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研究報告会レポート

第11回AI研究報告会レポート「パーソナルAIエージェント普及による情報行動変化」

第11回AI研究報告会(オンライン)> 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:パーソナルAIエージェント普及による情報行動変化
報告者:吉田 健太郎 氏(未来事業創研ファウンダー)
    木幡 容子 氏(CXクリエイティブセンター 未来の暮らし研究部長 プロデューサー)
    土屋 泰洋 氏(リサーチャー / クリエーティブ・テクノロジスト)
    岸本 和也 氏(Dentsu Lab Tokyoクリエイティブテクノロジスト / コミュニケーションデザイナー)
    平位 怜 氏(第4マーケティング局 プランナー)
日 程:2026年3月25日(水)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催(53名)
 
【報告者プロフィール】
dentsu Japan AI センター
dentsu Japan AIセンターは、AI活用・開発の中核を担うことを目的とした、dentsu Japanのグループ横断組織。AIに関する専門的な知見とリソースを結集し、AIを企業変革の中核に位置づけながら、顧客企業およびグループ全体の変革と成長を支援しています。
 
未来事業創研
未来事業創研は、新規事業開発、ビジョン・パーパス策定、中長期戦略策定などのビジネス課題に対し、人・くらし・社会の未来を描き、「未来」をツールとして活用した創造性の高いビジネスソリューションを提供する国内電通グループの横断組織。
 
吉田 健太郎 氏吉田 健太郎 氏(未来事業創研ファウンダー)
モバイル事業、スマホアプリ領域を中心とした市場分析、戦略プランニング、コンサルティングなどに従事。電通モバイルプロジェクトリーダーとして、CES/MWCに2011年から毎年参加し、TECHトレンドを把握。2021年 電通グループ横断組織「未来事業創研」設立。未来の暮らしの可視化からのバックキャストでの事業開発を得意とする。消費者庁 新未来ビジョンフォーラム フェロー、経営管理学修士(MBA)。

 
木幡 容子 氏木幡 容子 氏(CXクリエイティブセンター 未来の暮らし研究部長 プロデューサー)
メディア局、営業局、マーケ局を経て、電通サイエンスジャムに取締役として出向し企業や大学が所有するテクノロジーのビジネス化を推進。現局では未来の体験を創造すべく新技術を活用したサービス開発や提案、企業のR&D推進、大学と連携した研究などを行っている。

 
土屋 泰洋 氏土屋 泰洋 氏(リサーチャー / クリエーティブ・テクノロジスト)
広告制作プロダクションを経て、2006年より電通。2018年Google Sydney出向。テクノロジーを活用した「ちょっと未来のコミュニケーション」の開発・実装を目指し、生体信号、ロボティクスなどの分野を中心としたプロダクトの研究・開発、デジタル技術を利用した広告企画などに従事。テクノロジーと人間の新しい関係性を追求している。

 
岸本 和也 氏岸本 和也 氏(Dentsu Lab Tokyoクリエイティブテクノロジスト / コミュニケーションデザイナー)
クロスメディアマーケティングの分析・プランニング業務に従事したのち、クリエイティブ局に異動。サーベイ〜企画〜プロトタイピングを通じて技術の「間違った」使い方を模索し、近年は生成AIや音・音楽に関わる案件を中心に取り組む。

 
平位 怜 氏平位 怜 氏(第4マーケティング局 プランナー)
未来事業創研 / DENTSU DESIRE DESIGN / dentsu japan AI centerに所属し、未来の暮らしを起点とした事業開発や消費者研究に従事。半生以上にわたり北米カルチャーを継続的に観察してきたバックグラウンドを活かし、海外視点と日本の生活者感覚を横断した分析を強みとする。Z世代を中心に、価値観や消費行動、カルチャーの変化を読み解くトレンド分析に注力。

 
【報告会レポート】
 AI研究会は、AI(人工知能)技術の進展に伴うマーケティング研究の論点及び実践的示唆の導出を目的としてリサプロとして2016年より活動しています。本研究会は、研究報告会(ワークショップ)を開催し、企業実践や関連する理論の理解を深めつつ、企画運営メンバーや参加者と一緒に議論しながら進めております。
 2025年度のAI研究会の活動の一部として、AI時代にあるべき企業のコミュニケーション活動を考える上で、まずはパーソナルAIエージェント普及による情報行動変化について、dentsu Japan AI センターと共同で研究を進めました。
 今回、dentsu Japan AI センター AILabsに所属し、電通未来事業創研で人と社会が求める未来を研究しているメンバーの皆さまから、パーソナルAIエージェントがもたらす生活者の意識・行動変化の未来について、お話を伺いました。
 
ゲストからの報告の概要
 マスメディアが主導してきた、事実の伝達と共通文脈の創出という機能は、今、AIが個別の生活者に最適化された個別文脈を動的に生成・付与する形態へと変容しようとしている。我々は今、情報流通の主導権が人間からAIへと移行する、歴史的な構造転換の端緒に立っているのではないか。
 このメディア進化に伴い、企業のマーケティング対象は人間からパーソナルAIエージェントへと拡張され、エージェンティック・コマース(Agentic Commerce)の時代が到来する。ここでは、企業の情報発信は人間への訴えかけから、AIが処理・評価しやすいデータによる個人最適への変化を理解する必要がある。例えばアンケートやCRM(顧客関係管理)は、生活者のAIと企業の直接通信へと代替され、取引モデルはB2A(Business to AI)のみならず、AI同士が自律的に訴求を行うA2A(AI to AI)へと移行し、AI間の相互作用を伴う新たな市場を創出する可能性がある。これにより、企業はROIの極大化を享受しようとする反面、AIの推奨アルゴリズムから排除されることによるブランドの埋没というようなリスクを負うことになる。
 さらに、AIによる最適化が進むことで、体験のパラドックスが生じる。AIが意思決定の認知負荷の多くを代行することで、生活者は選ぶ苦痛から解放される。しかし同時に、予測可能な最適化に埋没した生活者は、自らの主体性や意味づけの喪失に対し、心理的リアクタンスを抱くようになる。結果として、計算不能な発見、すなわちセレンディピティに対する渇望が強まるのである。
 これからの企業は、もはやAIの推薦精度の高さではなく、生活者の日常において、どの領域をAIに委任させ、どの領域に人間が自ら選択する意味のある余白を残すか。この委任と余白のデザイン能力こそが、AI時代のマーケティングにおける新たな組織能力となりうる。
 
【報告会を終えて】
 今回の報告では、生活者がAIエージェントという極めて強力な代理人を獲得することで、意思決定という認知負荷から解放されるが、同時に、意味の生成や行為の主体性を失いかねないという実践課題が共有されました。
 B2Aは、人からAIへの知識移転が消費市場で実装されていく姿と捉えられます。また、AIによる最適化の進行に対する「委任と余白の設計」の提案は、AIがより介在する新たなマーケティングにおける創造的適応や偶有性のデザインを実務に落とし込むための実践といえるかも知れません。
 今後、本研究会では、AIがAIをマーケティングする時代に際し、AIを梃子にして強化しうる組織能力の本質とは何か、引き続き、人とAIの協働のあり方について研究を深めていく所存です。
 
(文責:依田 祐一)

 
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