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研究報告会レポート

第4回サービス・マーケティング研究報告会レポート「ウェルビーイングマーケティング:Transformative Service Researchからの視座」

#いまマーケティングができること

第4回サービス・マーケティング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:ウェルビーイングマーケティング:Transformative Service Researchからの視座
講演者:白肌 邦生 氏(北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)知識科学系 准教授)
ファシリテーター:山岡 隆志 氏(名城大学 経営学部 教授)
日 程:2022年5月25日(水)18:00-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 2022年5月25日 第4回サービスマーケティング研究会を開催した。
 この研究会では、2022年度から「ウェルビーイングとマーケティング」をテーマとしている。
 ウェルビーイングは、経済学や心理学をはじめとして専門的な研究が豊富なテーマであり、先人や専門家の知見に敬意を払い、マーケティング研究で探求すべき課題は何かを深く議論するシリーズとしている。
 ウェルビーイングは、人々の幸福や幸せを意味する広い概念であるが、経済学、心理学、社会学、倫理学等でも議論されるとともに、ウェルネス、ハピネス、QOL(Quality of Life:生活の質)といった類似概念も存在する。
 今回の研究会では、ウェルビーイングを真正面から扱うTSR(Transformative Service Research)を専門としている白肌邦生氏(北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)知識科学系 准教授)をゲストスピーカーに招き、講演と討議を行った。白肌氏は、TSRの萌芽となるラウンドテーブルの研究会から参加した際のエピソードも交えて、なぜサービス研究でTSRが生まれたか、ウェルビーイングをどう捉えてきたか、といった時代背景も踏まえた観点から講演が行われた。
 
1. 「よりよく生きる」の意味が複雑化し、それを実現する手段も多様化していること。
2. 顧客経験やエンゲージメントがウェルビーイングを考えるうえで重要性を増していること。
3. メゾレベルの視点の必要性を「集団の問題を前向きに変化させる」アップリフティングチェンジ(uplifting change)という観点からサービス経験がどう貢献したか、をどうやって把握するか。そのために「集合的ウェルビーイング」や「集合的効力感」といった概念や指標は有効かといった問題提起がなされた。
 
 これらを踏まえて、マーケティング研究として、ウェルビーイングをどう概念化して、測定尺度の開発や実証研究に進めていくか、解決すべき最初の課題である。また、もう一つ、どのような集計水準でウェルビーイングを捉えたら良いかという課題がある。マクロレベルの社会や経済の最適化を取り扱う幸福の経済学とも、ミクロレベルの個人の幸せを扱う心理学とも異なる、メソレベル、つまり、特定の市場セグメントにとっての集合的ウェルビーイングが、マーケティング研究で想定される一つの考え方である。
 あるアクターにとっての幸福は、ほかのアクターにとって不幸な結末をもたらすこともある。個別企業がとりうる選択とは二律背反する選択肢のいずれかを選ぶことなのか、弁証法的に解決しうるものなのか。今回の議論だけでは到底、結論は出ないが、マーケティング研究で探求すべきという認識は、議論に参加したメンバー間で共有した。
 
 次回は、個人レベルの幸福を扱う心理学の研究者をゲストスピーカーとして招き、心理学ではどのような問題意識やアプローチで、何を明らかにしてきたかを話題提供して頂く予定である。
 
(文責:小野 譲司)

 
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