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研究報告会レポート

第9回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「ポストコロナにおける観光再生とDXの可能性」

#いまマーケティングができること

第9回プレイス・ブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:ポストコロナにおける観光再生とDXの可能性
報告者:村山 慶輔 氏(株式会社やまとごころ代表取締役)
ファシリテーター:若林 宏保 氏(株式会社電通クリエーティブディレクター)
日 程:2021年9月30日(木)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催

 

【報告会レポート】
 今回は(株)やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏をゲストに迎えました。昨年、村山氏が上梓された『観光再生:サスティナブルな地域をつくる28のキーワード』(プレジデント社)より、特にDXに焦点を当て、ポストコロナ時代の観光のあり方はどう変わっていくのか?その中でDXはどのように活用されていくのかについて語って頂きました。
 

 
 まず、インバウンド回復の目途が立たない中、日本の観光産業はプロモーションを控え、戦略立案、商品造成・インフラ整備、ブランディングを行うべきという提言がなされました。
 これらのプロセスにおいて1. 時間軸への意識、2. (インバウンドを見据えた)国内優先の取り組み、3. リスク分散といった意識を持つことが求められるとのこと。
 コロナ後の観光動向としては、①開放さを求める旅行、②少人数旅行、③サスティナブルを意識した旅行へ、よりシフトすることが国内外の事例を基に語られました。こういった変化に対して、日本の宿泊・飲食業界は「量から質への転換」を図らねばならないことが強調されました。そうして、DXにより高付加価値・高リピート率・業務の効率化を実現した宿泊施設が紹介されました。
 

 
 村山氏によれば、観光業界におけるDXには「攻めのDX」(顧客価値の変革)と「守りのDX」(業務プロセス・風土改革)があり、「目的と手段」を履き違えないことが強調されました。村山氏によって示された国内外の事例は、「DXを通じて何を実現したいのか」が明確に感じ取れるものでした。DXと言いつつ単なるIT化(例えば、受付をFAXからメールに変えるような)にとどまっていたり、従業員が業務のデジタル化の意義を理解できていないケースが散見される中、この指摘に耳の痛い方もいらっしゃったことでしょう。
 最後に、村山氏から観光DXの課題についても共有頂きました。すなわち、1. ビジョンの不在、2. 目的と手段の履き違え、3. 経済的に持続不可能な展開を、4. ストックでなくフローへ、という点にあります。現在、日本各地で観光DXの取り組みが進められていますが、多くは実証実験止まりであり、先行事例の成功や失敗に学ぶケースは少ないとのこと。その点、先行事例では観光DXの意義が丁寧に地域に共有され、住民もトラベル・テックを積極的に活用し、地域の業者にお金が落ちる好循環が生まれているという指摘がなされました。
 

 
 ご講演の後は、プレイス・ブランディング研究会恒例の活発な質疑応答が行われました。紹介された事例の掘り下げ、各々が抱える実務的課題に話が及び、村山氏による的を射た回答に深く頷く参加者の姿が多々見受けられました。まだまだ日本の観光産業はデータに基づいたマーケティングすらできていない状況にあります。アフターコロナに向け、DXの意義を理解した戦略的な取り組みが、真の観光立国への近道ということを認識させて頂いた研究会となりました。

 
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