|
第7回マーケティング/PRテクノロジー研究報告会レポート「トキワ莊大學-『昭和レトロ』をテーマとしたイベントのPR事例とディスカッション」 |
第7回マーケティング/PRテクノロジー研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:トキワ莊大學-「昭和レトロ」をテーマとしたイベントのPR事例とディスカッション
- トキワ莊大學-「昭和レトロ」をテーマとしたイベントのPR事例について
発表者:荻野 健一 氏(京都芸術大学 教授 / デジタルハリウッド大学大学院 名誉教授) - PR事例の実践報告を受けての質疑応答・参加者によるディスカッション
ファシリテーター:藤崎 実 氏(研究会リーダー / 東京工科大学 准教授)
荻野 健一 氏(同上)
日 程:2024年11月14日(木)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
今回の研究会では、以下2つのパートにて構成された。
1. トキワ莊大學-「昭和レトロ」をテーマとしたイベントのPR事例に関する実践報告
2. PR事例の実践報告を受けての質疑応答・参加者によるディスカッション
1. トキワ莊大學-「昭和レトロ」をテーマとしたイベントのPR事例について
発表者:荻野 健一 氏 (京都芸術大学 教授 / デジタルハリウッド大学大学院 名誉教授)
地方創生プログラムの社会実装
・地方創生の社会実装をテーマに地域資源の発掘とアジアとの文化交流プログラムの開発を手掛けてきた。地域メディアの立ち上げや地域プロモーションの戦略設計などに取り組んできた。
・2016年からは、「聖地創生サロン」のプロジェクトの立ち上げを地域や企業及び団体と連携した文化知層の発掘とインバウンドにどのようにつながるかを研究対象にしている。
・研究を行っていく中でどの地域に行っても地域に資源がありませんと言われた。学生達とフィールドワークを行っていく中で、各地域の魅力的なコンテンツの掘り起こしを行なった。はじめに秋葉原のコンテンツをどうインバウンドにつなげていくか地域研究の活動を行った。その後、様々な地域で研究活動するようになった。
購買行動のメディアコミュニケーション
-
・マスコミが物を売るのではなく。その地域にあるローカルコミュニケーションやエリアコミュニケーションがあることで物が売れていくためにそれぞれのメディアをつないでいくためには、ソーシャルメディアとの連携が大切である。
・人がなぜ購買するか考えると自分の心の中にある「内的要因」と「外的要因」が影響している。また、インバウンド観光においても「内的要因」と「外的要因」気分の変容がどう購買行動に結びついているか分析することが大切である。
トキワ荘を生んだ昭和とは
・トキワ荘を研究するために昭和の時代を「戦前(モダンデザインや新しい働き方)」「戦後(女性のかわいいや少女漫画)」「行動経済成長(サブカルチャーの時代)」「バブル(セゾン文化、おいしい生活)」の4つに分けてそれぞれの時代の特徴的なもの見つけ出すことができた。さらに若者が昭和レトロに共感する理由や興味を持ち新しい価値観を生み出す理由について分析した。
トキワ荘のある街
・2014年に「東京マンガ・アニメカーニバルinとしま2014」のイベントで当時の豊島区長であった高野之夫氏が消滅可能性都市について発言され豊島区の今後の未来を考えトキワ荘を起爆剤にして、消滅可能性都市を少しでも改善することができないか荻野氏に打診があり、椎名町を中心にロビー活動を行ってきた。
・トキワ荘のあった椎名町の小学校や高齢者施設を中心に地域住民がどのような思いを持っているかロビー活動の一環としてヒアリング調査やディスカッションを行った。さらに手塚治虫氏の生い立ちや昭和の時代と漫画を題材に小学校へのロビー活動を行い地域での理解を深めていった。
・トキワ荘のあった時代は、21世紀というユートピアを夢見て、1950年代に漫画家や編集者が全国からトキワ荘のある椎名町周辺に集結した。

トキワ荘のある豊島区のまちづくりとトキワ莊大學
・今も東京都内で昭和レトロが体験できる場所が「東京文化資源ゾーン」「日本橋ゾーン」「都電荒川線ゾーン」「豊島ゾーン、四区連携」の4つ存在している。
・豊島区の文化知層を研究した結果、江戸時代から平成時代まで分析した結果、サブカルチャーの生産地であり、昭和や芸術によるまちづくりが行われてきた。新たに「トキワ荘協働プロジェクト協議会」などが立ち上がり連携を図った。
・2018年、2019年に椎名町の住民に漫画や昭和レトロのコンテンツを楽しんでもらうために「トキワ莊大學文化祭」を開講した。2020年に「トキワ荘マンガミュージアム」が開館しミュージアムと連携したイベントを開催してきた。
・当時を知る人だけでなく若者も楽しめるイベントとして、ときわ荘通りと南長崎花咲公園を中心に昭和の街をコンセプトに街ゼミナールとして、「トキワ莊大學」を実施しており、現在は、様々なテーマ毎(学部別)にイベントやシンポジウムを開催している。

2. PR事例の実践報告を受けての質疑応答・参加者によるディスカッション
ファシリテーター:藤崎 実 氏(研究会リーダー / 東京工科大学 准教授)
荻野 健一 氏(京都芸術大学 教授 / デジタルハリウッド大学大学院 名誉教授)
Q:トキワ荘の文化遺産として、最初に着目したのは誰なのか。
A:トキワ荘マンガミュージアムの前にある時計店の店主が、トキワ荘が財産になるのでは着目した。
当時の豊島区長が時計店の店主の話に耳を傾けて、その後、豊島区も着目するようになりロビー活動に力を入れるようになった。
Q:ロビー活動を行う上でどのくらいの期間がかかったのか。
A:基本的に10年間かかる。最初は、誰も見向きもしてもらえなかった。その後、小学校の校長先生からお声がけいただくようになった。また、小学生が地元に愛着を持ち意識が芽生えてこれまで中学受験し校区外の中学校に通うケースが多かったが地元の中学校に通うケースが増えている。最初にロビー活動していたころの小学生が現在大学生となりそのときに彼らがトキワ荘の取り組みついて思い出してもらえるといいなと思っている。また、自分事として若者動いてくれることを期待している。今後もロビー活動を継続していく。
Q:地域住民との連携についてどう考えているのか。
A:いまトキワ荘の取り組みとは別に三浦半島のプロジェクトにも携わっている。三浦半島に運慶が作った仏像があるから実際に見学した。当時ステータスとして、仏像を奉納する文化があり、運慶に仏像制作を依頼した。地域の方々に向けたロビー活動を行っている。トキワ荘同様に地域の方々の理解につながる活動が大切である。
Q:プロジェクト活動の協力者をどのように増やしっていったのか。
A:最初は、大学のゼミナール活動として行っていた。その後、SNSで発信するようになり、学校の先生が興味を持つようになり学校の先生向けに情報発信するようになった。また、実際にトキワ荘の街ゼミナールに参加していただいた人がSNSでシェアするようになった。また、高齢者も毎回興味を持ってイベントに参加するようになり口コミなどからも認知されるようになった。
Q:トキワ荘のプロジェクトに実際に携わってからインバウンドなどで椎名町を訪問する観光者の属性について
教えてほしい。
A:具体的な属性については、計測できていない。しかしながら、日本文化を研究しているシンガポール大学の研究者がリピーターとして訪問している。今後は、各国から椎名町に来てもらいたい。また、さまざまな留学生と交流してみると純粋に漫画が好きというよりも漫画に描かれている街や日本文化が好きだから日本に来日する傾向が強い。現在は、留学生の意見を取り入れながら日本に来ると漫画の世界が体験でき昭和レトロを体験できるコンテンツの企画を検討している。
Q:椎名町の街をキャンパスに見立てた着想について教えてほしい。
A:街に情報が埋め込まれているのに地元の人が気づいていないため街そのものをキャンパスにすることでいろんなところに情報があることを地元の人に理解してもらいたかった。南池袋、雑司ヶ谷、椎名町を一つのキャンパスと見立てる。また、街をキャンパスにするのは、その地域にある地域資源を掘り起こすことが目的であるため街をキャンパスに見立てた概念を取り入れた。テーマパークや博物館といったメタファーにせずに「キャンパス」とした背景には、「(主体的な)学びの場」にしたかったという意図も込めている。

【研究報告会を終えて】
日本のアニメや漫画など昭和レトロな文化体験や実際に地域の魅力を発信することで、インバウンド観光や地方創生につなげていくことが大切であると荻野氏の講演を聴講して感じた。
また、昭和レトロな街並みや文化を観光対象として活用したトキワ莊大學の取り組みは、地元地域住民との関係性に加えて、地域の文化資源や位置情報などリアルとデジタルが融合するメタツーリズム(メタ観光)の視点についても考察されており、新時代のマーケティング/PRテクノロジーを活用した地域コンテンツの発信や新たな観光の可能性について参加者の理解が深まった。
(文責:奥野 辰広)

