リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第9回ユーザー・コミュニティとオープン・メディア研究報告会レポート「バーチャルYouTuber ― 顧客との新しい絆 ―」

#いまマーケティングができること

第9回ユーザー・コミュニティとオープン・メディア研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン)
> 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:バーチャルYouTuber ― 顧客との新しい絆 ―
日 程:2023年3月18日(土)10:30-12:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】

 

1. インターネットを介するコンテンツにおける関係性マーケティングの検討
富樫 佳織(京都精華大学 准教授)・津村 将章(神奈川大学 准教授)

 バーチャルYouTuber(VTuber)がビジネスの領域を拡大している。VTuberとは2次元や3次元のアニメーションキャラクター(アバター)に扮した情報発信者であり、トークやゲーム実況、ダンスや歌唱などのパフォーマンスをYouTube等の動画配信サイトで提供するコンテンツが日本を発信源としてファンを拡大している。トピックスとして2022年6月にVTuberをプロデュースする企業、ANYCOLOR株式会社が東証グロース市場に株式上場して時価総額が拡大したほか、2023年にもホロライブプロダクションを擁するカバー株式会社が上場した。このVTuberビジネスのサービスには、①ライブストリーミング、②ライブイベント、③企業案件のプロモーション、④グッズやコンテンツ販売(コマース)、があり、カバー株式会社によれば、ライブストリーミングとコマースに関する売上高が大きい。
本研究では関係性マーケティングにおけるコミットメントと絆をテーマに報告した。先行研究では店頭サービスやテーマパークなどのリアルな空間における直接的相互作用を扱うのに対して、インターネットを介して顧客と直接的に接点をもたず、同一空間を共有しない場面ではどのような相互作用があり、コミットメントや絆がどのように構築されるのか。
 事例研究では、2021年5月~6月に名古屋パルコで開催されたイベント「ナゴヤVTuber展in パルコ」において、ファンユーザーである支援者が展覧会づくりに参加できるクラウドファンディングが実施され、ファンは応援するVTuberをイベント対象にしてくれた感謝の表現としてグッズを購入して支援する傾向があり、より高額な権利(推しのVTuberが目立つ場所に掲示される等)から売り切れており、自分が好きで応援するコンテンツの業界を一緒に持続させたいという動機づけが見られた。続いて、このイベント来場者に対してアンケート調査も実施した(回答数368)。それによると、特定の推しがいるのは93%、ファン歴では3年、関連する年間支出額は5~8万円が最も多く、支出額の内訳ではグッズ、イベント・ライブチケット、CDや音楽配信の楽曲購入、YouTubeでのスーパーチャットが上位になった。ファンユーザーの回答データはテキストマイニングを行い、①発信者の人間性(配信者の人間性と魅力等)、②距離の近さ(コミュニケーションがとりやすく、かつインタラクティブ)、③自由な表現(生身の身体でないことによる表現手法やバーチャル空間ならではの表現)、などのVTuberの魅力を見出した。
発見事項として、配信者とファンの関係性は直接的な相互作用ではなくても同一の時間性を共有し、距離感が重要になる。配信者とのインタラクションから存在を身近に感じるようになると、ファンとの間に感情的な強い絆が結ばれる。
 

2. バーチャルYouTuberの大学広報、地域支援への活用事例
片野 浩一(明星大学 教授)

 VTuberを大学広報と地域活性化へ活用する事例が紹介された。明星大学経営学部片野ゼミナールの所属学生がコンテンツチームを作り、VTuberの開発から運用までを担当している。VTuberコンテンツは、モデルの3Ⅾデザイン、モーションとボイスの入力、動画の配信・録画、そしてYouTubeライブのステップで展開する。制作したVTuberは、大学広報のアンバサダーとして大学公式チャンネルの動画内で活動するほか、市内の高幡不動商店街を動画で紹介したり、デジタルスタンプラリーのクイズ出題などを担当した。大学広報の動画では学部の受験生が増加したが、これがアバターによる紹介か、大学生による紹介か、について視聴者からの好感度や評価の違いを調査するのが検証への課題である。また商店街支援では商店街関係者からVTuberを用いたプロモーションが目立つ存在で、顧客から良い印象であったとの感想をもらった。コンテンツを制作した学生にとってはコンテンツの制作スキルが向上し、就活への経験のアピールとなった。
 
 2022年度もご参加いただき、ありがとうございました。2023年度も引き続き、コンテンツとコミュニティの関係をテーマに研究報告会を企画してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
 
(文責:片野 浩一)

 
Join us

会員情報変更や、領収書発行などが可能。

若手応援割
U24会費無料 &
U29会費半額
member