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研究報告会レポート

第28回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「ローカルプロジェクトのつくりかた」

第28回プレイス・ブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:関係人口のフロンティア
講 演:ローカルプロジェクトのつくりかた
講演者:若狭 健作 氏(株式会社地域環境計画研究所 代表取締役)
ファシリテーター:徳山 美津恵 氏(関西大学 総合情報学部 教授)
日 程:2024年11月22日(金)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
共 催:関西大学徳山研究室
 
【報告会レポート】
 今年度のプレイス・ブランディング研究会は「関係人口のフロンティア」をテーマに地域について考えていきます。今回のゲスト講演者は(株)地域環境計画研究所の若狭健作氏です。若狭氏は尼崎を拠点に20年以上にわたりフリーペーパー『南部再生』を発行し続ける他、様々な地域プロジェクトに携わっておられます。そこで「ローカルプロジェクトのつくりかた」をテーマにご講演をいただきました。
 
 尼崎といえば、庶民的な町というイメージが全国に広がっています。「あま」という愛称を持つこの町に対する若狭氏の関わりは、大学時代にさかのぼります。当時から工業都市としての光と影を感じ、コンサルタントとして就職後に尼崎南部の再生に本格的に取り組むようになったそうです。特に「尼崎運河クルージング」は、ドイツの工業地帯の運河クルーズを参考にしたもので、現在も継続的に実施しているだけでなく、関西万博のフィールドパビリオンともなっています。ここでは、公害の歴史を風化させないという問題意識と同時に、「まじめだけでなく面白く」という若狭氏が大事にしてきたコンセプトが息づいています。
 

 
 若狭氏の取り組みは多岐にわたります。地元の郷土史家と協力して行った尼いもの復活・保存栽培は、15年前から神社への奉納祭を定期的に行うまで成長しました。この取り組みは、味の記憶を発掘し、公害の歴史を学ぶ学校教育の一環としても重要な意味を持っています。
 
 また、2001年に創刊された無料のローカルマガジン「南部再生」についてお話を伺いました。「南部再生」は現在までに66号を数えています。「硬いものを柔らかく、柔らかいことを真面目に」をコンセプトに、地元の小学生まで参加するようなボランティアの編集メンバーに支えられています。例えば、2017年には「不倫」という斬新な視点で「近松門左衛門」を特集したところ、地元の大学研究所から協力をえることができ、研究所の公式資料としても認められました。また、「はじめてのスナック」という特集では、急速に数が減少していた尼崎のスナックを社会資源として再評価し、実際に居ぬき物件を活用して新しいスナックを開店する様子を紹介しました。さらに、「尼の神さま仏さま」という宗教をテーマにした特集は、ラジオ番組にもなり、尼崎コミュニティラジオで9年間放送され、海外でも注目されました。
 

 
 講演の中盤では、尼崎の東端に位置する杭瀬地域を舞台にしたローカル・ブランディングの取り組みが紹介されました。半径500mを中心にこの町を捉えた場合、人口はこの20年でマイナス20%、65歳以上の人口は32%に達し、世帯数の半分は一人暮らしであり、商店街の40%は空き店舗といった状況でした。若狭氏はこれまで関わった尼崎の町の中でも杭瀬は深刻な状況にあると感じたそうです。そこで、町の有志が気楽に集まれる場所づくりとして、「杭瀬アクションクラブ」を始めました。様々な職業に携わる内外の人々が毎月1回集まり話し合うだけの集まりですが、何かをやりたいと思えばそれぞれが動くといった中で、「杭瀬まちなか再生計画」など様々な具体的な企画を生み出すに至りました。講演では杭瀬中市場における空き店舗活用として古書店「二号店」の事例や、使われていなかった公園の再生の様子などが紹介されました。若狭氏は、「居場所・コミュニティスペースと簡単に言えば負け」とし、町の人々にリアルに互いに伝わる形を大事にしているそうです。
 

 
 その後のフロアでのディスカッションでは、参加された方々から多様なご意見・ご質問がなされ、盛況となりました。杭瀬アクションクラブのより詳しい活動内容・形態や、そこで交わされるコミュニケーションからどのようにして実際のアクションにつながるかといった議論が交わされました。特に現役世代も多く参加している状態について、人々が気楽に町の取り組みに関われる要素をどうつくるのか、杭瀬外からの参加者も歓迎するようすなどが紹介されました。そうした中、若狭氏はそうした集まりについて、掃除をしていると自然に集まってくる感覚、神道の空間のイメージを持っているとされた点は印象に残りました。
 最後にファシリテーターである関西大学・徳山先生からは多様な取り組みの継続性と、様々な人の交わりの大切さについて、今後も若狭氏の取り組みに注視したいとのご指摘で締めくくられました。
 

 
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