第2回フランチャイズ・システム研究報告会レポート「FCビジネスにおけるマーケティングとコンプライアンス」 |
第2回フランチャイズ・システム研究報告会(東京) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:FCビジネスにおけるマーケティングとコンプライアンス
日 程:2024年7月20日(土)
13:30-17:30:研究報告会
17:50-19:50:交流会
場 所:<研究報告会>駒澤大学 3号館206号教室
<交流会>Kitchen駒膳
【報告会レポート】
今回は、フランチャイズを巡る法的な問題をテーマとして、下記のごとく弁護士と中小企業診断士の方々から報告を受けました。フランチャイズの研究は、大きくは①法的領域と②経済学・流通マーケティング領域との2つの領域でなされてきましたが、この2つの領域の研究交流はこれまで皆無に近い状態でした。その結果、流通マーケティング領域のフランチャイズ研究には法的な視点がほぼ欠落した状態が続いてきました。
その意味では、今回の研究会はこの問題を打破する画期的な試みでした。流通マーケティング領域の学会に弁護士が登壇されたのは、おそらく初めてであったのではないかと思われます。
研究報告会
冒頭、今回のコーディネイターであった神田弁護士から、報告会の解題(趣旨説明)がなされ、その後、以下の4つの報告がなされました。報告要旨は下のリンクからご覧ください。
報告1:フランチャイズをめぐる関連法令の全体像~独占禁止法を中心として~
高橋 善樹(太樹法律事務所 弁護士)
報告2:FCにおけるビジネスモデルの保護
神田 孝(心斎橋パートナーズ 弁護士)
報告3:FCのM&Aにおける法的留意点
若松 亮(若葉パートナーズ法律会計事務所 弁護士)
報告4:FCビジネスにおけるトラブルへの実務対応 ~『フランチャイズトラブル回避ガイド』の解説~
高木 仁(東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会 副会長 / 中小企業診断士)
まず第1報告では。高橋弁護士からフランチャイズを取り巻く法律の全体像を説明して頂き、とくに重要となる独占禁止法を中心にした解説をして頂きました。マーケティング研究(ビジネスの成長・発展)の前提として健全なFCシステムによる適正取引を実現することが不可欠であることが説明された後、公正取引委員会による「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(「フランチャイズ・ガイドライン」)について、①本部の加盟者募集段階、②フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引段階に分けて説明がありました。また、現在の公正取引委員会の実務として、もし独占禁止法に違反したとしても違反者が自主的に訂正することで厳しい制裁を受けずに済む制度(確約制度、自発的申出)が整備されていることが説明されました。
第2報告では、神田弁護士から、FCのビジネスモデルのコピーを巡る係争について解説して頂きました。チェーン業界ではヒットモデルが出ると、そのビジネスモデルをコピーすることが横行していましたが(「和民」vs「魚民」事件、「月の雫」vs「月の宴」事件、「鳥貴族」vs「鳥二郎」事件など)、近年、コメダ珈琲のコピーブランドを開業した会社に対して東京地裁が不正競争防止法違反を理由とする営業差止命令を出したことが説明されました。一通りの説明を終えた後、参加者に対して、「ブームになったビジネスモデルをコピーして同じ事業をすることは経営学的に見て是が非か」について質問され、活発な意見交換がなされました。ちなみに、当日は「コピーモデルを出すことは経営学的には是認できる」という考えが多数を占めました。
第3報告では、若林弁護士から近年増加しているFCチェーン(本部)のM&Aに関する法的問題について解説して頂きました。まず、事業譲渡の売主側と買主側の目的をそれぞれ説明した上で、M&Aの手法と進め方が説明されました。特に、FCのM&Aでは、アーンアウト(earn-out)という方法が有益であることが指摘されました。これは、対象会社の将来の業績が一定基準に達した場合に、追加の買取金額を支払うとする条項で、売主と買主との間で、対象会社の価値評価に相違がある場合に両当事者の評価の溝を埋めて取引を成立させる手法として有効である旨が述べられました。アーンアウトについては、会場からは、実務的な問題としてどのようなものがあるかと言う質問が出され実務家の関心の高さがうかがわれました。
第4報告では、高木・中小企業診断士から、東京都中小企業診断士協会のフランチャイズ研究会がまとめられた『フランチャイズトラブル回避ガイド』の解説をして頂きました。
インボイスがフランチャイズ・ビジネスに及ぼす影響など、極めて実務的・現実的なテーマについての説明がなされました。
> 各報告の要旨はこちら
(文責:フランチャイズ・システム研究会リーダー 川端 基夫)