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研究報告会レポート

第23回デザイン思考研究報告会レポート「旭化成の『共感』を起点とするデザイン思考の組織導入」

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テーマ:旭化成の「共感」を起点とするデザイン思考の組織導入
日 程:2026年5月29日(金)16:00-17:30
場 所:旭化成株式会社 本社(会議室)
 
当日の内容

  • 解題:「デザイン思考の組織導入における現在地と課題」
    登壇者:廣田 章光(流通科学大学 商学部 特任教授 / 近畿大学 デザイン・クリエイティブ研究所)
  • 報告:「旭化成の共感を起点とするデザイン思考の組織導入」
    報告者:小西 美穂 氏(旭化成株式会社 デジタル共創本部DX戦略推進センター DX人財組織デザイン部 マネージャー)
  • 質疑および意見交換
    登壇者:吉橋 昭夫(Design Practice Lab.)、黒岩 健一郎(青山学院大学大学院)、小川 亮(株式会社プラグ)、廣田 章光(同上)

 
【報告会レポート】
1. 解題:「デザイン思考の組織導入における現在地と課題」

報告者:廣田 章光(流通科学大学 商学部 特任教授 / 近畿大学 デザイン・クリエイティブ研究所)

 デザイン思考の組織導入に関する現状が共有された。2023年の調査では、組織的にデザイン思考を導入、活用できている企業は約1割に留まっており、3年前と比較しても緩やかな増加に過ぎない。学術研究では、導入を阻む要因として、デザインの定義の曖昧さ、伝統的業務プロセスとの対立、リーダーシップの不足、そして既存市場優先による「新市場開拓の優先順位の低下」などが指摘されていることが共有された。
 
2. 報告:「旭化成の共感を起点とするデザイン思考の組織導入」

報告者:小西 美穂 氏(旭化成株式会社 デジタル共創本部DX戦略推進センター DX人財組織デザイン部 マネージャー)

講演の様子 旭化成における「DXオープンバッジプログラム」の一環としてのデザイン思考導入事例が以下の点から報告された。
1)導入のきっかけとプロセス
2)組織導入にむけて実施した教育方法、使用ツール、仕組み
3)デザイン思考教育モデル比較調査
4)人に焦点をあてた事例
5)デザイン思考とAI活用
 
・旭化成のデザイン思考の組織導入の特性
 同社の最大の特徴は、研修で得た知識を実務に応用し、定着させる「研修転移」に注力している点にある。
 そして、習得プロセスは以下の3段階で定義されている。
1)認識変容(基礎知識コース):eラーニングによる共通言語の構築
2)行動変容(体験型コース):汎用テーマを扱う「ワークショップ型」と、実務課題をチームで扱う「プロジェクト型」の選択制
3)思考変容(実践型コース):1on1の「内製コーチング」を組み合わせ、自律的な実践を支援
 事務局の質問票調査によれば、実務課題に接続し上司やチームが関与する「プロジェクト型」の方が、個人のワークショップ型よりもスキル活用度が高いことが確認されている。
 
・「共感」の再定義と内製コーチング
 旭化成では、デザイン思考の本質を「共感を判断の前提に置くこと」と定義している。そして共感の対象を顧客だけでなく、仲間、組織、事業環境へと広げることで、日々の小さな判断の質を高め、事業成果に繋げる特性がある。この実践を支えるのが「内製コーチング」である。事務局が現場の状況に寄り添い、受講者の迷いを整理し背中を押すことで、現場の忙しさや壁によって学びが止まるのを防いでいる。
 
・成果
 このような「共感」に焦点をあてた進め方によって、具体的な成果事例として、以下の2点が紹介された。
1)中高層ビル営業(ヘーベルビルズ):「何を建てるか」という製品起点から、顧客の事業や体験、組織メンバーへの共感に基づく「パートナー型営業」へ転換。半年間で約40億円、6件の受注につなげている。
2)防災コミュニケーションサービス:被害推定という社内向け視点から、発災時のお客様の不安に共感する価値定義へと刷新するとともに、組織にとっては迅速に支援を届けるための判断基盤を構築している。このような活動が評価され、2026年2月には、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会による2025年ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)優秀賞を受賞している。
 
・デザイン思考導入におけるAI活用
 生成AIの活用については、「思考の代替」ではなく「補助ツール」として位置づけている。そして、顧客理解、課題解釈、価値判断といった「共感と判断」の核心部分は人間が担い、文章整形や資料作成、情報探索にAIを活用する使い分けをしている。この理由は、人間が顧客の発話と向き合い、違和感を通じて、仮説を立て、価値を判断する——この一連のプロセスこそが「共感力」を育てると考えているためである。
 
3. 質疑と意見交換

吉橋 昭夫(Design Practice Lab.)、黒岩 健一郎(青山学院大学大学院)、小川 亮(株式会社プラグ)、廣田 章光(同上)

講演の様子 質疑応答では、B2Bにおけるペルソナ活用の有効性や、DX部門がデザイン思考を主導する意義について議論が行われた。議論においては、DXの「X(変革)」を推進するのは人間であり、そのマインドセットを変えるツールとしてデザイン思考が有効であることが示された。またB2B領域への導入においては、組織対組織の交渉であっても、窓口となる「個人」が置かれた状況を理解し、その中で発生する問題を理解することで解決提案の質に大きな影響を与えることが共有された。
 
(文責:流通科学大学 廣田 章光)

 
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