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研究報告会レポート

第9回AI研究報告会レポート「日清食品ホールディングスの生成AIの全社活用」

第9回AI研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:日清食品ホールディングスの生成AIの全社活用
報告者:成田 敏博 氏(日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CIOグループ情報責任者)
日 程:2024年3月18日(月)17:00-18:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告者プロフィール】成田 敏博 氏
成田 敏博 氏
日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CIOグループ情報責任者
1999年でアクセンチュアに入社。公共サービス本部にて業務プロセス改革、基幹業務システム構築などに従事。2012年、ディー・エヌ・エー入社。グローバル基幹業務システム構築プロジェクトに参画後、IT戦略部長として全社システム企画・構築・運用全般を統括その後、メルカリIT戦略室長を経て、2019年12月に日清食品ホールディングスに入社。2022年4月より現職。
 
【報告会レポート】
 AI研究会は、AI(人工知能)技術の進展に伴うマーケティング研究の論点及び実践的示唆の導出を目的としています。本研究会は、研究報告会(ワークショップ)を開催し、企業実践や関連する理論の理解を深めつつ、企画運営メンバーや参加者と一緒に議論しながら進めております。
 今回は、日清ホールディングス株式会社の執行役員でCIOグループ情報責任者として全社のDXを牽引する成田氏を講師としてお招きしました。
 日清食品ホールディングスはChatGPTが公開された直後の2023年4月から、営業部門、マーケティング部門を含む全社で生成AI(ChatGPT)の活用を本格化しています。自社で蓄積したデータをChatGPTに学習させ、各部門(営業、マーケティング、宣伝、広報、経営管理、経営企画、財務経理、内部監査、法務、食品開発、サステナビリティ、品質保証、品質究理、生産)での利用環境を整備し、効果的な事例を社内で共有しながら、試行錯誤を重ねて成果を上げています。
 特にマーケティングに関連する印象的な組織的な取組として、以下の二点が挙げられます。
 

  1. 活用の範囲
     営業部門から展開が開始された生成AI活用は、マーケティング部門での利用が活性化し、結果として特に活用実績や割合が高まったのがマーケティン部部門でした。情報収集としてのターゲットインサイト、新規市場、新商品に係る情報収集、エンタメのトレンドとしての調査、アイデア出し(フレーバー提案、プロモーション案、コピー案)、そしてプレスリリース案(たたき台、見出しやリリース案)の作成などが行われています。
  2. 蓄積されたノウハウとデータの活用
     商品の食べ方のアイデア出しの際に、商品属性、特性や提案先の業態に応じたプロンプトを準備するなど、同社の特有のノウハウが活用されています。他にもコピーライトの制約条件を考慮したプロンプトのフォーマットなどが紹介されました。このように比較的経験の浅い若手などが経験者に近づく検討を行うことを可能となっています。

 成田氏は、生成AI時代に求められるスキルとして、AIによって出力されたアウトプットを鵜吞みにせず、アウトプットを見極める識別力とアウトプットをより優れたものに磨き上げる構想力の重要性を強調されました。
 成田氏には、豊富な実践内容をご紹介していただき、重ねて深謝申し上げます。
 
研究会を終えて
 人とAIの協働が実践的に進んでいます。AI技術の進化は目まぐるしく、組織的な生成AI活用の工夫について試行錯誤が続けられています。
 日清食品ホールディングス社のように、RAG(検索拡張生成)技術を活用することで、企業は独自に開発・蓄積してきたマーケティングに関するデータと企業の独自性ある業務ノウハウを基にプロンプトを作成し、AIによる価値を創出することが期待されます。
 本研究会では、この領域の研究をさらに深めていきたいと考えています。
 
(文責:依田 祐一)

 
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