ニュースリリース

第226回マーケティングサロンレポート「業績拡大継続の布石と秘訣 マーケ諸施策を連携する考え方と実践」

第226回マーケティングサロン:複都市カンファレンス:東京会場
 
テーマ:業績拡大継続の布石と秘訣 マーケ諸施策を連携する考え方と実践
 
日 程:2026年2月28日(土)17:00-18:10
場 所:法政大学市ヶ谷キャンパス 大内山校舎 Y406教室およびZoom使用によるオンライン開催
ゲスト:カンロ株式会社 常務執行役員 マーケティング本部長 内山 妙子 氏
サロン委員:村中 敏彦・小坂 忠史・芹澤 和樹・関澤 充・竹中 信勝・星 妙佳
 
【ゲストプロフィール】
内山 妙子内山 妙子
デザイナーとしてカンロに入社後、マーケティング業務に従事。2012年にカンロ100周年事業として直営店「ヒトツブカンロ」の立ち上げに参加、2017年には40年ぶりとなる新CI導入を推進するなど、カンロの転換期に数多く関与。2018年にカンロ初の女性執行役員としてコーポレートコミュニケーション本部長に就任。2021年にデジタルマーケティング推進プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして、ECやコンタクトセンターなどを包括するデジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」構築に携わり、2022年に新設されたデジタルコマース事業本部の本部長も兼務。2024年に現職に就任。
 
【サロンレポート】
 複都市カンファレンスの東京会場のプログラムの一つとして開催された今回のサロンでは、カンロのマーケティングを統括する内山妙子氏にご講演いただきました。以下に、同社の取り組みに関するご講演内容、および質疑応答のポイントを紹介します。
 
1.カンロの事業環境
講演する内山氏 1912年に創業、1950年に設立されたカンロは、健康のど飴(1981年発売)から約10年ごとに、ノンシュガーのど飴、ピュレグミ、金のミルク、マロッシュなど、ヒット商品に恵まれた。一方、国内キャンディ(飴、グミ、錠菓・清涼菓子、その他)市場全体では、コロナ禍を機に、特にグミ市場は単価だけでなく数量も大幅に増加。グミの市場拡大は、「口寂しさ・咀嚼・気分転換」市場を再定義してガムの機能を代替する局面を経て、五感全部を活用した自己表現メディアとする情緒面が効く局面に入った。
 これまで、カンロはモノ軸で成長し、グミ市場の拡大で恩恵を受けている。しかし、市場拡大は永続しないし、嗜好・ライフスタイル・健康志向は変化する。市場の追い風を活かしながら、風が止まっても成長できる仕組みを作る。
 マーケティングをシステムとして捉え、マーケティング施策を個別最適ではなく、連動して設計することが重要だ。具体的には、5つの切り口で、諸施策を整理して説明する。5つとは、①価値創造、②顧客接点の再構築、③ブランドの再定義、④カルチャー改革、⑤社会認知の拡大、である(図1)。
 
図1 近年のマーケティング連動施策の全体像
 
2.施策①価値創造
 「カテゴリーの拡大」として、業界初となるのど飴を皮切りに、健康ニーズを捉えた「ノンシュガーのど飴」、独自製法による触感重視の「味のしない?のど飴」(注:商品名)、大人女性をターゲットとした「ピュレグミ」と続き、2020年には、そのご褒美用途や、親子をターゲットとした商品を発売した。
 次世代ターゲットのZ・アルファ世代には、飴の原体験の創出に向けて、生活雑貨店のPLAZAとコラボしたZ世代向け商品や、高校生とコラボした商品を開発し話題化。現状の飴離れを飴の習慣化につなげるべく、複数の大学や小売りとの産学共創を継続する。
 
3.施策②顧客接点の再構築
 顧客を「買う人」ではなく「共にブランドを育てる存在」として捉え直し、顧客との関係性そのものを事業資産にする。顧客接点の再構築の取り組みとしては、直営店、EC/デジタルマーケティング、ファンベースの3つを挙げる。
 カンロ100周年事業として、「キャンディをギフトに」を合言葉に立ち上げた初の直営店「ヒトツブカンロ」は、2021年から売上高が急伸。これを立ち上げた背景には、一般消費者と自社社員での企業イメージ調査結果があった。「センスがよい」の回答率がともに低く、「製品の品質が高い」は社員だけが非常に高い。社員が自信をもつ品質を最高のパッケージで提供しようと考えた。
 新型コロナで直営店が休業する中、手作業を含む臨時の運用にてオンラインショップを2020年に1カ月で立ち上げ、半年後にはカートシステムでECを本格稼働させた。EC専用商品の投入・展開、定期便サービスの開始と改良などの施策を積み重ね、好調に推移する。顧客体験価値(CX)を向上させ、顧客に選ばれるブランドになることを目指して、CRM(顧客関係管理)を強化し、デジタルマーケティングを推進する。
 ファンベース・マーケティングとしては、まずファンの構造を把握した。コアファン(構成比は3.2%。以下同)、ファン(28.3%)、ライトファン(50.2%)、未ファン(18.2%)と4分類。コアファンはその半数が月に4個以上のカンロ商品を購入し、約8割が公式SNSをフォローする、といった具合だ。継続的なコミュニケーションを通じてカンロのファンを醸成する。2025年にはコミュニティサイトを開設した。
 
4.施策③ブランドの再定義
 カンロのCIをロゴの変遷で振り返る。1977年には飴以外の幅広い事業の成長を企図したロゴに「ひと粒のメッセージ」というテキストを添えていた。2017年には「糖質制限ブーム」が起きる中、「糖と歩む企業」をミッションと策定。ロゴに添えるメッセージは「糖から未来をつくる。」に変更。さらに、2022年には「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」をパーパスとして、また「Sweetな瞬間を創り続けることで人々と社会に笑顔を。」をビジョンとして策定した。
 ここで会場ではカンロのパーパスムービーを視聴。
 https://www.youtube.com/watch?v=QZHElSu2Tu0
 
5.施策④カルチャー改革
 パーパスはその策定から浸透まで社員が共感し、行動に移せるように設計した。2021年のプロジェクト開始、2022年のパーパス公表に続けて、110周年施策として全社に浸透させる活動を展開。創発的な組織づくりに向けて「カンロ カルチャーブック」を2025年に配布し、社員各自がMyパーパスを立案するワークショップを実施した。そのブックには、カンロのブランドパーソナリティとクレド(行動指針)や「日常におけるふるまい」との対応関係などが明記されている。パーパスの理解度や共感度は、パーパスを公表した2022年と比べ10数ポイント高まり80%台を記録している。
 
6.社会認知の拡大
 近年の大ヒット商品「ピュレグミ」について、それを販売している企業名を尋ねる消費者アンケート調査で正答率が14.3%にとどまったように、商品ブランドだけで顧客コミュニケーションを図るには限界がある。企業ブランディングへの広告投資を強化することで、商品ブランドを含む全体のリフトアップを図ることとした。2025年末に、桑田佳祐による楽曲「明日へのマーチ」を起用し、カンロの商品の一粒ずつが出演する企業CMを投下。クリエイティブ調査で好感触を得たのを受け、2026年も企業広告の施策を続けて行う予定。
 ここで会場ではカンロの企業CMを視聴。
 https://www.youtube.com/watch?v=QQ_M52guWsE
 
7.これからのカンロ
 2025年に策定した「中期経営計画2030」では、「Kanro Vision2.0」におけるバリューについて「顧客を起点にしたステークホルダーへの3つのプロセス」を、①Sweetな瞬間を創造する、②事業基盤を変革する、③未来へ紡ぐ、と定義した(図2)。社員がこのプロセスを実行することで、ビジョンの実現を目指す。
 事業ポートフォリオとしては、国内市場の新規商品・チャネルはデジタル事業で周辺市場を取り込み、フューチャーデザイン事業(「商品を売る」ことに「体験を育てる」を付加)にも挑戦。海外事業は、2025年に米国現地法人を設立し、現地販売を開始。今後強化を図る。
 
図2 Kanro Vision 2.0の全体像
 
 今後の事業領域拡大の考え方として、横軸に「目指す事業ドメイン」、縦軸に「目指す企業の提供価値」を置くと、左下の既存事業から、パーパスドリブンによる事業進化で右上の方向へと進む(図3)。横軸では「広義のキャンディ事業」、「Beyondキャンディ事業」、「Beyond糖事業」、縦軸では「感性価値」、「多様な機能価値」、「社会的価値」へと進化するイメージをもつ。
 
図3 事業領域拡大の考え方
 
【質疑応答】
会場全体と質問者Q1.市場ニーズをとらえるためにどのような工夫をしているか。
A1.社内外の方と連携した勉強会を開催している、現場を見に行こう、足を使って調べようというマインドがある。メソッドとしてまとめようという動きもある。
 
Q2.セグメントを絞り込むのが難しい全世代向けの商品が多いと感じるが、どうか。
A2.その通りだ。F1層(20~34歳の女性)といっても、多様な方々がおられるし、デモグラフィック属性だけでターゲットを絞り込むことはできない。ただ、関係者への理解を得るための説明としてデモグラにも意味はある。一人ひとりに着目したN1分析により、誰かの不を解消していきたい。
 
Q3.飴は、口の触覚を通じた顧客体験に特徴があると思う。どんなことを重視しているか。
A3.飴は食べ物の中でも口内滞在時間が長い。舐め終わる時間を予測しにくいことに加え、会話が止まってしまうことも、飴を舐めることを若者がリスクと捉える要因だ。それを乗り越えて、触感やASMR(autonomous sensory meridian response。感覚への刺激によって感じる、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応・感覚)、エンタメ性を顧客が楽しめるように努めていきたい。
 
Q4.カルチャー改革をうまく進める手法を尋ねたい。
A4.社長を巻き込み、トップからメッセージを発信してもらう。社員とは対面で対話するためのリアルな全国行脚をいとわない。取引先による良い評価を通じて社外から社内を動かす。そんなことを心がけている。
 
【サロンを終えて】
 集合写真撮影後は、内山氏に挨拶を求める聴講者の長蛇の列が発生し、一人ひとりとの対話時間も長く、懇親会会場への到着が少し遅れたほどでした。
 幅広い施策を体系的に整理された講演と、質問への丁寧な対応に、内山氏、そしてカンロの誠実で思いやりを重視するカルチャー(ブランドパーソナリティの説明にも記載)が体現されていると感じました。
 ご多忙の折、講演と懇親会参加を賜りました内山様、サロンにご参加いただいた皆様、初の複都市カンファレンスの一環としてサロンを運営していただいた事務局の皆さまに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
集合写真
 
(文責:村中 敏彦)

 
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