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第22回デザイン思考研究報告会レポート「人間とAIによる共創のデザイン」 |
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テーマ:人間とAIによる共創のデザイン
日 程:2026年1月30日(金)16:30-18:00
場 所:野村総合研究所 東京本社(会議室)
解題:廣田 章光(流通科学大学 特任教授 / 近畿大学デザイン・クリエイティブ研究所)
- AI活用の調査・実態報告
「社会科学系研究者による生成AIの活用状況と考え方」
大森 寛文 氏(日本大学 経済学部 教授)「AIエージェント時代の組織とスキル」
亀津 敦 氏(野村総合研究所 IT基盤技術戦略室 エキスパートリサーチャー)「商品企画にAIを導入する組織的段階とAI競争優位性の構築について」
小川 亮 氏(株式会社プラグ 代表取締役社長) - 人間とAIの共創のデザイン 質疑・討議
ファシリテーター:広瀬 安彦 氏(野村総合研究所 未来創発センター)
・業界別の共通点・相違点
・生成AIをよりよく使うための課題
倫理、セキュリティ、組織体制、組織文化
【報告会レポート】
第1部では、3名の登壇者から、AIの業務への活用実態、その有効性および課題について、ライトニングトーク(LT)形式による報告が行われた。
「社会科学系研究者による生成AIの活用状況と考え方」
大森 寛文 氏(日本大学 経済学部)
論文執筆および仮想商品開発におけるAIとのタスク分担を、作業の性質(複雑・単純/定型・非定型)に基づいて整理し、創造的判断は人間が担い、反復的処理や思考補助はAIが担うという分担モデルが提示された。
「AIエージェント時代の組織とスキル」
亀津 敦 氏(株式会社野村総合研究所)
AIエージェントの普及が組織構造やスキル管理に及ぼす影響について、最新事例を交えて紹介された。人間とAIによる役割設計の重要性とともに、「コンテクスト・エンジニアリング」の概念が提示された。
「商品企画にAIを導入する組織的段階とAI競争優位性の構築について」
小川 亮 氏(株式会社プラグ)
「味噌玉」の新商品企画をAIによって自動化した事例が紹介された。複数ペルソナの設定や評価、フィードバックをAIが担う仕組みの紹介に加えて、AI導入における組織的な5段階モデルが提示された。
第2部では、参加者全員による自己紹介の後、野村総合研究所の広瀬氏のファシリテーションのもと、登壇者への質疑に加え、人間とAIの連携活用に関する多様な意見交換が行われた。
意見交換のトピックは以下のようにまとめられる。
1. 今後の企業のAI有効活用としての「暗黙知」の形式知化
AI時代における企業の競争優位の源泉は、各社が持つスペシャリストの「暗黙知」(熟練工の技、優れた商品の定義、成功パターンなど)を形式知化し、AIに学習させることがあげられた(日立製作所の例)。従来、言語化が困難だった暗黙知も、マルチモーダルAIの進化により、手書きの図、スケッチ、画像、音声などの情報を活用することによって形式化への障壁を下げることが可能になっている。人間に必要なのは、「価値ある暗黙知」を見極めることである。スペシャリストにAIを使わせ、言語、非言語の情報を組合せて形式化することが求められる。
2. AIによる効率化と人間の経験の重要性
AIによる効率化は、若手が試行錯誤を通じて経験を積む機会を奪い、結果としてAIを的確に評価・選択できる人材が育たなくなるリスクが指摘された。AIの提案を判断するには人間自身の経験が不可欠であり、AIと人間の経験は相互依存の関係にある。一方で、AIの学習データとして活用できるほどの優れた経験を持つ人間の価値は高まることが予想される。
3. AI時代の経営ガバナンスと人間の主体性
AIを経営の意思決定に活用する際、その判断に対する説明可能性と透明性を確保するガバナンスが課題となる。AIは効率的な答えを出すが、「どのような未来を創りたいか」という意思やパーパスは持たない。そのためビジョンを描き、最終的な責任を負うのは人間の役割となる。生成AIが生成する情報は同質化する傾向があるため、AI生成情報を手がかりに、人間がAIとの対話を通じて行う創造プロセスが重要になる。
終了後は約30分間、名刺交換を交えながら、参加者同士および参加者と登壇者との間で活発な意見交換が行われた。
(文責:流通科学大学 廣田 章光)

