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研究報告会レポート

第7回ユーザー・イノベーション研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「いかにユーザーの不満をイノベーションに結びつけるか」

第7回ユーザー・イノベーション研究報告会(春のリサプロ祭り)
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テーマ:「いかにユーザーの不満をイノベーションに結びつけるか」
日 程:2018年3月17日(土)14:45-16:15
場 所:中央大学後楽園キャンパス
 

ユーザー・イノベーションにおける不満の意義
西川 英彦(リーダー、法政大学 経営学部 教授)

 ユーザーのアイデアを起点に製品化していく「クラウドソーシング」(消費者参加型製品開発)の実践や研究は多く行われている。こうしたイノベーションをもたらすユーザーは、高い不満があるがゆえに開発を行うという「高便益期待」を持つと言われる(本條, 2016; von Hippel, 1986)。さらに、「高便益期待」が高いユーザーほど、イノベーションをもたらすという(Franke, von Hippel, & Schreier, 1986)。つまり、不満が大きい消費者のアイデアは革新的製品開発につながる可能性が高そうである。
 一般的に、消費者参加型の製品開発では消費者からアイデアを中心に聞く場合が多い。一方、顧客窓口には不満が寄せられる場合が多い。両者を合わせた、消費者の不満を起点にしたアイデアが、今までにない革新的製品の開発には有効かもしれない。その好例がInsight Techの運営する「不満買取センター」だといえる。
 

不満買取センターがもたらす、イノベーション創出の仕組み
伊藤 友博(株式会社Insight Tech 代表取締役社長)


伊藤友博社長の講演、会場の様子

 不満買取センターでは、消費者から製品やサービスについての不満をパソコンやアプリを通じ、1件1円から10円で買い取る。38万人の会員が毎日約1万件から4万件を投稿し、累計800万件に達する。不満は1千件あたり50万円で企業に販売される。
 不満だけではなく、同時に「こうあったら」というアイデアを書く消費者も多い。「ホットのミネラルウオーターが自販機にないのが不思議。子供がミルクの時代にあれば良いのになと思った」「開封前は横にして冷蔵庫に保管できるのに、開封後は立てないと冷蔵保存できない。飲むヨーグルトやジュースは開封後も横にして保管できる容器があるのに牛乳だけはないですよね?」などの投稿が寄せられる。
 フランスベッドではベッドの不満は、寝心地やサイズ、価格などの本質的な価値に対する不満が多いと考えていた。実際には「スマホが充電できない! できるようにして」「もっと物がおけるようにして!」など、付加的な価値に不満やアイデアがあった。対応して発売した結果、同社の同価格帯のベッドに比べ、4倍の売り上げをあげた。このように、消費者の不満と合わせたアイデアは、成果をあげる可能性がある。
 

ディスカッション


ディスカッションの様子、左より伊藤友博社長、西川英彦

 講演者両名での対談および参加者を交えて、ディスカッションを実施し、ユーザーの不満をイノベーションに結びつける仕組みの理解を深めた。
 本セッションを通して、不満とアイデアとイノベーションの関係について、理論と実践面からの理解の第1歩は踏み出せたといえる。だが、その解明には、より精緻な分析が必要とされる。そのため、両者の知見を融合しつつ、さらなる研究をしていくことが期待される。
 

(リーダー:西川英彦)

 
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