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第4回持続的なスポーツツーリズムイベント研究報告会レポート「国際スポーツイベントとファンロイヤルティ」 |
第4回持続的なスポーツツーリズムイベント研究報告会(カンファレンス2025)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:国際スポーツイベントとファンロイヤルティ
- 基調講演「ラグビーファンのロイヤルティ」
ゲスト:牧 健(ジャパンラグビーマーケティング株式会社 執行役員COO) - 報告「国際スポーツイベントの顧客体験価値(CX)について」
西尾 建(山口大学 経済学部 観光政策学科 教授) - パネルディスカッション「スポーツイベントの顧客体験価値(CX)」
パネラー:牧 健(同上)
倉田 知己(株式会社ジャパン・スポーツ&ツーリズム・プレミア 代表取締役)
湯浅 伸昭(株式会社HM-A ホノルルマラソン日本事務局 エグゼクティブプロデューサー)
三日市 勝臣(株式会社HM-A ホノルルマラソン日本事務局 マーケティングプランナー)
コーディネーター:西尾 建(同上)
日 程:2025年10月12日(日)10:30-11:50
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス
【報告会レポート】
基調講演と報告
基調講演では、ジャパンラグビーマーケティング株式会社COOの牧健氏より、ラグビー市場におけるファンロイヤルティの構造と、それを支える共通ID「JAPAN RUGBY ID(JRID)」について紹介があった。代表戦・リーグワン・各チームを横断してファン行動を把握できるJRIDは、ラグビーの魅力をより多くの人に届けるためのCRM基盤として整備が進んでいる。現在35万人を超える登録者のデータからは、初観戦者とコア層の違い、季節による来場行動の変化などが明らかになりつつある。
とくに印象的だったのは、「観戦回数とロイヤルティの関係」である。観戦3回を超える頃から継続率が大きく伸び、7回を超えると“応援が習慣になる”ファン層が形成されることが示された。一方で、招待による初来場者ほど次につながりにくく、「最初の体験をどうつないでいくか」が重要な課題であるという指摘もあった。価格やアクセス、観戦の不安といった“未・不”をどう取り除き、自然に次の行動を促す体験設計ができるか──スポーツの可能性を広げるうえで欠かせない視点である。

続いて、研究会メンバーである山口大学の西尾からは、国際スポーツイベントにおける顧客体験価値(CX)について報告があった。CXとは、単発の満足(CS)にとどまらず、事前準備・現地での高揚感・参加後の共有や余韻といった、時間を越えて積み重なる“連続的な体験価値”のことである。ホノルルマラソンのAloha Spirit、ラグビーに根づくCore Valuesといった文化的・哲学的価値が、参加者の記憶や再参加意図を強く方向づける点が紹介された。今後は、こうしたスポーツの魅力が人々の生活サイクルにどのように入り込み、どの段階でどのようなCXが形成されるのかを丁寧に測定していくことが研究課題となる。
これらの視点は、後半のパネルディスカッションの議論にもつながり、スポーツイベントが持つ幅広い価値を多角的に考える土台となった。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、国際スポーツイベントがどのようにファンロイヤルティやCXを育んでいくかについて、実務と研究の両面から議論を深めた。
最初の論点では、株式会社ジャパン・スポーツ&ツーリズムの倉田氏より、スポーツホスピタリティの重要性が紹介された。特別な空間や食事、交流の機会を組み合わせるホスピタリティは、初めて観戦する人にとって「次も行きたい」と思える体験をつくり、牧氏の分析にあった「観戦3回・7回」の節目とも密接に関係する。国際イベントを“一度きり”で終わらせず、長期的な関係形成につなげる視点が共有された。
続いて、ホノルルマラソンとラグビーのイベント“サイクル”の違いが議論された。ホノルルマラソンは毎年開催され、準備・現地体験・帰国後の共有が生活のサイクルに組み込まれる「年中型CX」が特徴である。一方、ラグビーワールドカップは4年サイクルで、一度の体験が特別な記憶価値をもち、さらに1年サイクルのリーグワンがその間をつなぐ役割を果たす。こうした長期と短期の体験が重なり合い、日常と非日常を行き来しながらロイヤルティが育まれていくという、スポーツ特有の豊かな構造が共有された。
最後の論点は、ホノルルマラソン日本事務局の湯浅氏から提示された「価値観」の問題提起である。Aloha Spirit(優しさ・調和・謙虚さ・忍耐)やラグビーのコアバリュー(品位・情熱・結束・規律・尊重)は、参加者のふるまいや大会運営、地域との関わり方にまで影響を与える文化・哲学的価値である。湯浅氏は、こうした価値観が体験の質をどのように形づくり、ロイヤルティにつながるのかを改めて見つめ直す必要性を示し、スポーツイベントが「価値観を共有し合う場」として機能することの重要性が議論された。
まとめ
総じて、国際スポーツイベントにおけるロイヤルティ形成は、
(1)ホスピタリティによる特別な体験、
(2)ファンサイクルから生まれる重層的CX、
(3)文化・哲学に基づく価値観の共有、
という三つの要素が相互に作用する「中長期型の体験価値生成プロセス」であることが示された。
今後は、これらの価値観やサイクルをふまえ、CXをどのように測定し可視化していくか──その方法や指標を磨いていくことが、研究と実務の両面での大きな課題となる。
(文責:西尾 建)

