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研究報告会レポート

第1回地域創生マーケティング研究報告会レポート「地域創生マーケティング研究の方向性と課題」

第1回 地域創生マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:地域創生マーケティング研究の方向性と課題
報 告:
1. 「地方創生の時代に改めて考える地域産業の活性化とは」
  甲南大学 ビジネスイノベーション研究所長 / 同 経営学部 教授 西村 順二 氏
2. 「“ブランド創造都市”をめざして-大阪の事例をもとに-」
  一般社団法人ブランド戦略研究所 理事長 / 関西大学 教授 陶山 計介 氏
 長崎県立大学 准教授 大田 謙一郎 氏
 
日 時:2019年4月27日(土)10:00-12:00
場 所:九州産業大学 1号館10階 中会議室

 

【報告会レポート】
 リサーチプロジェクト「地域創生マーケティング研究会」の研究目的は、地域・都市ブランド論の視点から、低迷・衰退していると言われる伝統産業の活性化や関連する他の産業との連携強化を模索するだけでなく、さらに新しいビジネスモデルの創出と産業集積化の理論フレームワークを構築することです。その目的を果たすためには、「地域創生」とはなにか、「地域創生マーケティング」とはなにか、という共通認識を、企画運営メンバーが共有しなければなりません。
 今回の研究報告会は、キックオフミーティングとして、本プロジェクトの問題意識の共有や課題の抽出、さらには研究の方向性を決めることを目指して広く討論するために開催されました。

 
【第1報告】西村 順二 氏「地方創生の時代に改めて考える地域産業の活性化とは」
 地域を創生するという意味は、業種や業態次元での集積や、拠点立地特性次元による集積といった初期条件による形式的な分類で明らかになるものではなく、その後の集積としての戦略的行動の現代的再策定・実践に着眼する方が、親和性が高いのではないかと思われます。そしてその場合、地域創生における成長戦略には、規模の経済を求めるのではなく、持続可能性(縮小均衡ではなく、適正規模模索)を目指すことの方が重要ではないでしょうか。
 また、地方・地域の捉え方ですが、地域創生マーケティングを考えるにあたっては、対象となる「地域」を、「共通の一体性を持った等質地域であり、独立して機能するに十分に包括的な構造を持った国民経済内部における領域」とするのがよく、またそうすることで地域ブランドや地域産業集積も考察対象となり得るため、これらを検討・分析する意味があると思われます。
 プロジェクトの根幹となる「創生」とは、既存産業の再活性化やインバウンド需要を獲得するべく進められている観光戦略や地域産業振興だけではなく、モノづくりに焦点を当てた上で、それらがサービスイノベーションとも結びつき、新たな価値創出をもたらすことによる地域の活性化が主眼となります。
 伝統産業は比較的中小規模の事業所が多く、例えば刃物産業で有名な堺市では中小規模事業所が相対的に維持されていますが、都市タイプにより、外部経済と内部経済の内容や効果が変わってくるのではないか、「都市の産業特化」の強みに流通段階の貢献があり、各地域における都市の位置づけから、その役割が変わり、地域活性化への貢献があるのではないかという問題意識から、①地場産業の活性化に何が必要なのか、②市場へのアプローチをどう考えればよいのか、③地域の中小企業は何を求めているのか、④産業集積のメリット・デメリットはあるのか、といった研究課題が挙げられます。
 
【第2報告】陶山 計介 氏・大田 謙一郎 氏「“ブランド創造都市”をめざして-大阪の事例をもとに-」
 第2報告は、大阪の事例をもとに、都市に住んでいる人から見た、都市とは何か、魅力ある都市とは何かを探るものです。
 都市の魅力は、建物や景観などのハード面だけでなく、文化や歴史などソフト面の多様な要素が織りなす生活価値と人間存在そのものによって形成されます。ただ、都市・地域がもたらすブランド資源の優勢順位は、観光客(非日常世界)と住民(日常世界)で大きく異なります。観光客にとっては歴史や伝統、文化、芸術などが大きな価値を持ち、住民にとっては、安全や衛生、健康、食といったブランド資源がブランド・バリューを持つわけです。この、都市・地域内外のブランド・バリューの優先順位の逆転関係をどのように調整するかは難しい問題ですが、観光客のニーズの変化をふまえながら、地元住民の地域への満足、地域への愛着、そして都市・地域と自己との一体化があれば、肯定的なクチコミや観光活動に参加するといった観光大使のような行動をとるようになり、都市・地域内外の逆転関係が調整されることになります。
 大阪府民の意識調査をもとに、大阪の魅力度と期待度など総合的な都市の魅力を、①ビジネス、②伝統を今に活かす食文化、③多彩な都市景観、④成熟した文明、⑤スポーツ、⑥エンターテイメント、⑦満たされた暮らし、の7項目に分類してみていくと、大阪に満足し愛着を持った真のロイヤルティ層は、「最先端の技術・革新的なものづくり」「新産業・人間文化」「価値共創」に大阪らしさを見ていることが分かります。これらのブランド資源にさらに磨きを掛け、内外に向けて情報発信することができれば、大阪のブランド価値は今以上に上がるに違いありません。
 
【報告会を終えて】
 第1回目の研究報告会ということで、西村先生と陶山先生・大田先生にご報告いただきましたが、先生方の素晴らしい研究のおかげで、頭の中でもやもやしていた、なぜ「地方」ではなく「地域」なのか、「地域創生」とはなにか、「地域創生マーケティング」とはどういう研究テーマなのかといった疑問が解消され、本当に参加することができて良かったと思いました。
 地域創生は様々な要素が複雑に絡み合う、非常に幅広い研究テーマですが、今回ほぼ全員が参加となった企画運営メンバーのお顔を拝見しながら、これからどのように研究が進んでいくのか、期待が高まりました。
 今後も、現地視察や研究報告会、リサプロ祭り等を通して、さらなる研究の発展を目指していきたいと思います。
 最後に、研究会開催場所の提供だけでなく、素晴らしいホスピタリティを発揮してくださった九州産業大学の侯利娟先生と、研究会のリーダーである佐賀大学の山口夕妃子先生に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 

 
(文責:武市 三智子)

 
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