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研究報告会レポート

第2回web3研究報告会レポート「web3時代の新たなマーケティングを紐解く」

第2回web3研究報告会(東京) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:WEB3時代の新たなマーケティングを紐解く
講 演:「エンターテインメントにおけるweb3の可能性」
報告者:寳諸 祐一(株式会社東北新社 エンタメ開発部 プロジェクトマネージャー)
    松田 洋平(株式会社東北新社 エンタメ開発部 プロデューサー)
司 会:平藤 篤(株式会社マルチプル 代表 / 明星大学 デザイン学部 非常勤講師)
日 程:2024年3月21日(木)18:30-20:30
場 所:株式会社東北新社
 
【報告会レポート】
 web3研究会では「アイリダ(IRI-DO)」を運営する東北新社の寳諸氏と松田氏と共に「エンターテインメントとweb3」の議論を行いました。
 
1.NFTとコミュニティの親和性
講演の様子 アイリダは、近未来の渋谷を舞台にした小説(岸正真宙・著)に登場する3つのエリアを表現したNFTを提供するweb3プロジェクトです。販売は2023年4月と9月に1,111枚のコレクティブNFT(コンピュータにより絵のパーツを組み合わせて生成するアート作品)からスタートしました。このコレクティブNFTとは、数百から1万枚ほどが発行され、類似するアートワークを保有することで仲間としての視認性と識別性が高まるNFTアートの種類の事です。これは同じブランドやユニフォームを身にまとう感覚と近く、趣味嗜好の似た者同士が集まるコミュニティを形成しやすいことが特徴です。似た者同士のNFT保有者(ファン)から潜在ユーザー(コミュニティ参加者、NFT未保有者)へ同心円状に熱量や情報が拡がっていくことで、コミュニティの影響力が発揮しやすくもなります。
 このように「NFT」と「コミュニティ」の相性の良さに注目し、自社IP(知的財産)の「アイリダ」で新しいエンターテインメントが創出できないかと考え、プロジェクトが始動しました。
 東北新社は、映像制作会社としての背景から、プロジェクトのPV(プロモーションビデオ)をつくり、人気声優のボイス付きNFTを提供したり、コミックサイトで縦型WEBコミックを提供し、エンターテインメントとweb3の可能性に1年間取り組んできました。現在は、NFT保有者300名を中心に、8,000名ほどのDiscord登録者と共にコミュニティメンバーが集まり活気づいています。
 
2.web3型の新しいマーケティング手法
 寶諸氏は、これからのインフルエンサーマーケティングの主体は、1人の強い影響力を持つKOL(Key Opinion Leader)から、コミュニティ参加者によるKOC(Key Opinion Consumer)へ移行していると述べます。
 ある時、自身が参加するNFTアートコミュニティで、アートと全く関係のないパーソナルトレーニングの話題で盛り上がりました。その中でパーソナルトレーニング講師が初回無料のパーソナルトレーニングをコミュニティメンバーにプレゼントしてくれました。数名のホルダー達は初めてパーソナルトレーニングを体験したのです。参加した理由は、その講師の方も我々のコミュニティメンバーで信頼している人だったから。そして他の熱狂しているホルダーの方からパーソナルトレーニングの良さを聞いたからです。この体験からコミュニティを活性するには“自分が熱狂しないものは、他人は熱狂しない”ことを学び、まずはプレイヤーとして参加し、熱量を感じ取ることの重要性を強調しました。心が折れそうでコミュニティから離脱しそうな時でも一緒に熱狂するコミュニティの仲間がいることがコミュニティの継続につながると寶諸氏は言います。
 実際にアイリダでは、KOCの活動として、熱量が高いファンたちと一緒に「アイリダ主人公の靴」のデザインやAR演出の案出しといった、縦型WEBコミックの共創制作を行いました。自分の好きなコンテンツに、自分のアイデアが採用されるだけで、熱量がさらに高まり、コミュニティが盛り上がります。ただし、アイリダでは、何でも自由にするのではなく、芯の部分はプロのクリエイターがクオリティを保ち、それ以外の部分はファンと一緒につくっていくようバランスを取ることを心がけていると言います。
 
3.コミュニティを盛り上げる秘訣は“ワチャワチャ楽しむこと”
 報告会の参加者からは「アイリダではどのようにユーザー欲求を満たしているか」という質問がありました。
 よくコミュニティからは、サードプレイスのように「居心地が良い」と言われます。これは、全員が積極的に創作に関わりたいわけではないし、NFTを保有したいわけではなく、他の目的を持って参加している人もいると考えています。週に1~2回外部コミュニティであるX(旧Twitter)で音声配信を行っていますが、そういった親しみから、雑談するために参加する人もいるし、目的なく興味本位で参加する人もいるため、そこに集まってくれた皆さんと常にコミュニケーションするよう心がけているとのこと。
 またXの音声配信(Xスペース)は公式情報を伝えるための仕事の場ですが、コミュニティ内では「仕事」としてではなく自然体の自分としての発言を意識しています。例えば、毎朝「おはよう」と言うと、皆さんが「おはよう」と返してくれたり、最近食べたものなど近況を伝えたりします。これは会社からの指示ではなく、土日や夜間問わず“自分たちと皆さんでワチャワチャ楽しむこと”を重視しています。こういったことが「居心地の良さ」につながっているのではないでしょうか。コミュニティ運営してきた経験からコミュニティ参加者とのコミュニケーションの秘訣を語っていただきました。
 
(文責:有泉 雅彦 写真:MULTiPLE)

 
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