コトの世界」が立ち上がっている。日本人は、自分を場として起こりつつある「コト」を把握しようとする傾向がある。
欧米型ブランディングは「市場の中にブランドがある」。日本型ブランディングは「ブランドの中に複数の市場がある」という違いがある。日本型ブランドは、周知を集め、コト/現場主義を重視した日本的経営のなか、オートポイエーティック・システムや中動態の言語用法を強みとし、進化していく。
『進化するブランド』:実践上のまとめ
- ブランドづくりの指針はひとつ!
- 「ブランドらしさ」を追求するなかで革新が生まれる
- メンバー全員が、自由闊達に、ブランドづくりに参画する
- 変化するブランドシップ(顧客との暗黙の約束・了解)に応えるために、「現場コト情報」が重視される
- マーケティングや経営を見る視点はひとつではない
継続する伝統のなかでも革新は生まれる - 日本型ブランディングには、目に見えない理が潜む
人や組織や社会を成り立たせる見えないメカニズム - 日本の会社において大切にしたい日本型ブランディングのスタイル
スポーツ界における「日本人らしさ」の追求の試み - 日本型ブランディングのカギは、「ブランドへの愛着」と「“アート”の知恵」
“アート”=その人かぎり、一回かぎりの技能
4つの気づき!
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*当日配布、投影した資料より抜粋
● スペシャル座談会 ~日本におけるこれからのブランディング
前半の講演を踏まえ、豪華メンバーによるスペシャル座談会が行われました。近畿大学 廣田先生が進行された、石井先生と、神戸大学 栗木先生、ネスレ日本の石橋氏のディスカッションは、立場の違い、見識の違いなども、率直な言葉で交わされ、大変盛り上がり、興味の尽きない時間となりました。
【サロンを終えて】
今回、関西としては、珍しく100名ほどのお申込みがあり、盛況なサロンとなりました。豪華な先生方が登壇くださり、自由闊達に意見を交わす時間は、大変ドキドキ(一部はらはら)する贅沢な体験でした。参加者の方からも「もっと聞きたかった」「ぶっちゃけトークがサロンならでは」「見ごたえ(聞きごたえ)があった」「夢のような時間」などの感想をいただきました。
また、今回は、石橋氏が2日後にネスレ日本の退職を控えたタイミングだったため、最後に花束贈呈もあり、温かいアットホームな雰囲気でサロンを終えました。懇親会で、石井先生が「関西のサロンは家族みたいでいいね」と言ってくださったのが大変印象的でした。
ご登壇いただきました、石井先生、栗木先生、廣田先生、石橋様、ご協力いただいた多くの皆さまに感謝申し上げます。ありがとうございました。
(文責:関西サロン委員 信國 恵美)