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第5回ファッション・マーケティング研究報告会レポート「ファッション企業のSDGsシビックエンゲージメント活動」 |
第5回ファッション・マーケティング研究報告会(カンファレンス2025)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:ファッション企業のSDGsシビックエンゲージメント活動
報告者:
- ファッション企業におけるSDGsシビックエンゲージメント
内海 里香(文化ファッション大学院大学 ファッションビジネス研究科 教授) - アニエスベーの社会的活動
松戸 美紗 氏(アニエスベージャパン株式会社 CSR責任者) - タラ オセアンの社会的活動
パトゥイエ 由美子 氏(一般社団法人タラ オセアン ジャパン事務局長)
日 程:2025年10月12日(日)10:30-11:50
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス
【開催報告レポート】
ファッション企業のSDGsの取り組みは、モノづくりからサプライチェーン、サーキュラーエコノミーなど幅広いが、本研究会は、長年、地球環境問題、とりわけ海洋環境問題に関してシビックエンゲージメント活動に取り組んでいる「アニエスベージャパン株式会社」ならびに、同社が支援する「一般社団法人タラ オセアン ジャパン」に着目し、その具体的な取り組み内容について取り上げ、来場者と「探求と創発」の時間を持った。
まず、本研究会リーダーである内海が、本テーマの解題として、アニエスベーとタラオセアンの取り組みの注目点として、ファッション企業の本業であるマーチャンダイジング(MD)運営の中で、商品企画-製品製造-流通-販売といったバリューチェーンに加えて、SDGsなどの社会的要請に対応する、修理-回収-加工-再販売あるいは再製造(リサイクル)といったサーキュラーエコノミーの流れの構築とその運営面での秀逸さを指摘した。
そして、企業理念の面からは、創業者が取り組む社会的な活動(シビックエンゲージメント活動)として、タラ オセアン財団の設立と長年にわたる海洋環境問題に関する研究や活動について、また、企業の本業であるMDのサイクルと、企業理念レベルからのコーポレートシビックエンゲージメント活動の関係、それらが相互に相乗する効果についても注目すべき点があることを指摘した。

内海による発表資料の抜粋
次のアニエスベージャパン株式会社 CSR責任者 松戸美紗氏の報告では、そもそもブランド創業者のアニエス・トゥルブレが、エイズ予防啓発運動やチャリティ活動など、ファッションを通して社会活動にも積極的に取り組んでおり、その一環として2003年に海洋保全団体『タラ オセアン財団』を設立、現在もサポートを続けているとのことであった。つまり、企業理念として、社会・環境・文化への責任を創業当初から大切にしており、CSR活動自体がブランドの本質となっているのである。
また、なぜ企業にとってCSRが必要なのかというと、顧客・社会からの信頼を獲得することによって企業経営におけるリスクの削減と企業価値の向上の両方が達成可能となること、社会課題の解決に積極的に取り組んでいくことこそ、企業の持続的成長に結びつくとの考え方がアニエスベーにはある。それ故、アニエスベーは「環境」「社会貢献」「文化」の3軸に力を入れてCSRを実践しており、具体的には、自社内サーキュラーエコノミーの構築、プラスチック資材の使用削減、製品のトレーサビリティ開示などが行われているとのことであった。
アニエスベーにおけるCSRマーケティング活動の要諦は、①自社の理念を明確化、②社会課題と接点のある領域を選定、③具体的な行動(プロジェクト)を実行、④透明性をもって発信、⑤共感を生むストーリーテリングであることも指摘された。
さらに、一般社団法人タラ オセアン ジャパン事務局長 パトゥイエ 由美子氏から、まずは同財団について、フランス初の海に特化した公益財団法人であり、科学探査船タラ号を所有し、①探査:海を理解するための探査と②共有:変革のための共有を活動目的として、22年前からトップレベルの研究所や組織と共同で海洋科学を発展させてきたことが紹介された。
そして、現在同財団は①北極圏における気候変動、②サンゴやプランクトンといった海洋生物の多様性、③プラスチック汚染という3つの研究テーマと啓発活動に取り組んでおり、その過程で収集した全データや研究成果(学術論文)についても積極的に公開しているとのことであった。人類は、海から多大な恩恵を受けているにも関わらず、特に日本では国民一人当たりの使い捨てプラスチック排出量が世界第2位という状況で、海洋のプラスチック汚染もかなり進んでいるにも関わらず、国民の関心は薄い。パトゥイエ氏からは、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への速やかな移行と共に、プラスチックの生産と消費を減らす事が重要であることが指摘された。
【セッションを終えて】
今回のカンファレンス2025での研究報告は、ファッション業界の大きな課題である環境汚染問題、特にマイクロプラスチックの海洋汚染問題の解決に取り組むアニエスベーとその創業者が設立した海洋科学の研究機関によるシビックエンゲージメント活動に焦点をあてた。本研究会のリーダーである内海と企画運営メンバーである宮副謙司氏が近年精力的に取り組んできた研究テーマが「企業のシビックエンゲージメント活動」であるからである。その秀逸な事例をアニエスベーとタラ オセアン ジャパンのご協力のもと、今年のカンファレンスのセッションで紹介できたことをありがたく思っている。
シビックエンゲージメント活動に熱心に取り組んでいる企業は決して少なくはないが、その活動がそもそも企業理念と結びつき、創業当初から社会・環境・文化への責任を大切に考えて、CSR活動自体がブランドの本質となっている例は極めて稀である。特に、アニエスベーの松戸氏が語った「顧客・社会からの信頼を獲得することによって企業経営におけるリスクの削減と企業価値の向上の両方が達成可能となること、社会課題の解決に積極的に取り組んでいくことこそ、企業の持続的成長に結びつく」という考え方は、多くの企業が参考にすべきものであるように思う。
地球環境を汚染するファッション産業・SPA企業だからこそ、自ら環境問題に積極的に取り組み、社会貢献する必要がある。こうしたシビックエンゲージメント活動自体がブランドの本質となっているアニエスベーという企業の強さ・独自性に魅入られたセッションとなった。
最後に、今回ご報告頂いたアニエスベージャパン株式会社 CSR責任者 松戸 美紗氏、一般社団法人タラ オセアン ジャパン事務局長パトゥイエ 由美子氏、並びにご参加頂いた方々に厚く御礼を申し上げる。
(文責:内海 里香)

