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研究報告会レポート

第10回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会レポート「食の新しい価値創造に取組むオイシックス・ラ・大地に学ぶ」

#いまマーケティングができること

第10回 インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(オンライン)
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テーマ:食の新しい価値創造に取組むオイシックス・ラ・大地に学ぶ

  1. “サステナブルリテール”としてのオイシックス・ラ・大地の取組み
    三輪 千晴(オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 新規事業開発準備室 Upcycle by Oisix ブランドマネージャー)
  2. 議論の視点:オイシックスの取組みをもとに考える、新しい食の価値創造
    德永 朗(東京成徳大学 経営学部 教授)
  3. 本プロジェクトの企画運営メンバーとご聴講いただく皆さんとのディスカッション

 
日 程:2022年2月21日(月)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
論題1「“サステナブルリテール”としてのオイシックス・ラ・大地の取組み」
三輪 千晴(オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 新規事業開発準備室 Upcycle by Oisixブランドマネージャー)

 3つのブランドで事業展開し、ミールキットの進化などで生活者の食ニーズに即応することによって成長を遂げているオイシックス・ラ・大地。冒頭でそのビジネスモデル「サブスクリプション型食品EC業」および成長戦略「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」の考え方と、取組みの実情をご紹介いただいた後、議論の中核である事業を通した食領域のサステナビリティへの関わり方について、フードロス削減の取り組みを中心にお話しいただきました。
 まず、ふぞろい野菜のブランド化や、コロナ禍での食材の応援販売やレストラン食材のアレンジ販売といった、川上(畑)と川下(食卓)をつなぐ川中に位置する存在としてサプライチェーン全体に働きかけるオイシックス・ラ・大地ならではの事業についてご説明を受けました。そしてさらに、「Upcycle by Oisix」という廃棄食材のアップサイクルブランド化を通した、フードロスに新たな価値を生む取り組みをご紹介いただきました。これは、これまでは捨てられていた食材に付加価値をつけて新しい商品にアップグレードさせる、世界中で注目されている「Upcycle」のビジネスのひとつであり、食のサプライチェーン全体を通したフードロス削減に取り組むオイシックス・ラ・大地の挑戦を、大変興味深く拝聴しました。 
 最後にはその成果やこれからの課題、未来へのビジョンもあわせてお聞かせいただき、ご聴講いただいた皆さんは、それぞれの研究や業務への大きな示唆を得たと同時に、共感をもってオイシックス・ラ・大地の取組みを受け止めていたように思われます。
 

 
論題2「議論の視点:オイシックス・ラ・大地の取組みをもとに考える、新しい食の価値創造」
德永 朗(東京成徳大学 教授) 

 三輪様のお話しを受け德永は、オイシックス・ラ・大地の取組みから、本研究会の趣旨に照らした新しい価値創造のアプローチの抽出を行い、それにもとづいて食に関わる企業の対応に関わる問題提起を行いました。
 まず、ビジネス・エコシステムの組成という観点からオイシックス・ラ・大地のビジネスを読み解き、生活者を起点に内食のありようを変革させるべく生産者やメーカーを巻き込み、機能を統合させる形で一体となって価値創造に取組んでいる状況と捉えました。また、同社がそのビジネス・エコシステムにおいて、川中としての役割を超えた中核的存在の「キーストーン」として機能している点を指摘しました。さらに、ビジネス・エコシステムのマネジメントへの示唆を得るべく、信頼の形成や社会課題解決の目的共有を議論した先行研究を参照し、それらの重要性、有効性を論じました。
 後半では、ビジネス・エコシステムと生活者から成る新たな食のエコシステムを、価値共創の観点から捉えることでその機能の方法論を模索しました。メーカー、小売業、サービス業それぞれの課題に関わる議論にもとづき、喫食・調理の消費プロセスへのビジネス・エコシステムの関与に加えて、生き方や暮らし方に関わる価値観を踏まえた人々の食生活や食との関わり方に関する提案を通した価値共創、そしてそれらを基軸にしたビジネス・エコシステムの強化を提唱しました。
 

 
論題3:本プロジェクトの企画運営メンバーとご聴講いただく皆さんとのディスカッション
 第3部では、この研究会のメンバーである先生方から第1部および第2部に対するコメントをいただき、オイシックス・ラ・大地の取組みを捉える視点をさらに拡げる議論が展開されました。生協など他のプレイヤーとは異なる独自のありようや、サステナビリティという絶対善を通した顧客への寄り添い方、そういった社会テーマの下での生産者との向き合い方などが議論され、同社についての議論を超えて、新たな食のエコシステムの構築において留意すべき点を思いめぐらせる機会となりました。また、自らの提供価値(属するエコシステムについて、およびその中で固有に担う機能について)を明示して、内外に訴求して求心力を高めるブランドマネジメントの重要性も指摘されました。  
 真のDXがさまざまな業界に及び、あらゆる産業に新たな価値創出のアプローチが生まれるこれからの時代に向けて、本研究会はICTやデジタルの領域にとどまらず議論の裾野を拡げる必要があります。食の領域の研究はその意味で、新しいけれども本質に迫るものと言えます。今回の発見は、エコシステムやキーストーン企業の議論は、オープン化やネットワーク化を前提としたものが中心であり、今後の研究の余地が大きいことです。価値共創の視点を深めるとともに、外食・中食、レシピホルダー、調理家電などさまざまな切り口から内食をリードするシナリオが考えられる中で、それぞれのビジネスモデルを前提にした、生活者の内食、さらには食生活に対する独自の価値のありようやその提供方法について、今後も研究を続けてまいります。
 
(文責:德永 朗)

 
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