第13回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「創造的過疎の実現 ― 鳥取県日南町」 |
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テーマ:創造的過疎の実現 ― 鳥取県日南町
講演:中山間地域のモデルとなる「創造的過疎のまち」を目指して ― 鳥取県日南町を事例として ―
<講演者>荒金 太郎 氏(日南町役場 農林課)
<ファシリテーター>小林 哲 氏(大阪市立大学 経営学研究科 教授)
日 程:2022年1月27日(木)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
今回のゲスト講演者は鳥取県日南町役場からお招きした荒金さんです。日南町は中国山地のほぼ中央に位置し,町の面積の九割が森林の中山間地域です。かつて1万6千人いた人口も,現在では約4,400人であり高齢化率も50%に達しています。全国で一番人口が少ない鳥取県において,他地域に先駆けて人口減少,少子高齢化が進んでいる,「日本の30年後の姿」という課題意識を持っています。
そんな日南町では,人口減少を受け止めて少しでもそれを緩やかにする,という考え方を元にした町民総活躍の「創造的過疎」まちづくりへ挑戦しています。そこでは農業・林業を中心とした第一次産業を主役としながら,住むのは地域,生活機能は中心地域とした「コンパクト・ヴィレッジ」の構想を軸に据えています。コア政策としての本取り組みは,全国発となるCO2排出ゼロの「道の駅」を商業拠点・媒体にし,医療福祉ゾーン(病院,駅前商店街),行政ゾーン(役場,文化センター等)とゾーニングした点に特徴があります。
また日南町では伐採するだけでない植林・育成に注目した持続可能なまちづくりを目指しています。平成25年からJクレジット制度を活用することで新植財源とし,また地元銀行との連携により「J-クレジット」販売コーディネート契約を結んでいます(SDGs金融の全国のモデル事例)。
そうした取り組みは教育という側面についてもあらわれています。子どもを対象とした百貨店と連携した地元木材による「集い,学び,遊ぶ」場づくりにはじまり,若い人材育成を町独自に行うことを企図した「にちなん中国山地林業アカデミー」を開設するなどです。特に後者は全国初の町立の学校であり,卒業後に必ずしも日南町への就業を義務付けない,全国のフォレストマネージャーを育てるという姿勢をもっています。
荒金氏によれば日南町は住民同士の距離が近く,課題意識を共有しやすいとしています。そうした土壌を元に外部の力を活かしながら,町の総合計画にSDGsをひもづけ(「パートナーシップで目標を達成しよう」)ています。外部とは創業者の出身地というご縁のあるサクラクレパスをはじめ,ヤンマーやトヨタ自動車アグリ事業部と協定を結び,大阪市立大学といった都市部の様々な大学との連携を進めています。
最後に荒金氏は今後について「日本の中山間地のモデルになるような地域」,「地域の人々が誇りをもって住み続けられる町」を目指したいと述べられました。「縮みながら,もがきながらも成長する町でありたい」という町長の想いのもと,これまでの取り組みをさらに進めるそうです。
その後のフロアでのディスカッションでは,インバウンド・関係人口といった「よくある流れ」を採用しない本事例の独自性について,活発なディスカッションが行われました。日南町の取り組みからは資源が限られる中山間地域の今後の在り方に重要な示唆を頂きました。
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