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研究報告会レポート

第4回AI研究報告会レポート「脳の中の酋長:私の受動と他者の能動のエンタグルメント」

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テーマ:「脳の中の酋長:私の受動と他者の能動のエンタグルメント」
報告者:郡司 ペギオ幸夫 氏(早稲田大学理工学術院 基幹理工学部・研究科 教授、神戸大学理学部名誉教授)
日 程:2017年10月6日(金)17:30-20:00
場 所:立命館大学 東京キャンパス

 

【報告会レポート】
 第4回AI研究会では、早稲田大学理工学術院教授である郡司ペギオ幸夫氏をお招きし、自由意志と決定論の間にある対立を再構成する論点である局所性と、その結果積極的な意味で見出される他者性の取り込みについてお話しいただいた。
 自由意思、決定論、局所性の三者は、同時に三者を満たすことができないというトリレンマにあり、局所性(あらゆる出来事の間に即時の影響関係が存在することはなく、特定の出来事を独立に取り出すことができる)の成立を認める限りにおいて自由意志と決定論がともに成立することはない。一方で、局所性が成立しないとする状況においては、自由意志と決定論の両立が可能となり、脳内においても決定論的であるとともに(自分は何者かによって突き動かされている)、自由意志としての判断が引き起こされる(その何者かを特定できないことにより、私が立ち現れる)。結果として、局所性が成立しない状況として、他者性を取り込むことの重要性が示される。
 AIへの期待と脅威は、今日の世界情勢でもあるグローバリズムと親和的であり、すべてを一つの基準で判定できるという理解に基づいている。この考え方は、出来事の局所性を認めるか否かに関わっている。AIがこの社会で正しい判断を行うためには、局所性が成立しない状況を考え、他者性を組み込む必要があると考えられる。他者性をどのように捉え、また組み込むのかということは、AIの実装としても重要な意味を持つとともに、マーケティング研究への示唆という点でも重要であると考えられる。マーケティング研究において、例えばイノベーションの局面(思いがけないアイデアが生まれる)や市場反応の理解(それが欲しかったのだと言われる)は、いずれも自由意志と決定論が両立している状況での出来事であり、局所性の成立を仮定しない他者性を取り込むことによって成立しているといえる。
 

 
(文責:水越 康介・本條 晴一郎)

 
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