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研究報告会レポート

第3回ヘルスケアビジネス研究報告会レポート「ヘルスケアビジネスの最近の展開:With コロナ時代の医療の変化とマーケティング」

#いまマーケティングができること

第3回 ヘルスケアビジネス研究報告会 > 研究会の詳細はこちら
テーマ:ヘルスケアビジネスの最近の展開:With コロナ時代の医療の変化とマーケティング
日 程 :2020年9月22日(火)13:00-17:00
場 所:ZOOMによるオンライン開催
進 行:香川 勇介 氏 日本マーケティング学会理事、中央大学大学院 戦略経営研究科(博士後期課程)
演 者:真野 俊樹 氏 中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授
    田中 智子 氏 うぐいすヘルスケア株式会社 代表取締役
    清水 幸宏 氏 中央大学ビジネススクール メディケアプロジェクト
    佐藤 幸夫 氏 多摩大学 医療・介護ソリューション研究所 フェロー
    青山 友則 氏 中央大学ビジネススクール メディケアプロジェクト
 
【報告会レポート】
 昨年発足したヘルスケアビジネス研究会は、真野俊樹教授をリーダーに日本のヘルスケアビジネスを探求する研究会である。第3回となる今回の研究会では、中央大学ビジネススクールメディケアプロジェクトとの共催で実施された。本日のテーマは「ヘルスケアビジネスの最近の展開」と題して「With コロナ時代の医療の変化とマーケティング」について講演とディスカッションを実施した。当日はコロナ禍での開催を考慮してオンラインでの開催となったが、40名を超える参加者の下、貴重な情報共有の場となった。後半のディスカッションでは、演者を交えた活発なディスカッションが交わされヘルスケアビジネスへの関心の高さが感じられた研究会となった。
 
講演1 真野 俊樹 氏 中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授
『with corona 時代の医療の行方』

 冒頭の講演では、コロナ禍を背景にヘルスケアビジネスが置かれた社会環境について、中国や欧米など海外での状況と日本の現状について分かり易く解説頂いた。講演の前半では「医療をめぐる背景と日本の医療レベル」、後半では「With corona時代の医療の行方」として解説頂いた。医療レベルや医療制度の違いにより、新型コロナウイルスへの対応やヘルスケアビジネスの展開が異なっている現状を理解することができた。医療では、コスト、質、アクセスが重要なポイントであると言われている。日本では、これらのバランスが良く高いレベルで維持されているが、今後は医師の働き方改革の拡大などによってアクセスが制限される恐れもある。今後は、これらの問題解消に向けてIT化(デジタル化、省力化、非接触化)の進歩に期待が寄せられる。このような日本での状況に反して、医療アクセスが良くない国ほどIT化が進歩するという医療ICTの逆説という仮説が提示された。真野教授は、日本の医療には、多くの課題が内在していることへの警鐘を提示すると共に日本の医療の先行きに対してICTと最先端技術については不安があると締め括った。
 
講演2 田中 智子 氏 うぐいすヘルスケア株式会社 代表取締役
『潜在力のある市場への挑戦~市場課題を顕在化させ、補聴器業界にイノベーションを起こす~』

 田中氏の補聴器の訪問販売の事業について講演を頂いた。メガネ業界の事例などから補聴器業界に迫る破壊的イノベーションを提示頂く。補聴器業界の現状から顧客の満足度調査、業界が抱える課題などを紹介頂く。補聴器業界が抱える問題や破壊的イノベーションへの対応のために、大手パーソナルジムのビジネスモデルを参考にしたイノベーティブなビジネスモデルである。補聴器の音量調整が十分に行われていないという課題を解消するために、自社が行っている訪問販売による問題解消事例や顧客満足度向上に向けた活動について紹介頂く。IT技術の進歩による新たなニーズへの対応や補聴器を介した情報収集と情報活用、将来拡大が期待できる領域など幅広い話題を共有頂いた。また、事業活動を通じて健康寿命の延伸に貢献するというビジョンは、マーケティングの変遷にも合致する先進的な企業であり今後の活躍が期待される。
 
講演3 清水 幸宏 氏 中央大学ビジネススクール メディケアプロジェクト
『医療現場にて重要視される医療機器の選択要因についての一考察』

 清水氏から、修士論文向けの医療機器の選択要因に関する研究について講演頂く。医療機関が採用する医療機器に関する認知、選択、使用時の手技を得るために必要な要素について先行研究、アンケート調査などから研究結果を紹介頂く。医療機器の採用には、医薬品と異なり手技の取得やレベルアップのために、学会展示や院内説明会などが重要要因として示された。また、修士論文の内容に加えて、コロナ禍で学会や院内説明会など従来のサポートが困難な現状についても補足解説頂いた。学会が延期や中止、WEB開催となり、MRの訪問規制も強化される中、新たな手法としてWEB広告や遠隔トレーニング、VRトレーニングなどIT技術を活用したモデルにも言及頂いた。
 
講演4 佐藤 幸夫 氏 多摩大学 医療・介護ソリューション研究所 フェロー
『ヘルスケアビジネスに求められる価値共創~サービス・エコシステム概念から捉える新たな価値の共創~』

 現代社会で生じているコロナ禍を背景に、マーケティングの変遷、ヘルスケアビジネスがおかれている社会環境などを考慮したヘルスケアビジネスに求められる価値共創について発表致しました。また、コロナ禍で生じた情報の不確実性や情報の非対称性、国民の限定合理性や社会的ジレンマが生じる経緯を簡単に紹介致しました。マーケティング研究で考慮すべきこれらの課題を認識する手法をサービス・ドミナント・ロジックから派生したサービス・エコシステム概念から俯瞰する意義と、サービス・エコシステム概念を事業活動に導入する手法としてドラッカーのマネジメント・スコアカードの活用を提案致しました。
 
講演5 青山 友則 氏 中央大学ビジネススクール メディケアプロジェクト
『アパホテルの新型コロナ感染者の軽症者受け入れにおける経営戦略』

 青山氏から、中央大学ビジネススクール メディケアプロジェクトで実施した研究成果について講演頂いた。アパホテルへの取材をもとに、新型コロナウイルスの軽症者受け入れについてホテルの意思決定、ブランド戦略などについて発表頂いた。行政からの要請後、社長が決断に至った経緯とビジネスリーダ向けに実施したアンケート調査から、今回の決断について事業的、社会的影響への紹介は、業界を問わず関心を寄せる内容です。安全と経済の対比、風評被害の恐れなど、企業の危機管理として考慮すべき重要な事項である。同業他社との比較や企業におけるBCPやBCMの在り方など今日的な課題に関する発表となった。
 
ディスカッションと質疑応答 進行:香川 勇介 氏、真野 俊樹 氏、他の演者、WEB参加者
 真野教授から全体の統括と発表者への質問、参加者からチャット経由での質問について回答を行った。真野教授の発表に対しては、日本で予防やヘルスケアが普及しない理由、国内で医療情報の統合が進まない理由など、臨床現場で生じている問題について多くの質問を頂き、ディスカッションを通じて議論が進んだ。デジタル時代のコミュニケーション手法やタッチポイントでのIT化など、ヘルスケアビジネスの更なるソリューションに期待が寄せられた。田中氏の発表に対しては、補聴器の具体的な調整方法や集音器との違い、補聴器を耳に装用するウエアラブル端末としてとらえる将来遠望など多くの質問に対して丁寧に回答頂いた。清水氏の発表に対しては、コロナ禍を背景に現在の医療機器業界の活動状況などの質問について、現状を回答頂きました。佐藤の発表に対しては、マネジメント・スコアカードの具体的導入状況や企業からの反応などの質問について、ドラッカー学会でのマネジメント・スコアカード普及啓発活動について紹介致しました。青山氏の発表に対しては、軽症者受け入れに際して社員の反応や企業の社会的責任、ブランド戦略への影響などの質問について回答を頂いた。
 
 今回の研究会では、真野教授によるコロナ禍における社会的動向を概観した後、具体的な事例報告からヘルスケアビジネスの課題と今後の展開について議論を深めることができた。コロナ禍での開催を反映し、各発表内容には新型コロナウイルスへの対処など多くの知見が盛り込まれ参加者の活動の一助になったと思われる。本研究会では、ヘルスケアビジネスについて新たな知見の共有や討議を通じて、日本のヘルスケアビジネス推進に寄与したいと考えております。ヘルスケアビジネスに興味を持つ多くの方々のご参加をお待ちしております。
 
(文責:佐藤 幸夫)

 
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