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研究報告会レポート

第3回カスタマー・エンゲージメント研究報告会レポート「B2B取引で顧客をエンゲージさせるための誘発性」

第3回カスタマー・エンゲージメント研究報告会 > 研究会の詳細はこちら

テーマ:「B2B取引で顧客をエンゲージさせるための誘発性」
報告者:アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 プリンシパル /
    青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 博士課程 片桐 英毅 氏
    アドビシステムズ株式会社 マルケト事業担当 マーケティング部
    シニアカスタマーエクスペリエンスマネージャー 森山 裕之 氏
    Research Affiliate at Turku School of Economics, University of Turku, Sini Jokiniemi 氏
日 程: 2019年7月27日(土)14:00-17:30
場 所:明治大学 駿河台キャンパス グローバルフロント3階4301教室

 

【報告会レポート】
 今回のテーマは「B2B取引で顧客をエンゲージさせるための誘発性」と題して、B2B取引の文脈において顧客企業をエンゲージさせるための誘発性に焦点を当てました。第2回公開報告会では「カスタマー・エンゲージメント概念の適用範囲の拡張」と題してB2B取引へのカスタマー・エンゲージメント概念の拡張可能性について議論しましたが、今回はその議論をさらに発展させて、どうすれば顧客企業を自社にエンゲージさせられるかについて議論しました。報告者は3名。
 まず初めに、アクセンチュア株式会社の片桐英毅氏より、「B2Bマーケティングの論点とカスタマー・エンゲージメントの役割」というタイトルで報告がありました。片桐氏からは、近年のグローバルB2B企業におけるカスタマー・エンゲージメントへの関心の高まりについて、統計データを示しながら解説がありました。また、アクセンチュアにおけるデザイン・シンキングに基づいたコンサルティング事例などをご紹介いただき、B2Bサービス企業でのカスタマー・エンゲージメントの役割について報告がありました。
 次に、アドビシステムズ株式会社の森山裕之氏より「B2B SaaS モデルにおけるカスタマーエンゲージメントモデル-顧客コミュニティとの価値の共創-」というタイトルで報告がありました。森山氏からは、同社のマーケティング・オートメーション・ツールをSaaS (Software as Service)として提供しているマルケトの事例をご紹介いただきました。サブスクリプションとしてマーケティング・オートメーション・ツールを提供している企業にとって、ユーザーの活用能力が継続的な契約更新にとって重要であるという認識の下、同社では、ユーザー向けのセミナーやイベント、さらにはユーザー同士のオンライン・コミュニティや分科会などのC2Cインタラクションを誘発させて顧客企業をエンゲージさせる仕組みが構築されていました。
 最後に、University of TrukuのSini Jokiniemi氏からは、B2B取引における販売担当者と購買担当者との間でのフェイス・トゥ・フェイス・インタラクションの初期段階において、建前から本音へと移行する商談プロセスの中にどのような行動的要素があるのかを探索した研究が報告されました。販売担当者と購買担当者へのインタビュー調査と質問紙調査から、その商談プロセスには、(1)相手の心を読む、(2)感銘を与える、(3)価値観や原理原則に従う、(4)公平性、(5)共に歩む、(6)雰囲気を醸成するといった行動的要素があることが明らかにされました。
 


写真上、左から報告者の片桐氏、森山氏、Jokiniemi氏。写真下、報告会終了後に参加者の方々と記念撮影
 
【報告会を終えて】
 前回に引き続き、今回もB2B取引をテーマとしました。本学会の中でもB2B取引に関する研究会はそれほど多くないとの理由から、特に、実務家の方々の参加が多かったようです。Q&Aセッションではたくさんの質問があり、報告終了後には多くの参加者が名刺交換されていました。今回、特に興味深かった内容は、マルケトの事例でした。SaaSをサブスクリプションで提供することは、サービス購買後のユーザーの利用プロセスに提供業者が関与することで顧客コミュニティにユーザーをエンゲージさせていました。このような現象は、私たちの研究会が注目しているサービス・ドミナント(S-D)ロジックというメタ・パースペクティブとカスタマー・エンゲージメントという中範囲理論の関係性を示唆しているように思います。
 
(プロジェクトリーダー:井上 崇通)

 
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