|
合同リサプロレポート「健康経営のマーケティング資産化と産学連携による価値創造」 |
合同リサプロ「第8回 健康アセットマーケティング研究会」✕「第8回 健康経営ブランディング研究会」(オンライン)
テーマ:健康経営のマーケティング資産化と産学連携による価値創造
日 程:2025年3月26日(水)19:00-21:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
【AGENDA】
- はじめに(解題)
中見 真也(神奈川大学 経営学部 准教授) - 一般社団法人社会的健康戦略研究所主催の2023年度健康経営コンペにおける三幸土木様、ベイラインエクスプレス様の課題に向き合った大学生(学域領域)からの提案内容、および、考察についての報告
前田 氏、砺波 氏(神奈川大学 経営学部 中見ゼミ2年生) - 『健康経営優良法人2024 (ブライト500)』認定の三幸土木株式会社 企画業務部部長 宮路浩貴様、および、ベイラインエクスプレス株式会社 代表取締役社長 森川孝司様が考える自社の健康経営の取り組み概要、パネルディスカッション
司会:熊倉 利和 氏(IKIGAI WORKS 代表取締役社長) - パネルディスカッション、Q&A
MC:中見 真也(同上)
パネリスト:阿久津 聡(一橋大学大学院 経営管理研究科(ICS) 教授)
宮路 浩貴 氏(三幸土木株式会社 企画業務部 部長)
森川 孝司 氏(ベイラインエクスプレス株式会社 代表取締役社長)
熊倉 利和 氏(同上)
浅野 健一郎 氏(一般社団法人社会的健康戦略研究所 代表理事)
佐藤 光弘 氏(株式会社富士通ゼネラル 人事本部長付 / 一般社団法人社会的健康戦略研究所 理事)
前田 氏、砺波 氏(同上)
【報告会レポート】
本報告は、日本マーケティング学会リサーチプロジェクトとして実施された「健康アセットマーケティング研究会」と「健康経営ブランディング研究会」の合同研究会の内容を整理し、健康経営の戦略的意義をマーケティング視点から再定義するものである。本研究会は、一般社団法人社会的健康戦略研究所が主催する健康経営コンペティションを基盤として、ブライト500認定企業である三幸土木株式会社およびベイラインエクスプレス株式会社の実務事例、ならびに大学生による提案を統合的に議論する場として開催された。近年、健康経営優良法人認定制度の拡大や人材不足、ウェルビーイング志向の高まりを背景として、健康経営は単なる福利厚生ではなく人的資本投資としての戦略的重要性を増しており、本研究会ではその本質と拡張可能性が多角的に検討された。
研究会の構成は、学生による提案報告、企業講演、そして産学連携によるパネルディスカッションの三部構成であり、特に学生視点からの提案は「働きたい企業」という観点から健康経営の価値を再評価するものであり、従来の企業内視点とは異なる新たな示唆を提供した。一方、企業講演では、ブライト500企業としての具体的取り組みが共有され、健康経営が現場レベルでどのように実装されているかが明らかとなった。さらに、大学教員、企業実務家、研究機関、学生が参加するパネルディスカッションでは、健康経営の理論・実務・将来視点が融合し、多層的な議論が展開された。
本研究会におけるコアインサイトとして、第一に健康経営は単なる福利厚生ではなく人的資本投資と経営戦略の統合領域であり、従業員の健康が生産性向上、組織エンゲージメント、さらにはブランド価値に直結する点が確認された。第二に、健康経営の「マーケティング化」という視点が提示され、健康は内部施策にとどまらず、採用ブランドや企業イメージ、社会的評価を形成する外部発信資産として機能することが示された。第三に、学生視点は未来の労働市場を反映する重要な視座であり、企業の健康経営戦略を再構築する上で有効であることが示唆された。第四に、実務上の課題として、施策の形骸化、KPI設定の困難性、現場浸透の難しさが指摘され、特に中小企業においては実行可能性の確保が重要な論点となる。
これらを踏まえた示唆として、実務的には健康経営をコストではなく投資として評価し、ROI視点での管理が求められるとともに、顧客体験(CX)と同様に従業員体験(EX)の設計が重要であること、さらにデータ活用による効果測定が不可欠であることが示された。また研究的には、健康経営とマーケティングの統合領域の深化が必要であり、健康経営とブランド価値の因果関係、従業員ウェルビーイングと顧客行動の連鎖、「健康アセット」概念の理論化が今後の重要課題として提示された。
総じて本研究会は、健康経営を人的資本から戦略的マーケティング資産へと拡張する議論の場として位置付けられ、学生、企業、研究者の三者の視点融合により、健康経営の多層的価値、すなわち内部効率の向上と外部価値創造の両立が明確化された点に大きな意義がある。
(文責:中見 真也)

