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研究報告会レポート

第13回ソロモン流消費者行動分析研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「博報堂ケトル・嶋浩一郎さんに聞くインサイトのつかまえ方」

第13回 ソロモン流消費者行動分析研究報告会(春のリサプロ祭り) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:博報堂ケトル・嶋浩一郎さんに聞くインサイトのつかまえ方
日 程:2019年3月16日(土)16:30-18:00
場 所:青山学院大学 青山キャンパス 17号館3階
 

【報告会レポート】
 第13回の研究報告会では、博報堂ケトル代表の嶋浩一郎氏にお越しいただき、「インサイトのつかまえ方」について、お話いただきました。嶋さんと松井先生は、2017年に『欲望する「ことば」:「社会記号」とマーケティング』(集英社新書)を出版されており、日本マーケティング本大賞2018準大賞を受賞されています。当日は、著書の内容も踏まえつつ、嶋さんの具体的なプレジェクト事例なども多数織り交ぜながら、楽しく、そしてわかりやすくご説明いただきました。
 
1. 解題:『博報堂ケトル・嶋浩一郎さんに聞くインサイトのつかまえ方』
松井 剛(リーダー、一橋大学商学研究科 教授)

 最初に、松井先生からの解題として、ことばがマーケットをつくり、そのことばをマーケターが活用することでさらに普及するという構図において、市場創造につながることばと、すぐに消えることばの違いはどこにあるのかといった問題意識が提示されました。
 こうした違いを説明する重要な要素の一つとして、松井先生は、顧客の中にある隠れたインサイトを捉えることを挙げられました。今回のスピーカーである嶋さんは、優れたインサイトを発揮することにより、本屋大賞の立ち上げや、下北沢に本屋B&Bを開業するなど、新たなコミュニケーション手法を提案してこられた方です。
 
2. インサイトのつかまえ方
嶋 浩一郎(博報堂ケトル 代表取締役社長・共同CEO)

 嶋さんのお話は、「社会記号」ということばからスタートしました。社会記号とは、おひとりさまや、草食系のように、いつのまにか社会的に広く知られるようになり、メディアでも普通に使われ、見聞きするようになる新語や流行語のことです。嶋さんによれば、こうした「社会記号」は世の中の欲望の発露であり、新しい市場とライフスタイルを創造することにつながります。そして、そのために必要なことは、インサイトを捉えることです。
 インサイトを捉えることは、商品開発、広告制作、コンテンツ制作とあらゆることの根本でありながら、非常に難しい作業でもあります。なぜなら生活者は、自分の欲望を言語化できないからです。その一方で、これらが目の前に現れると「まさにこれが欲しかった!」と感動します。だからインサイトを捉えることが重要なのです。ここで嶋さんが強調するのは、もともと顕在化している欲望に答えるサービスは「便利」で終わるが、言語化されない欲望を可視化するサービスは「異常に」感謝され、結果として大きなビジネスになるという点です。さらに、こうした欲望の言語化は、実は以前から誰もが目撃していたことであるという点も指摘されました。例えば「おひとりさま」ということばができる前から、「一人の消費者」は誰もが目にしていた光景でしょう。このように誰もが目にしたことのある現象から、欲望の萌芽を認識するために、嶋さんは、日常の違和感に執着し、隠れた欲望に敏感になることが必要であると述べてセッションを締めくくりました。
 約1時間にわたる嶋さんのお話は、「10分どん兵衛」、「美魔女」、「ル・クルーゼ」といった具体例、さらには最新のプロジェクト事例等も踏まえて行われました。
 

3. フロアとのディスカッション
嶋 浩一郎
司会:松井 剛

 最後に質疑応答を行いました。フロアからはインサイトの見つけ方や、インサイトの確からしさを確認・確信する方法など、実務での活用場面を想定した様々なご質問があげられ、非常に有意義な時間となりました。嶋さん、松井先生、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 
(文責:織田 由美子)

 
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