第2回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会レポート「インダストリー・イノベーション」時代のマーケティング・コミュニケーション |
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テーマ:「インダストリー・イノベーション」時代のマーケティング・コミュニケーション
日 程:2016年10月4日19:00-21:00
場 所:関西学院大学 東京丸の内キャンパス
【報告会レポート】
本プロジェクトは、個々の企業によるイノベーションの取組みが、エコシステムやプラットフォームなど産業の枠組みや構造自体の進化、再構築、新機軸の中で行われている点に着目し、この状況を「インダストリー・イノベーション」と捉え、この観点から経営を支援するマーケティングやブランディングのテーマや抽出し、戦略設計に資する研究を行うことを目指しています。
第2回報告会は、この経営環境の変化を捉えた新しいマーケティング・コミュニケーションのあり方について議論を行い、考察を深めることを目的に行われました。
●まず第1部で、企画運営メンバーの博報堂研究開発局の徳永から、「イノベーションに共に挑むパートナーと“つながる”コミュニケーション」のタイトルで、広義のパートナーと“つながる”ことを意図したコミュニケーションの提案がありました。
・ビジネスパートナーはじめ、顧客も含めた様々な主体とつながることによって新しい価値を生むことができる時代には、マーケティングの目的そのものを、「売る」だけでなく「つながる」ことも重視する、あるいは「つながりで売る」ことを考える必要があるとの前提に立ち、メッセージやタッチポイントなどについて新しいコミュニケーションが求められるとの問題提起がまずありました。
・そして、企業が取組む事業変革の実情に鑑みて、あらゆるステイクホルダーに対する「創出する価値の啓発~社会の文脈で企業意思として~」、「新しい産業構造での自らの領域と強みの理解促進」、「ターゲットに即した場・機会の活用、接点の構築」の、コミュニケーション再構築の3つの要件を提示しました。
・これら要件に基づき、海外の先進企業の施策に範をとって、新しい時代の“つながる”コミュニケーションの7つの構成要素(「①CSVメッセージ」の定義、「②企業内タレント」の育成・露出、「③広告」「④イベント」「⑤webメディア」の再検討、「⑥CI/VI」の整備、「⑦アナリストリレーションズ」の充実)の詳細を説明しました。
●第2部では日本アイ・ビー・エム株式会社マーケティング&コミュニケーションズ デジタルコンテンツマーケティング&サービスの山口有希子部長をゲストに招き、「日本IBMが挑む新たなマーケティング・コミュニケーション」と題して、同社の取組みと考え方について、お話を伺いました。
・過去にもe-businessやSmarter Planetを中核ビジネスであると同時にキーのメッセージとして定義してきたIBMは、現在、コグニティブビジネスにチャレンジしておられますが、その変革に即したマーケティングの変革や、マーケティング組織の統合化について具体策を交えてお話いただきました。
・コミュニケーションについては、市場に即したコンテンツの開発に取り組むほか、若者・エンジニアなど新しいターゲットにリーチする日本独自の施策にも力を入れておられる点や、「ブランドを体験する機会」と定義される“IBMer”の活用についてもお話いただきました。また、こういった多様な活動の基盤としてビジョンが機能しているとのご示唆もいただきました。
組織改革に関しては、マーケティングの新機能を担う部門や、それを活かすために求められるカルチャーについて述べられました。
・事業に即して機敏に繰り出す、マーケティングやコミュニケーションの様々な改革に多くの学びを得たお話の最後に、本社のロメッティCEO の「Growth and Comfort do not co-exist.」というお言葉をご紹介いただきました。時代の変化に適応して持続的成長を遂げるために、変革への弛まぬ努力を続けるIBMさんの姿に感銘を受けました。
●第3部では、まず第1部の報告を担当した徳永から、山口様に対して今回の研究会の趣旨に沿った確認がありました。さらに、企画運営委員の先生方からのご感想やご質問をいただき、山口様のご回答、ご示唆をいただきました。
●今回の研究会は明示的にはコミュニケーションという領域を扱うものでした。しかし同時に、本プロジェクトがブリッヂを懸けることを試みる「ビジネスの変化」と「ブランディングの対応」ついて、その相互関係を念頭に置いた施策にこれまでも取組んでこられた日本アイ・ビー・エム様の今の活動やその背景を伺うことで、その両方を視野に収めて「インダストリー・イノベーション時代のブランディング」の可能性について考察する機会でもありました。今の情報環境やターゲット課題に即したアプローチや、企業の基盤にある理念との関わりから、多くの学びを得ることが出来ました。
あらためてこの場をお借りして、日本アイ・ビー・エムの山口有希子部長に謝辞を申し述べさせていただきます。
(文責:徳永朗)