リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第8回マーケティング・ツールとしての知的財産研究会レポート「『特許』取得をアピールする広告の効果と法的規制について考える~トクホ、機能性表示食品との効果の比較から景表法・薬機法等の規制との関係まで」

#いまマーケティングができること

第8回マーケティング・ツールとしての知的財産研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン)
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テーマ:「特許」取得をアピールする広告の効果と法的規制について考える~トクホ、機能性表示食品との効果の比較から景表法・薬機法等の規制との関係まで

  1. 特許取得表示が与える消費者行動への影響
    堀口 麻起子(アマゾンジャパン合同会社 Amazon Advertising, Product Marketing Manager)
  2. 特許に関する広告表示と法的規制
    杉光 一成(KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授)

日 時:2021年3月13日(土)14:45-16:15
場 所:Zoomによるオンライン開催
 

【報告会レポート】
 第8回の研究報告会は、春のリサプロ祭りの枠の中で行い、「特許」取得をアピールする広告の効果と法的規制について考える~トクホ、機能性表示食品との効果の比較から景表法・薬機法等の規制との関係までというテーマで、広告の効果についてはゲストを1名お招きして発表頂き、さらに法的規制については本プロジェクトリーダーから発表するという2部構成で行いました。
テーマ設定の背景は、「特許製法」である点を包装に表示するインスタント麺、「特許取得」数を示す掃除機、「世界特許」取得を示す素材等、広告に「特許」という文字を用いたものを目にする機会は多くなっていますが、この種の広告にはプロモーションとしていかなる効果があるのか、という疑問からです。そしてその効果はトクホや機能性表示食品と比較してどうなのか、さらに仮に有効であるとしても法的規制の問題をクリアする必要もあります。例えば、広告の対象が健康食品や医療関係製品等の場合には、景表法、薬機法等の規制も関係し、実際、2020年7月に、健康食品の広告に関して薬機法違反により、初めて広告代理店の社長が逮捕される、という事件も生じています。
 このような背景を前提とし、前半は特許取得の広告効果に関する調査内容(マーケティングカンファレンス2019年10月20日での発表内容とその後の新たな検討結果)について発表頂きました。
 まず、前半は堀口氏より、1.特許取得の表示が消費者行動へ与える影響について、健康食品において「特許取得」表示が「特定保健用食品」表示よりも消費者行動に影響を与えるのかどうか、2「特許取得」表示は「機能性表示食品」表示よりも消費者行動に影響を与えるかどうか、3「特許取得」含まない表示より、含む表示の商品の購入を検討するかどうか、最後に、4「先進性」の表示より「特許取得」表示の商品の購入を検討するかどうかについてのアンケート調査の結果について報告頂きました。
 その結果、1と2は有意差がなく、3は有意差があり、4は有意差がない、という結論となりました。つまり、特許取得表示は、消費者の購買行動に正の影響を与えることが確認されたとともに、いわゆるトクホや機能性表示食品との差がないとのことでした。トクホの試験費用等がかなりの高額に上ることと合わせて考えると比較的少額(100万円程度)で得られる特許取得の表示の効果が費用対効果で有効な可能性が示唆されたとのことでした。
 次に、後半では、本プロジェクトリーダーの杉光(本報告者)から法的規制についての検討結果を発表させて頂きました。
 具体的には、まず、特許法において特許表示はむしろ義務(ただし努力義務)として規定されている点についてご説明し、その他に「表示」に関連する法律として景表法、健康増進法、薬機法、不正競争防止法等、かなり複雑に重畳的な規制がなされている点を説明しました。
 また、強調表示といわれる「世界初」等の表示のエビデンスとして特許を用いることが可能かどうか等について具体的な事例を列挙してそれぞれについての検討結果を説明しました。その後、質疑応答を行う形での討論を行いました。
 
【報告会を終えて】
 今回のテーマに関しては某大手食品会社の方より詳細なコメントをメールで頂きました。その内容は今回のテーマは「ありそうでなかったテーマ」であり、かつ実は上記2つのテーマのいずれも個人的にも関心があり、社内でも検討していたところだった、というものでした。さらに、この2つのテーマについてご自身も研究に参加したい、というお申し出も頂きました。実際にニーズのあるテーマであることを確認できました。
 引き続き、本リサーチプロジェクトを続けて行きたいと考えております。
 
(報告者:プロジェクトリーダー 杉光 一成)

 
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