第4回デジタルトランスフォーメーション研究報告会レポート「関係性の拡張から考えるマーケティングとDX」 |
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テーマ:関係性の拡張から考えるマーケティングとDX
- 関係性の拡張から考えるマーケティングとDX
今井 紀夫(阪南大学 経営情報学部 専任講師) - 報告に対するコメント
吉岡(小林)徹 氏(一橋大学 経営管理研究科 経営管理専攻 講師) - 質疑応答
日 程:2024年3月19日(火)19:00-20:30
場 所:一橋大学 千代田キャンパスでの対面およびZoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
最初に本研究会メンバーの今井が報告を行った。今回の報告内容の背景として、これまで本研究会ではDXをデジタルプラットフォームを中心とするエコシステムへの対応と定義する中で、主にイノベーション型プラットフォームを中心に議論されてきたことから、もう1つの取引型プラットフォームも含めた議論の必要性が提示された。その上で、近年のデジタル技術の特徴の1つである接続性が様々な繋がりを生み出したことにより、1990年代頃から議論されてきたリレーションシップ・マーケティングの範囲や、関わる主体が拡張されたことが指摘された。
経営学の観点では、近年のデジタル化の影響として、従来のパイプライン型ビジネスに加えて、プラットフォーム型ビジネスの登場が指摘されてきた。そしてプラットフォーム型ビジネスの成功例で見られる急激な成長を可能とする要因として、生産・イノベーション・取引という3つの区分での整理が行われており、中でもイノベーションと取引では自社にとどまらない、他の主体との関係性の構築という点が、マーケティングにおける関係性の拡張との共通点として見出された。
この共通点の事例として、自社サービスに他社のサービスを加えることや、顧客へのコミュニケーションに自社販売員を活用することで新しい価値を創出した例と、このような関係性の拡張による新たな価値提案に向けて、ダイナミック・ケイパビリティの観点で必要とされる組織能力が示された。
次に、一橋大学の吉岡先生から報告に対するコメントを頂いた。イノベーション論を中心とした経営学の視点から、プラットフォーム・エコシステム戦略における動機づけとしてのネットワーク効果が紹介されると共に、イノベーション推進時に直面する様々な反対が紹介された。それらの反対の例として、着想・開発・普及といった様々な段階での反対や、業務プロセスにおける現状維持バイアスや便益が見えにくい場合などが挙げられた。
これらを踏まえ、DXの課題として正しく集めるべきデータの特定と、その収集のためのインセンティブや業務ルーチンの変更を組織内外で取り組むことや、DXによる機会として、デジタル化への正当性付与や、PDCAサイクルからの組織のダイナミック・ケイパビリティ向上などが取り上げられた。
最後に会場やオンラインでの参加者による質疑が行われた。関係性の拡張について、「時間的な広がり」と「取引対象や取引範囲」の広がりという異なる側面があり、それぞれの定義、メカニズム、境界条件などの検討を行う必要性などが議論され、報告会は終了した。
(文責:今井 紀夫)