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第35回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「地域×イノベーション発想の最前線」 |
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テーマ:地域×イノベーション発想の最前線
講 演:起業を呼び込むリノベーションと商業機能の再生 ~山形県南陽市「つるのこ」の実践から~
講演者:髙橋 眞己 氏(株式会社髙橋木工所 代表取締役)
ファシリテーター:庄司 義弘 氏(開志専門職大学 事業創造学部 専任講師)
日 程:2026年1月23日(金)18:30-20:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
今年度のプレイス・ブランディング研究会のセミナーでは「地域×イノベーション発想の最前線」をテーマとしており、今回の第35回プレイス・ブランディング研究報告会ではリノベーションと起業の関係について、株式会社髙橋木工所 代表取締役 髙橋 眞己氏に「起業を呼び込むリノベーションと商業機能の再生 ~山形県南陽市「つるのこ」の実践から~」と題してご報告いただきました。
まず、はじめに事業の概要とリノベーション工程をご説明いただきました。山形県南陽市にある「漆山古民家再生シェアスペース つるのこ」は、役目を終えた元酒蔵の建物をリノベーションして、歴史的価値を保存・再生し、地域活性化を図るプロジェクトです。講師からは本業から見れば守備範囲外の仕事ではあったが、地域からの要望もあり実施することを決めたとの説明がありました。リノベーション前は、庭を含め荒れていたが、木造建築を強みとする同社の技術を活かし、既存の意匠を残しながらも現代的に活用できる空間へと改修しました。家具を含めた多くの部分で自社資材を活用し、コスト抑制と資源循環を両立させています。このやり方は、同時に職人たちの技術を磨く場にもなったとのことです。
次に「つるのこ」での事業概要についてご説明をいただきました。
現在ではテナントとして8店舗が入居していますが、若い起業家やセカンドキャリアの支援になっているのが特徴となっています。特に若い起業家の多くは初めての起業とのことでした。講師からは、内装作業をはじめ、金融機関の紹介など不動産賃貸を超えてビジネス支援を実施しているとの報告が行われました。

次に改めて「つるのこ」に込めた思いについて発表されました。南陽市が鶴の恩返し発祥の土地とされる地域性から鶴の恩返しをモチーフとしています。鶴が恩を返すように地域の企業やコミュニティが多賀会に感謝し合い、成長していく姿勢を象徴しています。また、「こ」は「CO」を意味しており「Company」や「Collaboration」などの複数の意味を持ち、他者との協力や連携を示しています。

地域にとってどのような影響を与えたのかについて様々な事例を通じて報告されました。複数店舗が入る商業施設であると同時に、コンサートや地域イベントの会場としても活用されており、老若男女問わず地域の人が集まる場所になっています。それらのイベントも地域密着のものが多く、地域のダンススクールの発表会や楽器の演奏ができる住民によるワンコインコンサートなどが開催されています。今では県外からも多くの人が訪れる観光スポットになっています。こうした取組が評価され「やまがた景観賞県知事賞」を受賞されました。

最後に、今後は街づくり事業として「つるのこ」を拡張していくとのことでした。その第一歩として、民泊施設「つるのこ縁屋(えにしや)」を開業。民泊施設として稼働を開始しており、国内外の人に活用されているそうです。今後は特にインバウンド観光へ力を入れ、珍蔵寺などの周辺の観光施設とも連携した観光振興に挑戦していくとのことです。さらに、現在では第二の「つるのこ」として、旧小児科医跡地を活用した事業を想定しているということが語られました。

講師からは、当初は8店舗も入居することさえ想定していなかった。複数店舗のシナジーが生まれたことで、だんだんと地元の人たちが利用してくれるようになり、いつのまにか今の状況になったと感想が語られました。街づくり事業として位置づけているので会社への利益を生み出すような役割ではないが、最近では本業のショールームとしても機能するようになってきた、今後は本業とのシナジーを生み出していきたいとのことです。
とある記者から「一番喜んでいるのは200年を超えても地域に必要とされたこの建物ではないか」との言葉を受けて、建築に携わる仕事として建物が人を呼んでくれたのかなと思うと語られました。これからも地域の人たちに喜ばれる事業として「つるのこ」を更に発展させていきたいとの言葉で締めくくりました。

講演後のフロアディスカッションでは、利用者の動向や店舗希望者の特徴やオーナーとしてのコミュニケーションや支援、交流の場をつくる上での課題や工夫、本業ではない事業の拡大における課題、今後の拡大に向けての構想など幅広い視点で質疑応答が行われました。結びに、当研究会の代表である関西大学の徳山先生より、何よりも講師が楽しそうに事業に取り組んでいるのが印象的としたうえで、「つるのこ」は鶴の恩返しを彷彿とさせるコンセプトのもとに商店街や公民館の役割を同時に果たす複合的な機能を持っているのが特徴であり、現在の地域が抱える課題に大きな示唆を与えるものであるとのコメントがあり、本研究会は終了となりました。


