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研究報告会レポート

第20回ソロモン流消費者行動分析研究報告会レポート「デジタル時代におけるブランドの課題に関する探索的研究」

第20回ソロモン流消費者行動分析研究報告会(カンファレンス2025> 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:デジタル時代におけるブランドの課題に関する探索的研究
報告者:鈴木 智子 氏(一橋ビジネススクール 教授)
    山本 晶 氏(慶應義塾大学 教授)
    菅野 佐織 氏(駒澤大学 教授)
    福田 怜生 氏(亜細亜大学 准教授)
コメンテータ:久保田 進彦 氏(青山学院大学 教授)
日 程:2025年10月12日(日)13:10-14:30
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス
 
【報告会レポート】
 本研究会では、「5年後・10年後の広告コミュニケーションの教科書に1ページを足す」ことをビジョンに掲げ、デジタル時代におけるブランドの課題を、ブランド・リレーションシップ、ブランド・コミュニケーション、メタバースという三つの観点から探索的に検討した。
 
 まず鈴木氏からは、デジタル環境下でのブランド・リレーションシップとLTV経営の重要性が提示された。オンライン上では、消費者の選択肢はほぼ無限となり、24時間いつでもどこでも購買が可能である一方、消費者は複数の「お気に入り」ブランドを併存させながら、気分や文脈に応じて回遊的に利用している。そのなかで企業が目指すべきは、「今すぐ買いたい顧客」の争奪戦ではなく、「将来顧客になりうる層」とゆるく長くつながり続けることであり、短期売上ではなく顧客生涯価値(LTV)を中心に据えたマネジメントへの転換が不可欠であることが示された。LTV最大化の鍵として、顧客をファンへと深化させるプロセスの設計が強調された。
 
講演の様子 続いて山本氏からは、企業のマーケティング・コミュニケーション担当者へのインタビュー調査をもとに、デジタル時代のブランド・コミュニケーションの実態と課題が報告された。企業現場では、テレビCMやマス媒体を起点に話題をつくり、それがSNSやニュースサイトを通じて二次・三次拡散していく「空中戦」、店頭や自社チャネルでの接点である「地上戦」、そしてデジタル上での常時接続的な「サイバー戦」を組み合わせながら、情報拡散とファン深化の双方を狙う取り組みが進んでいる。とくに、トリプルメディアの役割は「スイムレーン型」の分業から、相互にアシストし合う関係へと変化しており、テレビの話題喚起機能とSNS上のエンゲージメント、オウンドメディア/コマース機能の連動を前提とした設計が重視されつつある点が印象的であった。
 
 菅野氏のパートでは、「ファンとは何者か」という問いから出発し、デジタル時代におけるファン深化のプロセスが整理された。ファンは単なる受け手ではなく、「文化的生産者」としてコンテンツを再解釈し、二次創作や情報拡散を通じてブランドの意味を共創する存在である。報告では、ブランドとの出会い・関心喚起の段階から、フォローやコンテンツ視聴による継続接触、推奨・シェアといった軽いアクション、さらに他ファンとの交流やブランド改善への参画に至るまで、段階的な「ファンの深化」が提示された。また、熱狂的なファンはブランドにとって大きな資産である一方、期待と価値観に反した行動があった際には強い反発を示しうる「諸刃の剣」であることも指摘された。そのため、ファンの声を真摯に受け止め、成長の糧として取り込むファンダム・マネジメントの重要性が強調された。
 
講演の様子 最後に福田氏からは、メタバースにおけるブランド価値創造に関するシステマティックレビューの結果が紹介された。メタバースはゲーム、Web3.0、XRといった複数の領域から構成され、それぞれの領域において「没入感」「自己表現」「社会的つながり」「デジタル所有」という異なる消費者体験が生じる。これらの体験は、ブランドへの一体感や愛着、購買確信度、所有・ステータス性といった心理メカニズムを通じてブランド価値や購買行動に影響を与える。ブランドのメタバース活用においては、「とりあえず自社の仮想空間をつくる」ことが目的化すると失敗しやすく、どの領域で、どのような体験を設計するのかを明確にしたうえで、既存のプラットフォームや技術特性を活かすことが成功の鍵であるとの示唆が示された。
 
講演の様子 全体討議では、コメンテータの久保田氏から、各報告を俯瞰したうえで、ブランド研究の全体像の中で本研究会の位置づけを示す統合的なコメントがなされた。理論的な貢献と今後の研究課題、さらに実務への含意が整理され、参加者にとって本研究会の意義を再確認する機会となった。
 全体として、本研究会は、デジタル時代のブランド課題を「ゆるく長くつながる関係性」「メディアのアシスト効果」「ファンとの共創」「メタバースにおける体験設計」といったキーワードから多面的に捉え直す場となった。

 
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