リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第29回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「NFTを活用した新しい自治体運営と関係人口の創出」

第29回プレイス・ブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:関係人口のフロンティア
講 演:NFTを活用した新しい自治体運営と関係人口の創出
講演者:菅野 大志 氏(山形県西川町 町長)
ファシリテーター:庄司 義弘 氏(開志専門職大学 専任講師)
日 程:2025年1月24日(金)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
共 催:関西大学徳山研究室
 
【報告会レポート】
 今年度のプレイス・ブランディング研究会では、「関係人口のフロンティア」をテーマに地域について考えていきます。今回のゲスト講演者は、山形県西川町長の菅野大志氏です。研究会としては初めて自治体の首長をお迎えしました。菅野氏は、山形県の中山間地域である西川町の町長として、デジタル技術を活用した先進的な取り組みに挑戦し続けておられます。そこで「NFTを活用した新しい自治体運営と関係人口の創出」をテーマにご講演をいただきました。
 

 
 西川町は人口約4,500人の自治体で、住民の半数近くが高齢者だそうです。40代の町長として就任してからの2年間、「わかりやすい自治体」を目指してこられたとのことでした。西川町の取り組みとして特に特徴的なのは、補助金を中心とした国の施策を徹底的に活用する点です。また、競争の時代において欠かせない要素として、職員と一体となって「寛容性」、「ごちゃまぜ」をキーワードに挑戦を続けているそうです。
 こうした背景から、西川町では「つなぐ」という概念を常に意識しているそうです。特に、企業が自治体と連携したい際に重視するオンライン環境の整備に着目し、ハード面だけでなく、ソフト面で各職員が“早く”対応できる体制づくりを意識して「つなぐ課」を設置しました。その結果、さまざまな企業連携が生まれたとのことです。
 

 
 続いて、お話は財源拡充を担う「かせぐ課」の取り組みに移りました。そこでは、デジタル住民票、公園や命名権のNFT、サウナなど、話題を集める多様な施策が生み出されています。関係人口を創出するにあたり、データをもとに若者・富裕層、さらには宮城・仙台エリアをターゲットに据え、最終的には移住を目標とした取り組みを行っています。若者や富裕層が働く際にテレワークを重視する傾向があるという調査結果を受け、「にしかわイノベーションハブTRAS」(コワーキングやテレワークが可能な総合施設)を設置したそうです(タイトル写真)。
 こうしたターゲットに対し、リアルとデジタルの双方で体験を提供することも重要視してきたようです。リアルな体験(コト消費)としては、「温泉ガストロノミー」、「小学・保育まるごと留学」(富裕層向け)、「どこでもサウナ」、「AI謎解き」、「Sea to Summit」(若者向け)など、多彩なイベントを企画・実施してきました。一方、デジタル面では自治体初の取り組みとなる「デジタル住民票NFT(年4回発行)」やメタバース観光などを仮想空間上で展開し、富裕層と若者の双方が興味を持つ領域と位置付けています。こうしてリアルとデジタルをシームレスに体験できる機会を提供することで、ターゲット層を関係人口として取り込んでいきたいと考えているそうです。
 また、「地域おこし協力隊インターン制度」を設立し、応募者に移住要件を課さず、2週間から3か月の期間で地域協力活動に従事する取り組みも始めています。さらに「おてつたび」などのサイトを活用し、地方への移住に興味を持つ層を掘り起こしたいとしています。
 こうした施策を展開するうえで、菅野氏は町役場という組織にどのような人材が必要かについても明示されました。菅野氏は国の交付金を使いこなすうえで、常に町役場内外と情報共有を行い、戦略的に取り組むことの重要性を強調されました。
 

 
 それを踏まえ、これらの取り組みを支えるツールの一つとして、住民全世帯(約1,800世帯)にタブレットを配布したそうです。タブレットは、災害時の情報伝達や位置情報の把握だけでなく、平常時にも住民のニーズや課題を先取りし、町と住民が情報を共有する手段として活用されています。とりわけ、住民との対話をリアルに実施しようとすると多大なコストがかかりますが、デジタルツールを活用することで低コストでの対話が可能になったといいます。また、デジタルクーポンの発行など、西川町独自の取り組みにも活かされているそうです。
 

 
 西川町では、政府の「骨太の方針」を念頭にWeb3.0に関する施策を先行者メリットの獲得を意識しながら進めてきたとのことです。日本初となる自治体発行のデジタル住民票NFTはその象徴であり、現実(温泉無料、買い物割引)と仮想(町長とのオンライン対話、西川メタバースへの参加)を組み合わせる仕掛けを行っています。ちなみに西川町のNFTはセカンダリーマーケットでも人気を集めているそうです。単に発行して終わりではなく、NFTの取り扱いサイトを通じて情報発信を続けることで、そこで再び関係人口を創出できる点が大きな利点だと菅野氏は語ります。
 菅野氏は、国の補助金をフル活用しながら将来的には日本におけるソーシャルインパクトの啓蒙者となりたいと展望を示しました。日本の地方における民間資金が地域課題の解決に向かう流れを一層加速させるため、「自治体共創ファンド」の構想を現在進行形の目標として掲げ、講演を締めくくられました。
 

 
 講演後のフロアディスカッションでは、参加者から多様なご意見・ご質問が寄せられ、盛会となりました。研究者だけでなく、現役の地方議員や行政職の方々からも、実務的な側面を含め、今後の中山間地域における新たな取り組みについて活発な質問が出されました。最後にファシリテーターである関西大学の徳山先生からは、中山間地域でのデジタル技術活用について、今後も注視していきたいとの指摘があり、本研究会は締めくくられました。
 

 
Join us

会員情報変更や、領収書発行などが可能。

若手応援割
U24会費無料 &
U29会費半額
member