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第2回コミュニティマーケティング研究報告会レポート「コミュニティマーケティングの現在地:実践と研究の交差点」 |
第2回コミュニティマーケティング研究報告会(東京)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:コミュニティマーケティングの現在地:実践と研究の交差点
講演者:川上 真莉奈 氏(株式会社アテニア 事業戦略本部 通販営業部 デジタルコミュニケーション)
中原 康貴 氏(株式会社セールスフォース・ジャパン アライアンス 事業統括本部 Productivity Specialist)
長橋 明子 氏(慶應義塾大学大学院 商学研究科 助教(有期・研究奨励) / コミュニティマーケティング総研 代表取締役)
ファシリテーター:及川 直彦 氏(早稲田大学ビジネススクール 客員教授)
日 程:2026年7月10日(金)19:00-20:40
場 所:早稲田大学 11号館
【報告会レポート】
2026年7月10日、早稲田大学11号館にて、第2回「コミュニティマーケティング研究報告会」を開催しました。本報告会は、コミュニティマーケティングの実践事例と学術研究を結びつけ、企業価値向上につながるメカニズムを考えることを目的とするものです。今回は「コミュニティマーケティングの現在地:実践と研究の交差点」をテーマに、B2C企業の実践事例、プロフェッショナル・コミュニティに関する研究報告、パネルディスカッションを行いました。当日は50名を超える実務家と大学関係者が参加しました。
冒頭、慶應義塾大学大学院の長橋明子より、コミュニティの概念とコミュニティマーケティングの位置づけの整理を行いました。さらに、「コミュニティマーケティング白書2025-2026」の調査結果として、認知度が約7割に達し、42%が取り組み中または検討中である一方、実践企業では「活性化」「効果測定」「リソース不足」が主要課題となっていることが紹介されました。コミュニティマーケティングが、注目段階から実践・成果検証の段階へと移りつつあることが示されました。
コミュニティマーケティング実践事例紹介
実践報告では、株式会社アテニア事業本部 通販営業部 デジタルコミュニケーションGの川上真莉奈氏が、2015年に開設したファンコミュニティを「アテニアの成長エンジン」とするための取り組みを紹介しました。同コミュニティは2015年の開始後10年間で累計登録者数23万人、累計コメント数44万件に成長しています。運営では、お客様同士の交流に加えて、社員と直接対話できる「つながりラウンジ」を設け、ブランドを支える人の姿や商品の背景を伝えることで、企業への親近感や信頼を育んでいます。
また、SNSや情報誌とコミュニティを連動させ、個々の接点を一連の体験へとつなげる施策や、お客様の声を商品・サービスの改善、ノベルティの共創、社内へのインサイト共有に活用する仕組みも紹介されました。今後は、コミュニティをお客様理解の資産として一層活用し、コミュニティ起点のお客様創造につなげることを目指しています。
コミュニティマーケティング研究報告
研究報告では、株式会社セールスフォース・ジャパンの中原康貴氏が、「プロフェッショナル・コミュニティにおける参加者の継続的関与意図は、どのような心理的メカニズムによって形成されるのか」という研究課題について報告しました。プロフェッショナル・コミュニティ参加者200名を対象とした調査を、社会的交換理論と社会的アイデンティティ理論に基づき、構造方程式モデリング(SEM)によって分析したものです。
分析の結果、参加者のコミュニティのテーマや方向性との適合性は、参加の前提となる「衛生要因」である一方、継続的な価値実感を生み出す中心は、助け合いや心理的安全性といった「関係の質」にあることが示されました。さらに、帰属意識は価値実感を経由するだけではなく、継続的関与意図に直接影響する独立した要因であり、「役に立つから参加する」という合理性だけでなく、「ここに居たい」という居場所の感覚が、参加の継続を支えていることが明らかになりました。
パネルディスカッション
後半のパネルディスカッションでは、早稲田大学ビジネススクールの及川直彦氏のファシリテーションのもと、成果指標、参加のインセンティブ、AI時代におけるコミュニティの価値、クローズドな場から外部への情報流通、立ち上げ期の苦労などについて、参加者からの質疑も含めて議論しました。
アテニアでは日々の活動に関するKPIに加え、最終的にはLTVへの貢献を確認している一方、プロフェッショナル・コミュニティでは、参加者同士が共同でガイドラインなどの成果物を生み出すことが重要な指標とされています。また、双方とも参加者への金銭的謝礼を基本とはせず、アテニアスタッフやお客様同士の交流、商品体験などを参加価値としている点が共通していました。
AIに関する議論では、アテニア 川上氏より、「情報が大量に流通する時代だからこそ、企業への信頼をもっていただくことが重要。アテニアには、コミュニティを通して人とのつながり、共感、心理的安全性、企業の“人肌感”を伝える役割がある」との指摘がありました。実践事例と研究結果の双方から、コミュニティの持続性を支えるのは、コンテンツの有用性だけではなく、信頼できる関係性と帰属意識であることが浮かび上がりました。実務の豊かなディテールを研究の言葉で捉え直し、研究知見を再び実践へと還元する、本報告会のテーマを体現する議論となりました。
【報告会を終えて】
今回は、10年にわたるB2Cファンコミュニティの実践と、プロフェッショナル・コミュニティの継続的関与を説明する学術研究を並べて取り上げることで、対象や目的が異なるコミュニティにも共通する要素が見えてきました。特に、関係の質、心理的安全性、帰属意識が参加者の価値実感と継続を支えるという点は、実践と研究の双方から確認された重要な示唆です。
豊富なディテールを持つ実践事例を研究の視点から一般化し、研究によって得られた知見を再び実務へ還元することに、本研究プロジェクトの意義があります。今後も、成果測定やコミュニティの事業貢献、AI時代における人と人とのつながりの価値などについて、実務家と研究者の対話を通じて知見を蓄積していきたいと考えています。
(文責:長橋 明子)

