第17回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「プレイス・ブランディングと都市計画・地域政策の接点を探る」 |
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第17回プレイス・ブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:プレイス・ブランディングと都市計画・地域政策の接点を探る
日 程:2022年9月16日(金)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
講 演:ポストコロナに向けた温泉地の奮闘記 ― 山形を事例に
講演者:高澤 由美 氏(山形大学 准教授)
ファシリテーター:庄司 義弘 氏(新潟大学大学院)
【報告会レポート】
第17回プレイス・ブランディング研究会は山形大学の高澤由美氏をゲストに迎え、山形県内の温泉地を例に、ポストコロナに向けた観光地の取り組みについて議論しました。
高澤氏は都市計画を専門とし、“持続可能な地域づくり”に向け観光をひとつの軸に研究を行っています。地域のサステナビリティを考慮する際、地域内のモチベーションの維持向上が重要と考え、主体となる人たちの連携・共創を重視した活動をされています。
本報告会では高澤先生よりご自身が関わる山形県内の事例の紹介の後、質疑応答やディスカッションを通して、地方の観光地におけるデータ活用の課題、オンラインを活用した地域の魅力発信のあり方など、ポストコロナを見据えた観光地の今後の可能性についても議論しました。
コロナ渦でインバウンドをはじめ観光客の激減に直面した中、「温泉王国」と呼ばれる山形県内の2つの温泉地で、コロナ禍に取り組んだ新しいチャレンジが高澤先生から紹介されました。
1つ目の事例は将棋の駒やサクランボの生産地として知られる天童温泉(天童市)で、市内の旅館経営者が運営する「DMC天童温泉」の取り組みが紹介されました。もともとは「朝摘みサクランボツアー」といった温泉と地域の特産をセットにした体験を売る着地型ツアーを実施していましたが、コロナ禍になり着地型ができない状況の中「オンラインツアー」が企画されました。天童市周辺のモノづくり企業5社と天童温泉との協業によって企画されたツアーで、参画企業同士が事前に話し合いビジョンを共有し、ツアー参加者へは事前に「将棋の駒への字入れキット」など各社の製品や体験キットが送られ、オンラインツアーでは工場内部を紹介するなど詳しいモノづくりのストーリーを伝えて対話する双方向型の内容が実施されました。事後アンケートではモノづくりへの理解が深まるとともに、価格への納得も深まったこと、またコロナ後の来訪意向も高まったことなどがデータによって示されました。
天童温泉のもう一つの取り組みとして、二次交通の実証実験の例が紹介されました。天童温泉に泊まり天童エリアや周辺の温泉地を周遊するという行動促進のために、二次交通の整備・利便性向上による実験を実施。アンケートデータによって二次交通があることで周遊を促す効果があること、一方で季節によって訪問先の楽しみ方の情報提供等の工夫が必要といった各方面の課題が把握されました。
2つ目に高澤先生から紹介された取り組みは小野川温泉(米沢市)の例です。米沢駅から電車で20分、駅からすぐの14件の旅館が連なる小さな温泉街である小野川温泉は、もともと地域の連携は強く、従前よりイベントなどを開催していました。コロナ禍を受け、温泉旅館への滞在と、ウェルビーイングの関係を調べる実験が行われ、アンケートおよび生理指標の計測から、温泉地での体験によってリフレッシュ効果を示す兆しが得られたといいます。
山形県内の温泉地を舞台に、普段の旅館等の経営では忙しくてできなかったチャレンジにコロナ禍の事業者同士が連携して取り組み、新たな可能性を見出した例として紹介されました。データを活用し戦略をたて、ビジョンのもとに複数のプレーヤーが協業するモデルが提示されました。最後に高澤先生から、地域で長期的な視点を持ちながら、コロナのような社会情勢の変化にしなやかに対応できるこれからの地域のあるべき姿が提示されました。
その後のディスカッションでは、活発な質疑応答が行われました。協業するプレーヤー同士のパートナーシップに関する理想的な組み方についての質問では、元々の地域の結びつきとして「顔は知っていて飲みにも行く関係がありながら互いにビジョンは語ったことがなかった」というように、協業関係をつくるにはつなぎ方が重要だという高澤先生の指摘がありました。そのほかバーチャルツアーの集客や、ツアー後の効果といった、オンライン上での観光魅力発信に関する議論もありました。また、DMOにおけるデータの活用課題について複数の参加者から実体験をもとにした問題提起がありました。「データ取得が目的化してしまっている」「データの有効活用事例が少ない」ことなどが共有されました。
プレイス・ブランディング研究会では今後もポストコロナに向け、観光・DMOといった視点でも事例研究・検討を進めてまいります。
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