|
第6回学びとマーケティング研究報告会レポート「実務家教員とは何者か ― 大学教育における『第三の教員』の実像と意義 ―」 |
第6回学びとマーケティング研究報告会(カンファレンス2026)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:実務家教員とは何者か ― 大学教育における『第三の教員』の実像と意義 ―
日 程:2026年10月25日(日)9:00-10:20
場 所:法政大学 市ケ谷キャンパス S403教室
プログラム:
- 基調講演:大学における実務家教員の実態(期待される役割と課題)
春木 良且(昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員) - 事例紹介:企業人における大学教員へのアカデミックシフト ― 実務家教員のアカデミック・キャリア設計 ―
松尾 尚(産業能率大学 経営学部 教授) - ディスカッション:実務家教員に望まれる資質・スキル
本リサプロ(春木 良且・加藤 恭子・松尾 尚)、参加者によるディスカッション
【報告会レポート】
1. 基調講演「大学における実務家教員の実態 ― 期待される役割と課題 ―」
本リサーチプロジェクトメンバーの春木氏より、実務家教員の定義、制度的な位置づけ、配置の実態と政策的な変遷について報告があった。
実務家教員は、企業・官公庁等で培った知識や経験を高等教育に生かす教員である一方、法令上の一律の資格区分ではなく、一般大学、専門職大学院、専門職大学等で要件や配置基準が異なる。
2003年の専門職大学院制度、2019年の専門職大学制度化といったターニングポイントを経て、実務経験を教育に活用する仕組みが段階的に整備されてきた。
また、修学支援新制度の対象校では、実務経験のある教員等による授業科目の配置とシラバス等での明示が求められ、実務経験を教育上の価値へと転換する説明責任も重要となっている。
2. 事例紹介「企業人における大学教員へのアカデミックシフト」
本リサーチプロジェクトメンバーの松尾より、企業での実務経験を大学教育・研究へ接続するキャリア形成と、実務家教員に必要な能力について事例報告があった。
学部教育では、実務に基づく専門性や演習指導だけでなく、学生の学びを支える汎用的な理論・知識も必要であり、両者を組み合わせることが重要である。実務家教員の強みとして、実際の事例を用いたケーススタディ、企業課題を活用したPBL、実務ツールの指導、業界ネットワークを通じた社会との接続が挙げられた。
一方、担当分野の幅や大学教員としての職務(週に担当すべきコマ数)にも対応し、専門性を教育課程全体へ広げることが課題となる。大学教員のキャリア形成の発展段階として、I型(専門性を深める)、T型(知識の幅を広げる)、H型(人・組織・社会をつなぐ)、N型(複数の専門性を融合し新たな価値を創造する)という類型が紹介された。
3. ディスカッションの主な論点
本リサーチプロジェクトメンバーの加藤恭子氏、春木氏、松尾の3名、そして出席者を加えた形で、以下のテーマに関して、議論を行った。
1. 実務家教員を目指す人に必要な準備、2. 教員就任後に専門性を維持・発展させる方法、3. 実務経験後に大学教員となる人をどのように定義するか、の3点を中心に論点が提示された。
これらは、実務経験の長さや職歴のみでなく、経験を理論化し、学生の学びに結び付ける教育力、研究への展開力、大学内外をつなぐ力をどのように育成・評価するかという課題につながる。
参加いただいた方はビジネスパーソンが多く、ビジネス経験をどのようにアカデミックな分野に活かすべきなのか、実務家教員になるための要件等について、活発な質問が出たことを付記する。
4. まとめ
本研究会では、実務家教員を研究者教員・教育専門教員と並ぶ「第三の教員」として捉え、その独自性と大学教育における意義を検討した。
経験を理論と結び付け、学士課程教育において初学者である学生に伝わる形で構造化し、教育・研究・社会連携へ還元する能力が重要である。今後は、実務家教員の育成・キャリア形成、専門性の継続的な更新、大学組織における役割と評価のあり方をさらに検討する必要がある。
(文責:松尾 尚)

