ニュースリリース

第208回マーケティングサロンレポート「レジェンド企画:『マーケティングと消費者行動、そして日本型マーケティングの課題』」

第208回マーケティングサロン:三都市カンファレンス:福岡会場
 
テーマ:レジェンド企画:「マーケティングと消費者行動、そして日本型マーケティングの課題」
 
日 程:2025年3月8日(土)16:20-17:30
場 所:福岡大学およびZoom使用によるオンライン開催
ゲスト:慶応義塾大学 名誉教授 池尾 恭一
司会:法政大学 経営学部 教授 新倉 貴士
企画運営委員:新倉 貴士
サロン担当:山口 夕妃子、小野 和美、副田 治
 
【ゲストプロフィール】
池尾 恭一池尾 恭一(いけお きょういち)
1950年、神奈川県生まれ
慶應義塾大学商学部卒業
慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学
関西学院大学商学部助教授、應義塾大学大学院経営管理研究科教授、明治学院大学経済学部教授などを歴任し、現在、慶應義塾大学名誉教授
慶應義塾大学(商学博士)
 
<主著>
『消費者行動とマーケティング戦略』(千倉書房、1991年)
『日本型マーケティングの革新』(有斐閣、1999年)
『商業学:新版』(共著、有斐閣、2000年)
『マーケティング・レビュー』(編、同文舘出版、2001年)
『日経で学ぶ経営学の考え方』(共著、日本経済新聞社、2003年)
『ネット・コミュニティのマーケティング戦略』(編著、有斐閣、2003年)
『ビジネススクール・テキスト・マーケティング戦略』(共著、有斐閣、2004年)
『戦略的データマイニング』(共著、日経BP社、2008年)
『マーケティング』(共著、有斐閣、2010年)
『日本型マーケティングの新展開』(共編著、有斐閣、2010年)
『モダン・マーケティング・リテラシー』(生産性出版、2011年)
『マーケティング・ケーススタディ』(碩学舎、2015年)
『ポストコロナのマーケティング・ケーススタディ』(碩学舎、2021年)
『入門・マーケティング戦略:新版』(有斐閣、2022年)
その他多数
 
【サロンレポート】
 今回のサロンは学会の三都市カンファレンスの福岡会場で実施されました。企画委員の新倉貴士先生のご尽力により池尾恭一先生をお招きし、企画運営委員会とサロン委員会のコラボ企画として開催されました。
 
概要
講演の様子 研究において消費者行動とマーケティング戦略の有機的結合を考えると、効用関数の多様性を考慮する必要があります。多様性の源泉は多元的知覚、評価基準、情報探索量などであり、その中で効用関数の集計や情報探索による変容を組み込んで、マーケティング諸手段のあり方を含めた因果関係の解明を行いました。その研究成果として『消費者行動とマーケティング戦略』(千倉書房)は学会の中で高く評価されました。
 しかし、この研究成果を実務家から理解してもらうのはかなり難しいと実感し、多様性を購買特性によって捉えることができないかという視点から、購買関与度と製品判断力という2つの軸で説明することを試みました。その結果、様々なマーケティングミックスの理論的示唆を『日本型マーケティングの革新』(有斐閣)という形でまとめることができました。購買関与度と製品判断力の軸でマーケティング戦略を具体的に示しました。この本は多くの実務家に好評で、様々な業界で応用されることができました。
 この本ではさらに、この枠組みにより、戦後の日本型マーケティングのあり方の説明と革新の必要性を導きました。それによれば、日本では企業ブランドや同質的マーケティングに加え、流通・営業の囲い込みを維持するためにフルライン戦略が行われてきました。しかし、消費者の判断力が向上し、購買関与が低くなると、日本の企業はマーケティング戦略を変える必要に迫られ、「選択と集中」・「オープン型マーケティング」という戦略に移行していきました。
 ここでの重要な結論は、オープン型マーケティングとともに、選択と集中のもとでの、製品力の強化です。ところが、それから25年の月日が流れ、日本の企業はこの製品力の強化とそれによる生産性の向上において必ずしも十分ではなかったといわざるを得ない場面が少なくありませんでした。
 
講演の様子 その大きな原因は、日本が世界に誇るモノづくりとサービス品質が付加価値に結びついていないことです。顧客が求める価値には機能的価値、感覚的価値、意味的価値(情緒的価値・自己表現価値)があります。多くの日本企業は、機能・スペックによる機能的価値向上は得意ですが、それには限界があり、機能的価値を超えた価値を高めていく必要があります。つまり、感覚的価値や意味的価値を高めることです。日本のモノづくりやサービス品質を製品力や生産性改善に結びつけていくためには、感覚的価値や意味的価値を高めていくことが必要であり、それこそが日本型マーケティングの重要課題の一つであると言えます。
 
【サロンを終えて】
 池尾先生の研究の出発点から今なお継続している研究についてご講演をいただきました。フロアから多くの質問があり、時間を超えてのサロン開催となりました。池尾先生の恩師である片岡先生の「30代半ばまでは純粋な理論を勉強した方がいい」と言われたというお話もいただき、多くの会員にとって含蓄のあるメッセージと励ましのお言葉を頂き、活発なサロンとなりました。
 
集合写真
 
(文責:山口 夕妃子)

 
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