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第30回地域活性化マーケティング研究報告会レポート「シビックエンゲージメントと地域活性化」 |
第30回地域活性化マーケティング研究報告会(カンファレンス2025)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:シビックエンゲージメントと地域活性化
報告者:
- 米国ポートランドの最新事例にみるシビックエンゲージメントと地域活性化
宮副 謙司(青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 教授)
内海 里香(文化ファッション大学院大学 教授) - 地方自治体のシビックエンゲージメント受け入れ事情と地域活性化
佐々木 秀之(宮城大学 事業構想学群 教授) - 地域商業施設のシビックエンゲージメント活動装置・機会とその活用
徳山 正実(株式会社プレイド Business Design Director) - 大学生のシビックエンゲージメント活動による地域活性化の試み
青木 洋高(文教大学 国際学部 国際観光学科 専任講師) - 伝統祭礼『長崎くんち』にみるシビックエンゲージメントと地域活性化
田中 直高(株式会社タナカヤ 代表取締役)
日 程:2025年10月12日(日)9:00-10:20
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス
【報告会レポート】
地域活性化マーケティング研究会では、2012年度の発足以来、話題先行の産品開発や一過性の集客イベントづくりでなく、地域のGHIL:地理・歴史・産業・生活など本来持つ資源の可能性に着眼し、地域住民が主体的な意識(シチズンシップ)を持って取り組み、関係者の共感を生み、その参画を増やしていく活動が、地域活性化の本質であると唱えてきました。さらに、長年の研究及び我々自らの実践を経て、「シビックエンゲージメント」意識・行動が、地域住民・行政・企業、さらに大学にもますます重要になってきていると認識されます。
今回の研究報告では、その本質を示してきた米国ポートランドの2025年現在の最新事例を報告するとともに、シビックエンゲージメント活動の主体者及び受け手、支援者として、地域行政、商業施設、学生、地域住民の最近の取組みから、当研究会の企画運営メンバーが、それぞれの研究対象・実践領域についてのシビックエンゲージメントと地域活性化のあり方を報告し、フロアのメンバーとディスカッションを行いました。各報告の要旨は、下記のとおりです。
解題:シビックエンゲージメントと地域活性化
宮副 謙司
シビックエンゲージメント(市民としての社会への関与)とは、①自分の暮らすコミュニティでの生活に変化をもたらすために働きかけること、②そのために知識、技術、価値および動機を発達させることを意味する(Ehrlich,2000など)。当研究会としては、「シビックエンゲージメント」とは、「市民として主体的に社会に関わっていくこと」と捉える。具体的には、自らの所属する(住む)社会コミュニティの特徴をいかし、そこをより良く、住みやすい場所にしていくことであり、一方で、地域の社会的な課題があれば、それを理解し、それを解決していくことである。すなわち、シビックエンゲージメントこそ、地域活性化を生み出す動機、行動のモチベーションとなると考えられる。
1.米国ポートランドの最新事例にみるシビックエンゲージメントと地域活性化
宮副 謙司・内海 里香
地方創生の先進地域とされる米国ポートランドでは、ポートランドでは人々に地域意識(生活環境を良くしたい)や「シチズンシップ」が備わり、地域活性化につながっている。宮副・内海の2025年3月及び7月の直近2回の現地調査でも、上記の事象が継続的に確認されるとともに、以下の2点の新たな事象を確認できた。第一に、ポートランド州立大学(PSU)では、新たに「Land Acknowledgement」を大学としての地域への接し方・考え方として掲げ、大学が立脚する地域の立地・歴史から、地域活性化の研究・教育・活動を起こしている。第二に、コロナ禍を経て「パブリック・ストリート・プラザ」という地域コミュニティの場が、民間(市民・企業)から生まれ、近隣の地域住民、さらに行政も巻き込む動きになっているということである。
2.地方自治体のシビックエンゲージメント受け入れ事情と地域活性化
佐々木 秀之
地域系学部の増加もあり、大学と地方自治体との連携は進展しているが、学生が主体的にシビックエンゲージメント活動に取り組むことで地域活性化につなげていくには、一定の方法論が必要となる。宮城大学「コミュニティプランナープログラム」では、学生がチームを編成し、主体的に活動地域を見出し、その地域資源の着眼から地域価値への編集と活動実践(さらにその報告・評価まで)のプロジェクトのフレームワークを整備し適用している。それらを対象の地方自治体とも共有することで、進捗確認や結果評価などがスムーズにでき、結果として大学と地域の連携数の増加や、成果についての相互の納得につながる好循環を生み出すこととなった。
3.地域商業施設のシビックエンゲージメント活動装置・機会とその活用
徳山 正実
地域の商業施設(主にショッピングセンター:SC)には、いくつかのタイプがあるが、地域への働きかけ:シビックエンゲージメントの観点では、①地域密着型の単独SCでは、他のSC・大型店など競合との対抗上、地域への連携・浸透を充実させ独自性・差別化となる特徴を出す必要がますます迫られている。②より経営資源を多く有するデベロッパー企業のSCでは、地域イベントの積極的な開催など集客・営業的な側面に留まらず、企画や設計・施工の段階から地域と連携し、その関係をより一層しようとしていることが明らかとなった。また地域連携の組織を設置し対応する事例もみられ、その地域へのシビックエンゲージメント活動に関するソフト企画力を高めて対応している。
4.大学生のシビックエンゲージメント活動による地域活性化の試み
青木 洋高
「食」を通じた地域との関わりは、学生にとってシビックエンゲージメントの入り口になる。こうした考えのもと、大学の最寄り駅である谷塚駅周辺の飲食店のグルメガイドを制作した。地域に出て市場調査、実食を伴う取材を行った。学生は、取材・編集活動を通じて、まちの歴史に触れ、地域の食文化の背景を学び、さらには適切なお酒との向き合い方についても学ぶ機会を得た。そして、地域の人々と出会い、関わり、考える過程そのものが、学生にとって「地域とつながることの楽しさ」や「主体的に動く意義」を実感する機会となった。
また、新たに地域の店舗の方と連携して、酒を飲まないライフスタイルである“ソバーキュリアス”にも対応したメニューの開発にも取り組んでいる。
このように、地域の方々との継続的な交流を重ねることで、学生は前向きな気づきや行動変容につながる貴重な成果を得ることができたといえる。
5.伝統祭礼『長崎くんち』にみるシビックエンゲージメントと地域活性化
田中 直高
人口減少・少子高齢化を背景として、地方の祭りの後継者及び担い手不足の問題は深刻化している。特に長い歴史と運営面でも伝統的なしきたりを有する祭礼では、祭り期間中だけの外部人材の祭礼参画を拒むような保守的・閉鎖的な側面もあり、運営課題となっていた。
「長崎くんち」(1634年から続く諏訪神社の秋季大祭:例年10月7日~9日に開催)では、祭りに関わる仕事を伝統的な祭礼に関わる高負荷領域と、側面的な運営作業など低負荷領域に区分し、後者に外部人材を投入する取り組みを行った。
こうした新たな取り組みは、受け入れ側の理解と体制の構築が前提であるが、伝統と革新のバランスを時代に合わせて柔軟に調整することが可能となった。さらにこの祭りでの経験は、商店街活動でも外部人材が関わりやすい場づくりと活用を複数の事業で行うように変化するなど地域の組織運営でも大きな示唆が得られた。
【報告会を終えて】
朝の早い時間のセッションにも関わらず、多くの学会員の方に、参画いただき誠にありがとうございました。報告テーマが、地域活性化の様々な取り組み主体であったこと、それについて研究し実践している企画運営メンバーからの報告であったため、内容がそれぞれに専門的であり、実践的な示唆を伴うものとなり、参加者の共感を得ることができました。
今後も、この企画運営メンバーの個々の地域活性化に関わる研究・教育・活動のさらなる進展を期待するとともに、今回のカンファレンスなど一堂に集まって進捗を確認し、テーマを共有して、相乗効果を発揮できる喜び・楽しさを確認し合えるように進んでいきたいと思います。

(文責:宮副 謙司)

