ソロモン流消費者行動分析研究会 |
【研究目的】
本研究会の目的は、解釈的、定性的な消費者行動分析のための理論枠組みを検討することにある。消費者行動は、購買だけでなく、使用や廃棄に至るまでの局面も含むものであるが、既存研究の多くは購買意思決定に焦点を絞っている。しかし、オタク消費や贈り物、買い物好き、ブランド好きといった具体的な消費者行動においては、購買・使用・廃棄のそれぞれにおいて、多様な意味が生みだされたり、共有されたりしている。こうした意味を深く解釈することは、理論的な要請のみならず、ブランド・マネジメントを始め実務的な需要が高い。実際、深層インタビュー、エスノグラフィー、フォーカス・グループ、MROCなどの定性的な調査手法を通じて、こうしたデータは分厚く蓄積されている。それにもかかわらず、方法のための理論枠組みの検討は不十分である。
本研究会では、企画運営メンバーが取り組んできた研究を題材に、こうした未開拓の課題に取り組む。これまでの実績は以下の通りである。
- 2014年度:解釈的な消費者行動分析について十分目配りがなされているという意味で、希有なテキストブックであるマイケル・ソロモンの大著『ソロモン 消費者行動論』(丸善出版)の翻訳出版を、2015年1月に実現した。
- 2015年度:定性調査手法を実務的観点から丁寧に解説した梅津順江『この1冊ですべてわかる心理マーケティングの基本』(日本実業出版社)を2015年6月に出版した。さらに2016年1月には日本オリジナルの消費者行動論のテキストブック松井剛・西川英彦編『1からの消費者行動』(碩学舎)を出版した。
- 2016年度:定性的マーケティング・リサーチの分野で評価が高い英書テキストブックの翻訳書『消費者理解のための定性的マーケティング・リサーチ』(碩学舎)を2016年6月に出版した。
- 2017年度:ことばが市場を創造するメカニズムを、実務と学術の両面から明らかにした嶋浩一郎・松井剛『欲望する「ことば」:「社会記号」とマーケティング』(集英社新書)を2017年12月出版した。同書は、日本マーケティング本 大賞2018準大賞を受賞した。
- 2018年度:「共創」という概念に着目した新たなマーケティングを論じた水越康介『ソーシャルメディア・マーケティング』(日経文庫)を2018年5月に、消費者行動論の理論と概念を一般向けに解説した松井剛『いまさら聞けないマーケティングの基本のはなし』(河出書房新社)を2018年9月に、また定性調査手法を活用した松井剛『アメリカに日本のマンガを輸出する:ポップカルチャーのグローバル・マーケティング』(有斐閣)を2019年3月に出版した。
- 2019年度:日本のハロウィンの定着と変容についてのフィールドワークの成果を松井剛編・一橋大学商学部松井ゼミ15期生著『ジャパニーズハロウィンの謎:若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?』(星海社)として2019年9月に出版した。「何となく」という消費者の評価の背景にある感覚とメカニズムについて考察した研究書、石井裕明『消費者行動における感覚と評価メカニズム:購買意思決定を促す「何となく」の研究』(千倉書房)を2020年1月に出版した。また、2016年に出版した松井剛・西川英彦編『1からの消費者行動』(碩学舎)を改訂し、第2版として2020年2月に出版した。
- 2020年度:石井裕明『消費者行動における感覚と評価メカニズム』が日本マーケティング本大賞2020準大賞を受賞した。
- 2021年度:黒岩健一郎・浦野寛子『サービス・マーケティング:コンサル会社のプロジェクト・ファイルから学ぶ』(有斐閣)を2021年10月に出版した。また水越康介『応援消費の謎:消費・寄付・ボランティア』(碩学d新書)を2021年9月に出版した。本書をもとに、コロナウィルス禍で注目されるようになった「応援消費」という新たな消費者行動について議論を深める研究会を開催した。
- 2022年度:水越康介『応援消費:社会を動かす力』(岩波書店)を2022年7月に出版した。また、「Z世代の消費行動」についての研究会を開催した。
- 2023年度:水越康介・田嶋規雄『図解ポケット 推しからエシカルまで:応援消費がよくわかる本』(秀和システム)を出版した。また2023年5月に出版された恩蔵直人・坂下玄哲編『マーケティングの力: 最重要概念・理論枠組み集』(有斐閣)に、研究会メンバーが寄稿した。「実証的消費者行動研究の最前線」というテーマの研究会を開催した。
【研究方法および研究計画】
今年度の研究会では、こうした書籍や今後、研究会メンバーが出版予定の書籍や論文を実務・研究の両方に活用し展開していく方策について、学会員の皆さんと議論をする研究会を開催する予定である。
【研究期間】
2014年4月〜2025年3月
【リーダー】
松井 剛 一橋大学 経営管理研究科 教授
【企画運営メンバー】
梅津 順江 株式会社ハルメク 生きかた上手研究所 所長
大竹 光寿 明治学院大学 経済学部 准教授
北村 真琴 東京経済大学 経営学部 教授
鈴木 智子 一橋大学 経営管理研究科 教授
西川 英彦 法政大学 経営学部 教授
朴 宰佑 中央大学 商学部 教授
水越 康介 東京都立大学 経済経営学部 教授
石井 裕明 早稲田大学 商学部 准教授
浦野 寛子 立正大学 経営学部 教授
山本 奈央 名古屋市立大学大学院 経済学研究科 准教授
【研究報告会の案内】
【研究報告会レポート】
第18回 2024年3月4日(東京)
>「実証的消費者行動研究の最前線」
元木康介氏(東京大学 経済学研究科 講師)・外川拓氏(上智大学 経済学部 准教授)・松井剛氏(一橋大学 経営管理研究科 教授)
第17回 2022年12月2日(リアル・オンライン)
> 「Z世代の消費行動」
原田曜平氏(芝浦工業大学 教授)・司会:水越康介氏(東京都立大学 経済経営学部 教授)
第16回 2021年10月11日(オンライン)
> 「応援消費は社会を変えるか?:コロナ禍における新たな消費について考える」
水越康介氏(東京都立大学 経済経営学部 教授)・増田明子氏(専修大学 商学部 教授)・津村将章氏(中京大学 経営学部 准教授)・松井剛氏(一橋大学 経営管理研究科 教授)、司会:浦野寛子氏(立正大学 経営学部 教授)
第15回 2021年3月25日(オンライン)
> 「コロナ禍のシニア消費~変わること、変わらないこと」
梅津順江氏(株式会社ハルメク 生きかた上手研究所 所長)
第14回 2019年9月27日
> 「電子版教科書を使った新しい講義法」
水越康介(首都大学東京)
第13回 2019年3月16日(春のリサプロ祭り)
> 「博報堂ケトル・嶋浩一郎さんに聞くインサイトのつかまえ方」
松井剛(一橋大学商学研究科 教授)・嶋浩一郎(博報堂ケトル 代表取締役社長・共同CEO)
第12回 2018年3月17日(春のリサプロ祭り)
> 「『欲望する「ことば」:「社会記号」とマーケティング』刊行記念!ことばとマーケティングをめぐる若手研究者の成果発表会」
松井剛(一橋大学商学研究科 教授)・飯島聡太朗(一橋大学商学研究科 ジュニアフェロー)・織田由美子(一橋大学商学研究科 博士後期課程)・朝岡孝平(一橋大学商学研究科 博士後期課程)
第11回 2016年11月17日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第8回)
大竹光寿(明治学院大学 経済学部 准教授)・松井剛(一橋大学大学院 商学研究科 教授)・西川英彦(法政大学 経営学部 教授)
第10回 2016年10月13日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第7回)
北村真琴(東京経済大学 経営学部 准教授)・大竹光寿(明治学院大学 経済学部 准教授)
第9回 2016年9月21日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第6回)
北村真琴(東京経済大学 経営学部 准教授)・石井裕明(成蹊大学 経済学部 准教授)
第8回 2016年7月28日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第5回)
水越 康介(首都大学東京大学院 社会科学研究科 准教授)・鈴木智子(京都大学大学院 経営管理研究部 特定准教授)
第7回 2016年6月21日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第4回)
鈴木智子(京都大学大学院 経営管理研究部 特定准教授)・西川英彦(法政大学 経営学部 教授)
第6回 2016年5月13日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第3回)
西川英彦(法政大学 経営学部 教授)・浦野寛子(立正大学 経営学部 准教授)
第5回 2016年4月14日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第2回)
山本奈央(名古屋市立大学大学院 経済学研究科 講師)・松井剛(一橋大学大学院 商学研究科 教授)
第4回 2016年3月17日
> 連続模擬講義「『1からの消費者行動』を小石川ファミリーと学ぼう!」(第1回)
松井剛(一橋大学大学院 商学研究科 教授)・朴宰佑(千葉商科大学大学院 商学研究科 准教授)
第3回 2015年7月10日
> 「マーケティング・リサーチにおける消費者行動論の意義」萩原雅之氏(トランスコスモス・アナリティクス株式会社 取締役副社長)
「本質直観と『ソロモン 消費者行動論』」水越康介氏(首都大学東京大学院ビジネススクール 准教授)
第2回 2015年6月19日
> 「『心理マーケティングの基本』で語り尽くせなかったこと」梅津順江(株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー)
「定性データ分析ソフトウェアNVivoの魅力」谷口慎介(QSR International Japan K.K)
第1回 2014年6月30日
> 「『ソロモンの消費者行動論』の魅力」
松井剛(一橋大学 商学研究科)