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研究報告会レポート

第19回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「現代の万博をプレイス・ブランディングの文脈で考える」

#いまマーケティングができること

第19回プレイス・ブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:現代の万博をプレイス・ブランディングの文脈で考える
日 程:2023年1月27日(金)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
講 演:現代の万博とグローバルな都市のブランディング
講演者:岡田 朋之 氏(関西大学 総合情報学部 教授)
ファシリテーター:徳山 美津恵 氏(関西大学 総合情報学部 教授)
 
【報告会レポート】
 第19回プレイス・ブランディング研究報告会では、関西大学の岡田朋之氏をゲストに迎え、現代の万博をプレイス・ブランディングの文脈で議論しました。岡田先生からは、万博の歴史的な流れと意義について説明をいただき、これまでに訪れた万博、とりわけ2021〜22年に開催されたドバイ万博の特徴とレガシーについて解説頂きました。さらには、開催まで2年余りと迫った大阪・関西万博の課題について問題提起を頂き、プレイス・ブランディングとの関係について議論しました。
 
 今や万博よりも大きな国際イベントとして認識されている近代五輪ですが、初期の近代五輪は万博の中で開催された併催イベントでした。その中で、現在の五輪の競技以外で行われるメダル授与や表彰式、開会式の入場行進は、万博が発祥である事実が紹介されました。第2回パリ大会と第3回セントルイス大会の五輪は、万博の一部として6ヶ月間開催されたそうです。万博の規模は、各大会により差異はあるものの、日本国内の有名なテーマパークの年間来場者より、はるかに多い来場者を6ヶ月の短期間で確保するものでありました。また、万博には5年ごとに開催される登録博と登録博間に開催される認定博の2種類があります。登録博は、開催期間が6週間以上6か月以内、開催国が参加国にパヴィリオンの建設を求める方式で、会場規模は25haから無制限と大規模な大会です。認定博は、開催国がパヴィリオンを建設して参加国に貸与する方式で、会場規模は25ha以内と登録博より小規模で、開催期間も3週間以上3か月以内と短い大会になります。
 「帝国」の時代の万博は、開催都市の都市近代化や植民地展示、未開地の民族生活展示による開催国の国力誇示が目的とされました。時代は移り20世紀半ばからの万博は、政府館のパヴィリオンに加えて、企業館のパヴィリオンの増加が見られ商業化が進みました。
 21世紀の万博は国威発揚の舞台から、グローバル社会の課題とその解決策を世界から提示しあう場へと変貌を遂げており、開催する都市にはテーマに関する国際的なハブとなることが期待されています。
 

 
 一方で万博は、開催都市のブランディング機能や、参加国の自国課題の抽出とブランディング意識の発揚の役割を果たしました。日本は、万博への参加を通じて殖産興業や富国強兵の必要性を感じ、その後の政策への反映と万博を他国に対するブランディングのための装置と理解しました。日本が万博に出展したことは、他の参加国へも「ジャポニズム」として大きな影響を与えました。万博は、参加国相互に影響を与えるとともに、来場者を通した文化そのものへも大きな影響を与えました。その影響を最も端的に表すのが、芸術を通した影響で、絵画、デザイン、アートへと広範な影響を与えました。
 現在の万博は、グローバル社会のなかで開催都市のブランディングとして開催されています。具体的には、愛知万博は「環境」、ミラノ万博は「食」と言ったテーマをもとに開催都市のブランディングとして万博が開催され、ドバイ万博についてもテーマに基づいた開催都市のブランディングがどのように展開されたかを岡田先生から解説を頂きました。その上で、2025大阪・関西万博の問題点の提示を頂きました。
 

 
 大阪・関西万博は、開催まであと2年という状況下、過密化した都市のなかでの開催場所への交通アクセス、跡地利用が白紙であること、発信言語の少なさなどの情報発信が問題として挙げられました。
 講演後の議論では、万博のレガシーをどのように客観的に評価するかについて、テーマに沿った跡地利用や開催都市の文化にレガシーが残されるかよって評価がされるとの解説を岡田先生から頂きました。また、万博の参加国が行う自国へのフィードバックについては、以後の参加国のブランディングにどのように反映されたかを見る必要があるとの解説を頂きました。
 多くの万博に足を運んだ岡田先生ですが、今回のドバイ博に関してはデジタルとの融合がこれまでになかった形で現出していたという点が評価できるとのことでした。万博におけるDXの形態として新たなステージに至った万博ということで、大阪・関西万博がドバイ博を超えた新たなものを見せられるか、ぜひ注目していきたいと思います。
 
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