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研究報告会レポート

第21回価値共創型マーケティング研究報告会レポート「価値共創マーケティングの応用と実践」

第21回 価値共創型マーケティング研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:「価値共創マーケティングの応用と実践」
日 程:2017年12月3日(日)13:00-17:00
場 所:大阪産業大学(梅田サテライトキャンパス)

 

【報告会レポート】
報告1「Catalyst(カタリスト)再考 -価値共創マーケティングにおける触媒の機能-」

宮脇 靖典 氏(首都大学東京大学院)

宮脇氏 宮脇氏は、これまでの価値共創研究が、共創という視点で主体間関係に注目することの意義に迫る一方で、顧客側の価値創造をいかに促進するかという研究の課題が残されていることに問題意識を持ちます。期待される共創の促進とはどのように推進できるのか。このことを検討するうえで宮脇氏が注目したものに、カタリストがあります。化学反応における触媒を表すこの語は、物質間の化学反応のスピードを加速させるものであり、かつ、活性化エネルギーを低くする働きを持つとされます。つまり、より良い主体間関係の構築によって共創を可能にする際に、望ましい第三者が介在する可能性があり、これをカタリストと捉えることが可能だといえます。宮脇氏は、こうした視点ですでにビジネスのシーンにおいてカタリストと称されている立場で活躍している方々へのインタビュー調査から、理論と実務双方の課題に基づいて研究を進めていらっしゃいました。
 本日の報告では、前述の問題意識に基づく先行研究の整理がございました。類似の概念にレギュレーターという語がございますが、不足する視点を明らかにしたうえで、どのようなカタリスト機能が共創を可能にするのかという議論が展開されました。一方の、カタリストと称される立場にある実務者にも課題がありました。これは本研究会での報告のあった既存研究からも明らかで、なかなか軌道に乗った活動を特定することが困難な現状があります。こうした実態は、どのように理論枠組みで捉えることができるでしょうか。宮脇氏の研究は、価値共創がダイアド関係だけで説明し得ない領域を解明しようとする応用的なものであり、リレーションシップや主体間関係の調整にも示唆を与え得る内容だといえます。 
 

報告2「国際協力支援活動における価値共創 -JICA事業の事例-」

山川 茂光 氏(NPO法人 いきいき将来設計工房 代表理事)

山川氏 山川氏は、サラヤの製品がウガンダで使用される事例に注目することで、国際協力のあり方にも価値共創のフレームワークでの検討が重要であることが示されました。山川氏はJICAの活動を通じて日本の国際協力の姿を捉えるなかで、現地の人々の生活に入り込む協力がいかに大切なのかを説明していきます。サラヤの製品は医療の現場で手指の消毒に用いられるのですが、手指の消毒がなぜ重要なのかという理解抜きに浸透しません。また、消毒という行為は手洗いの中で実践されることで、一般的な人々の生活においても行われる行為だといえます。この行為が習慣化されることで、衛生的な生活環境を確立することができ、生活水準の向上が達成できます。つまり、サラヤの製品は人々の生活における使用が一般化することが大切だといえます。このことは、いかに人々が価値を感じる文脈への関与が不可欠なのかを物語っているといえ、文脈マネジメント抜きにサラヤの国際協力は実現しないといえます。感染症から医療や人々の生活を守り、衛生的な生活が当たり前にならない限り、国際協力(=文脈マネジメント)ではないのです。
 このように考えていくと、国際協力を価値共創のフレームワークで検討する意義が発見できます。本研究会では4C(Contact, Communication, Co-creation, Value-in-Context)アプローチが示されていますが、サラヤの事例は、罹患率の低下や感染予防による死亡者数の低下といった文脈に通じる価値共創マーケティングの推進と同義だといえます。すると、むしろ文脈を見据えた支援や協力の推進が重要であり、それは単なる製品の供給のみならず、文脈生成に必要なサービスの展開が大きな意味を持つようになります。山川氏のご報告には「手洗いアンバサダー」の活躍も示されており、こうした活動こそ文脈マネジメントの担い手だといえます。
 こうした事例に基づけば、国際協力にもさまざまな文脈的価値の次元があり、その視点に基づくサービスも踏まえたプロセスの構築が大切だと説明することができます。山川氏の報告は、国際協力という視点からプロセス形成に基づく文脈マネジメントを俯瞰的に捉えた議論を展開する貴重な試みだといえます。
 

講演「パナソニックが目指す価値共創」

中村 真一 氏(パナソニック株式会社 ナレッジサービス推進室長)

中村氏 中村様が所属するナレッジサービス推進室は、「貴社のお困りごとを幅広いサービスで解決」をモットーに、同社と顧客を「ナレッジ」で接続し、問題解決することを推進しようとしています。この「ナレッジサービス」の対象は幅広く、同社製品を活用したサービスといった狭義の解釈に留まりません。個人顧客からは製品の使用シーンにおけるさまざまな声を伺う窓口が必要であり、顧客とのさまざまな交流から新たな挑戦が求められます。法人顧客に向けては、同社がベンダーとして何ができるかを考えていく必要があります。両方に共通するテーマは、社会の変化に応じた企業の貢献とは何かであり、20世紀的な家電を販売したら使ってもらえるようなエコシステムではなく、21世紀的なエコシステムとその中で機能する同社のあり方とは何かを考えるのが、ナレッジサービス推進室ということになります。
 IoT時代におけるパナソニックの強みとは何でしょうか。何らかのシステムの中で同社が強みを発揮する必要があるでしょうし、共通の価値が存在しない時代でしょう。個別の価値への注目が必要でしょうし、売上偏重の企業活動でなく、いかにサービスを付加できるかというスタイルへの転換が求められます。中村様は、ご所属の部署でのお取り組みをお話しいただいたのですが、それは製造業からサービス業への転換を意味しているようでした。あるいは、価値創造型ではなく、価値共創型のビジネスモデルへの転換を推進する姿ではないかと感じました。
 

ディスカッション

パネラー
 宮脇 靖典 氏(首都大学東京大学院)
 山川 茂光 氏(NPO法人 いきいき将来設計工房 代表理事)
 中村 真一 氏(パナソニック株式会社 ナレッジサービス推進室長)
ファシリテーター
 藤岡 芳郎 氏(大阪産業大学 経営学部教授)

ディスカッションの様子 本日も参加者全員による活発なディスカッションが実現しました。価値共創に必要なプラットフォームという議論とカタリストの議論は同じか否かという質問は、多くの参加者にとって関心あるものでした。宮脇先生は、プラットフォームがあってもなお、主体間の関係が形成されない場合が数々あり、関係を調整するアクターが必要とされる場面がいくつもあることが説明されました。また、従来のサービス・マーケティング研究で議論されてきた「サービス・トライアングル」との接続、具体的には従業員がカタリストの立場を担うとした場合、どのような条件や前提が必要となるのかといった質問がありました。グッズ・マーケティングが主流の時代の、補完する議論としての側面を反映したサービス・マーケティング研究と、価値共創マーケティングとは大きく異なると捉えるべきではないかとの議論が展開されました。
 ご講演の内容についても議論が展開されました。ナレッジサービスというが最適なサービスの組み合わせを考えるということは、劣性にある自社製品を控えて他社製品を採用するというようなこともあり得るのかというお尋ねに対し、中村様は最適化した提案こそ他者との差別化が重要であり、提案の最適化を差別化要素とした場合に、他社製品の採用も憚らないということは考え得るとの回答がありました。ただしそれは、ベンダーではなくパートナーであり、関係性が継続することすらサービスのプロセスであり、その挑戦が求められていると考えているとの回答は、参加者の心に響くものだったと感じます。
 
(文責:今村 一真)

 
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