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第6回ユーザー・イノベーション研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「無印良品のクラウドソーシングの理論と実践」

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テーマ:「無印良品のクラウドソーシングの理論と実践」
日 程:2017年3月18日(土)16:30-18:00
場 所:中央大学後楽園キャンパス
 

 ユーザー・イノベーションを活用した製品開発の一つの手法として、クラウドソーシング(消費者参加型製品開発)がある。クラウドソーシングとは、「製品アイデアの創造や製品化の可否の決定をユーザー起点で行う仕組み」のことであり、既に多くの企業が実践し、高い販売成果をあげている事例も報告されている。
 今回は、その先駆的な取り組みを行っている「無印良品」のケースをもとに、最新の理論と実践の報告を行い、最後にフロアも交えたパネル討議を行った。

 

第1部 無印良品のクラウドソーシングの実践
大伴 崇博(株式会社良品計画 生活雑貨部MD計画担当課長、法政大学大学院 経営学研究科マーケティングコース修士課程)

大伴氏 無印良品のクラウドソーシングは、現在、以下のようなプロセスを経て行われている。第1に、消費者自身が無印良品のインターネットサイトに自らが欲する製品アイデアを投稿する。第2に、無印良品がそうした消費者からのアイデアをもとに製品化の可能性を検討し、見込みがあると判断したものについて、複数案にまとめ提示する。第3に、これらの案に対し、消費者の投票と意見を募り、最も多くの票を獲得したアイデアについて、寄せられた意見等をもとに製品化し、販売する。
 「新しいタグツールをつくろう」というテーマのもと、クラウドソーシングによって開発された「タグツール・防犯ブザー」の事例が報告されるとともに、①いかに消費者が持つ革新的なアイデアを効果的に引き出し、②メーカーがそれを効率よく理解できるようにするかという観点から、ツールキット(アイデアシート)に施した工夫や課題について論じられた。
 

第2部 無印良品のクラウドソーシングの理論
西川 英彦(リーダー、法政大学大学院経営学研究科 教授)

西川氏 第2部では、クラウドソーシングの品質効果と販促効果について、無印良品における実証データをもとに詳細な報告が行われた。
 品質効果については、クラウドソーシングによって開発された製品(以下、ユーザー創造製品)と社内の専門家のみによって開発された製品(以下、専門家創造製品)を、売上数、売上高、粗利、新規性、戦略的重要性の5点において比較分析を行ったところ、いずれにおいてもユーザー創造製品の方が専門家創造製品よりも高い成果をあげていることが示された。
 また、販促効果については、ユーザー創造製品であること(ラベル)を消費者に告知すると売上があがるかどうか、店頭にてフィールド実験を行ったところ、「ラベルあり」の製品の方が「ラベルなし」の製品よりも売上高が高いことが明らかとなった。この結果は、消費者は、ユーザー創造製品を自身のニーズをより効果的な捉えたアイデアに基づいていると認識している可能性を示唆している。実際、ユーザー創造製品においては、ユーザー創造ラベルの有無が消費者の品質推測を介して当該製品の選択に影響を及ぼしていることが統計的検定によって明らかになった。

 

第3部 パネルディスカッション
司会:清水 信年(メンバー、流通科学大学 商学部 教授)
パネラー:大伴崇博(同上)、西川英彦(同上)、堀口悟史(メンバー、堀口海運株式会社代表取締役社長、神戸大学MBAシニアフェロー)

 パネルディスカッションでは、クラウドソーシングにおいては、ツールキット等を通じていかにユーザーの創造性を上手く引き出すかが重要である一方、アイデアを評価するメーカー側の課題、具体的にはユーザーの革新的なアイデアをメーカーの側が理解することの難しさについて、活発な議論が行われた。
 この点については、①ユーザーの側から「頼みもしないアイデア」が一方的に持ち込まれた場合や、②ユーザーが評価する性能次元が既存市場と異なっている場合において、当該アイデアの事業性をメーカーが適切に評価することが一層困難になることが、マスキングテープの用途革新の事例をもとにより踏み込んだ議論が展開された。
 
(文責:堀口悟史)

 
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