リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第1回質的リサーチ研究報告会レポート「ビジネスエスノグラフィー・ワークショップ:物語性について(物語の作り方、構成の方法など)」

第1回質的リサーチ研究報告会
実施内容:ビジネスエスノグラフィー・ワークショップ
     第1回目は物語性について(物語の作り方、構成の方法など)
コーディネータ:田村 直樹(関西外国語大学 准教授)・本研究会プロジェクトリーダー
日 程:2014年6月8日(日)ワークショップ / 10:30-17:30
場 所:国立情報学研究所(学術総合センター)1901室
    〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2

 
 

【結果報告】
ビジネスエスノグラフィー 2014年6月8日(日)、国立情報学研究所にて、日本マーケティング学会リサーチプロジェクト「質的リサーチ研究会」がスタートしました。私、田村直樹がリーダーとしてコーディネートさせて頂きます。全7回シリーズで、ビジネスエスノグラフィーをワークショップ形式で行います。参加者は、最終的には実際に成果物としてペーパーを提出することを目指します。
 この第1回のテーマは物語性。人々は物語を通して世界を理解し、自分を理解しています。それを頭ではなく、体で理解するためのゲームや物語の即興づくり、グループでの紙芝居づくりにチャレンジしていただきました。
 その参加者のなかでとても素敵なコメントと頂きましたのでご紹介します。

 
昨日参加させていただいた研究会で、質的調査についての素敵な定義を教わりました。記憶を元にしているので、軸は異なるかもしれませんが、質的調査は、(私たちの生活の中で)、どこに幸せがあるかを見つけるもの。
今までに聞いた定義の中で一番元気がでるものでした。
定性調査と定量調査で、定性調査は「そこに何があるかを明らかにするもの」と書きました。また「探しているものは見つかるまでわからない」とも書きました。
しかし、そうは言いながら、「○○がわからずに、○○を見つける」という行為は、目的として辛いものがあります。探す事の動機付けが欲しくなります。この探す物がわからないのに探す目的(メタ目的)として、「幸せ」を置くことは、とても理にかなった、実践的(プラグマティック)なことだと思います。おそらくは、質的調査に関わる人が皆何となく思っていることを非常に素晴らしく言語化していただいたのではないかと思います。
もちろん、「幸せ」とは何だという問いは残りますが、それは、「その人にとって幸せだと感じるものが幸せである」というトートロジーで定義する他ないし、またそうでないどのような定義(例えば、お金があること(だけが)幸せ、愛があること(だけが)幸せなど)も、客観的に定義したなら、独善的、排他的のそしりを免れないでしょう。
昨日の研究会でこのことを教えていただいた先生は、「笑顔」をあげておられました。これは、私を始め、参加メンバーの多くに大いなる共感を呼んだものでしたが、もちろんその人なりの違った定義があってもよいと思います。
これも、研究会で話していただいたことですが、例えばこの「幸せ」というものを考えると、それは例えば「純金」のように、客観的に定義できないし、かといって、笑顔があったり、愛があったり、お金があったりすると不幸であるという人も多くないと思われますので、主観的に定義するものだとも言い切れない。
ということは、主観と客観は対立する2つの概念ではないともいえるのでしょう。「幸せ」は構成された概念とも言い切れないし、実在するとも言い切れないということでしょうか。
また、もう1つ、この質的研究の定義に続いて、以下の定義も素晴らしいものでした。
仮説立案とは、人が幸せになるのはどうすればよいかを考えること。
よく、定性調査の目的は仮説立案であると言いますが、上記2つの定義を用いれば、
「質的調査(定性調査)は、人々の生活のどこに幸せがあるかを見つけ、その幸せを実現するためにはどうすればよいかを考えること」
と言いたいと思います。

 

私の思いを見事に言葉にしていただきました。ありがとうございました。
当日のメニューは以下の通り。

  1. ゲーム「あいうえお手裏剣」にて、コミュニケーションと笑顔の原理を知る。
  2. 「エレベーター・ピッチ」を用いて、物語を即興でつくる。
  3. ゲーム「社長、大変です!」にて、物語、コミュニケーション、笑顔を理解。
  4. グループで紙芝居づくり。小学4年生の気持ちで。名作続出でした!
  5. サマリー:笑顔は、本来いつでもどこでも生み出せる。人は幸せになりたい。幸せの物語を手に入れたい。マーケティングとは人を幸せにする方法に他ならないのだ。
  6. インプリケーション:商品開発も業務改善も、消費者や当事者が笑顔で幸せになれるためのもの。リサーチャーの役割は、その笑顔を生み出す仕組みを発見すること。これこそ「インサイト」と呼ばれるものである。

 

会場の様子 会場の様子
会場の様子

 
本ワークショップのスケジュールは以下の通り。
第1回 物語性 (実際に物語をつくり体で理解する)
第2回 ペルソナ (心理学、交流分析を応用し消費者心理をプロファイルする)
第3回 フィールドワーク (アフォーダンスを発見するために実際に街に出かける)
第4回 KJ法(集めたデータ、フィールドノーツから仮説立案、ソリューション提案)
第5回 中間報告(フロアと質疑応答、情報を全員でシェアする)
第6回 成果報告(ペーパーをベースにプレゼンテーション、フロアからフィードバック)
第7回 成果報告(同上、およびワークショップのクロージング)

 

 本研究会から生まれたビジネスエスノグラフィーは、日本マーケティング学会のワーキングペーパーに投稿いただきます。そしてその中で、優れたエスノグラフィーはぜひ出版したいと考えています。
 次回の第2回は消費者心理の分析に迫ります。これまでにない消費者心理のプロファイリングの方法を理論的に解説いたします。
 

▼研究報告URL
http://www.naoki-tamura.com/研究報告/

 
(企画運営メンバー:松尾真吾)

 
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