第14回サービス・マネジメント研究報告会レポート「患者が望む医療選択の実現を目指して ― 患者の望む医療選択、実現にする上での現状の障壁を克服することによる価値共創の実現 ―」 |
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テーマ:患者が望む医療選択の実現を目指して ― 患者の望む医療選択、実現にする上での現状の障壁を克服することによる価値共創の実現 ―
日 程:2025年3月8日(土)10:20-11:30
場 所:武庫川女子大学 中央キャンパスおよびZoomによるオンライン開催
報告者:瀧川 雅行(福岡大学商学部 シチズンサイエンス研究センター 研究員)
【報告会レポート】
患者が納得できる医療を受けるにはどうしたら良いか。患者と医療従事者との情報の非対称性をふまえ、①患者と医師の関係、②医療の質、③患者満足、⑤顧客価値の5つのポイントから検討する。
まず、患者と医療従事者の関係についてエージェント理論を用いて検討した結果、医師は、患者の代理人ではあるが病院組織の一員であるため、患者のすべてを代行するには限界がある。医療の質については、エビデンスがしっかりした医療である標準治療、治療ガイドランの説明があり、エビデンスがはっきりしない民間療法のようなものには注意が必要であることを指摘してきた。患者満足については、医療コミュニケーションに関する市場調査を引用し、患者が病気になる前には自分が受けたい治療をほとんど考えていないことが多く、いざ病気にかかった時に自分の望む医療を医師に伝えることが難しい状況の説明があった。顧客価値については、ヘルスケアにおける患者、患者家族のエンゲージメントのための多次元フレームワークにから、患者、患者家族が医療に参画することで段階的に患者個人の問題から組織、地域の問題に昇華され多くの患者が望む医療に繋がるとの紹介であった。
患者の望む医療を実現するためには、情報の対称性があることを理解し、その克服が重要だ。その方法として、セカンドオピニオンの活用であり、自身の病気・治療法について客観的理解の可能性が高まる。
軽症疾患、単回治療で完治する病気では、かかりつけ医に相談、患者自身がインターネットで情報収集することで理解できる可能性が高まる。医療の質については、まずエビデンスがしっかりした標準治療、ガイドラインに沿った情報を収集、検討し、医師に相談・確認する。エビデンスの乏しい民間療法に過度に依存することは危険であるため、避けることである。つまり、情報の非対称性を軽減し、患者-医療者との連携を強化することで、質の高い医療の選択肢の中から自身の考え方、価値観から選択できるようになり、患者自身とって望ましく、価値(物交換価値、利用価値、知覚価値、満足度)が高い医療の実現が可能になるとのことである。また、最近ヘルスケア―に対する患者、患者家族エンゲージメントが患者個人から地域の医療まで段階的に医療安全、質の改善に貢献するとの考え方が注目されているようである。
(文責:福岡大学 / サービス・マネジメント研究会メンバー 瀧川 雅行)