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研究報告会レポート

第8回サステナブル・マーケティング研究報告会レポート「34年ぶりにマーケティングの定義が更新!新しい定義とサステナビリティの関係性をひも解く」

第8回サステナブル・マーケティング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:34年ぶりにマーケティングの定義が更新!新しい定義とサステナビリティの関係性をひも解く
 
報告者(敬称略):
福島 常浩(トランスコスモス株式会社 顧問)
青木 茂樹(駒澤大学 教授)
北村 暢康(サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 シニアアドバイザー)
原 裕(株式会社メンバーズ 執行役員)
加藤 佑(ハーチ株式会社 代表取締役)
 
司会:
萩谷 衞厚(株式会社メンバーズ)
 
日 程:2025年1月23日(木)16:00-17:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会概要】
 2024年1月25日、公益社団法人日本マーケティング協会(JMA)より、34年ぶりに新しいマーケティングの定義が発表された。新しいマーケティングの定義は以下の通りである。
 
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
注 1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注 2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注 3)構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
 
日本マーケティング協会による「マーケティングの定義」(2024年版)
公益社団法人日本マーケティング協会が34年振りにマーケティングの定義を刷新(2024年1月25日)
 
 そこで今回は、なぜこのタイミングでマーケティングの定義が新しくなったのか、具体的にはどのような点が変わったのかなど、新しいマーケティングの定義を題材に、サステナビリティの観点と紐づけながら考察する。
 
【報告会レポート】
1.はじめに
青木 茂樹 氏(駒澤大学 教授)

・サステナブル・マーケティング研究会の紹介
・今回のテーマ設定について
 
 マーケティングの定義が時代とともに進化し、価値交換から関係性構築や持続可能性へと重点が移行した。この変化に伴い、マーケターの役割も拡大し、短期的な目標と長期的な持続可能性のバランスを取ることが求められるようになった。新しい定義のもと、マーケターはより包括的なアプローチで価値を創造し、マーケティング活動を展開することが期待されている。
 
2024年に制定された日本マーケティング協会の定義
 
2.マーケティング定義の変更について
福島 常浩 氏(トランスコスモス株式会社 顧問)

 
2024年制定 マーケティングの解説
 
新定義で考慮された事柄(一部)
 
新しいマーケティング定義の特徴
 福島氏は、新しいマーケティング定義の背景と特徴について以下のように説明している。
 

  1. 定義委員会は1990年の定義を参照せず、ゼロから新しい定義を作成した
  2. 環境の変化(経済縮小、人口減少、デジタル化)に対応する必要があった
  3. 主な変更点: – 「価値の交換」から「関係性の醸成」へ重点が移った – 「持続的成長」という言葉を意図的に外し、「持続可能な社会の実現」に変更 – 戦争のアナロジーを用いた表現を避けた。
  4. 新定義では、製品提供は顧客とのエクスペリエンスの一部に過ぎず、長期的な関係性構築が重要とされている
  5. 「成長」を必ずしも持続性の必要条件としない考え方を採用した。
  6. アカデミアと実務家の意見を取り入れ、半年以上の議論を経て作成された。

 
 福島氏は、この新しい定義がアメリカマーケティング協会の定義よりも一歩進んだ概念になっていると評価している。
 
3.クロストーク ~新マーケティングの定義とサステナビリティの関係性~
スピーカー:
福島 常浩 氏(同上)
青木 茂樹 氏(同上)
北村 暢康 氏(サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 シニアアドバイザー)
原 裕 氏(株式会社メンバーズ 執行役員)
加藤 佑 氏(ハーチ株式会社 代表取締役)

 
マーケティングの新しい価値
 福島氏は、マーケティングのアウトカムには経済的価値だけでなく、環境や社会への貢献も含めるべきだと主張している。北村氏は、企業が財務諸表だけでなく、サステナビリティなどの新しい価値も考慮する必要があると述べているが、その測定や評価は難しいと指摘している。サントリーの例では、「人と自然と響き合う」という企業理念が長年あり、経済価値と社会・環境価値の両立を目指していることが紹介された。
 
マーケターの役割の変化
 マーケティングの新しい定義に基づき、実務マーケターの役割が変化しつつある。北村氏によると、マーケターは日々の売上目標を達成しながら、より広範な視点で価値を創造することが求められている状況にある。これには、顧客だけでなく、サプライヤーやバリューチェーン全体を考慮に入れる必要がある。この複雑な課題に対処するため、サステナビリティ部門などの専門チームがマーケターをサポートし、必要な情報や洞察を提供することが重要だと指摘している。マーケターには、短期的な目標と長期的な持続可能性のバランスを取りながら、多角的な視点で価値を創造する能力が求められると言える。
 
講演の様子
 
4.質疑応答
 クロストークの内容に関する参加者からの質問や感想に対して、スピーカーと質問者を交えながらディスカッションが行われた。
 
講演の様子
 
5.おわりに
 青木氏より、サステナブル・マーケティング研究会として2021年に設定した「サステナブル・マーケティング」の定義も紹介しながら、新しい定義とサステナビリティの関係性の強さについて再確認した。
 
サステナブル・マーケティング研究会のサステナブル・マーケティングの定義(2021)
 
 
所感
 公益社団法人日本マーケティング協会(JMA)のマーケティング定義委員会のメンバーとして、実際に2024年の新定義の制定に関わった福島氏の登壇により、議論の変遷や、定義に用いる単語の選択背景に渡るまで細かく解説がされたことによって、新定義に込められた思いや期待について理解が深まる場となった。サステナブルの文脈において、アメリカ・マーケティング協会(AMA)の先を行っているという意見もある中で、日本企業のマーケティングの現場から、新定義に基づいたマーケティング戦略が展開されることを切望する。
 
(文責:秋山 翔)

 
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