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研究報告会レポート

第7回場所と地域のブランディング研究報告会レポート「スマートシティからスマートプレイスへ」

#いまマーケティングができること

第7回場所と地域のブランディング研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:スマートシティからスマートプレイスへ
報告者:伊藤 大貴 氏(株式会社Public dots & Company 代表取締役 CEO)
日 程:2021年3月13日(木)14:45-16:15
場 所:Zoomによるオンライン開催

 

【報告会レポート】
 研究会の初めにファシリテーター若林氏より,テクノロジーの変化,コロナによる変化,関係人口へのシフトといった3つの問題意識のもと,今後「場所=PLACE」はどうなっていくのか?という提起がなされた。
 コロナによる価値観の変革が引き起こすこれからのスマートプレイスとは?というテーマを受け,報告者の伊藤氏より、スマートシティの現状と未来,CXの視点が欠けていたこれまでのスマートシティ,COVID-19で加速した場所性の変化と具体的なケース,の3つ論点について講演してもらった。
 
スマートシティの現状と未来
 伊藤氏は、昨年コロナ禍の6月から8月に,約8,000人の経営者・マネジメント層を対象に,これからの働き方,暮らし方,オフィスのあり方について調査した『スマートシティ2025』の調査結果より、まず今後5年でどのような技術やサービスが拡充するかといった論点で,伊藤氏は人の移動,特に子どものいる家庭(小中高)の移動を妨げるものは教育ではないかとしている。そのうえで働き方に関する調査項目についても出勤を前提としない「あたらしい働き方」の方向が見いだされる結果が示されたのに対し,リモートを阻害する要因として企業の対応の立ち遅れを指摘している。しかしながら,コロナがおきたことは変化を加速させた側面があり,現在はよりリモート対応が進んでいるという。
 また,ハイブリッド型社会を前提とした居住地として,オンラインでやれることはオンライン,オフラインはオフラインという峻別が進むのではないかとしている。5年後の働き方はテレワークとの組み合わせとする回答が過半数を超えたが,ネックになるのは教育であり、文部科学省が紙とデジタルの併用を推奨している現段階では,働き方,暮らし方の多様性を阻む最後のハードルとなっている。
 

 
 この論点についてのフロアからの質問では,ネットでの教育を含め遠隔で色々なことができることで居住地の自由度が高まるとすれば,制約がなくなったときの人々の住む価値,場所に何を求めるかといことについて意見が交わされた。伊藤氏によれば都市の利便性は否定されるものではなく,都市と許容できる距離感がある注目されなかった地域に,新たな働き方や居住のスタイルが生まれる可能性があるのではないかとしている(オンライン化による利便性の優先順位が変化)。
 
CXの視点が欠けていたこれまでのスマートシティ
 続いて伊藤氏によると,近年は第3世代のスマートシティの流れが存在する。そこではグリーンフィールド型(新規開発型)とブラウンフィールド型(既存都市型)の2つのタイプがあり、前者は中国の深圳,後者はヨーロッパに見られるという。後者は既存市街地のアップデートであり,人の合意形成が伴い,面倒ごとが多い。これを踏まえ,これまで「テクノロジー起点」であったものを自分たちの暮らしをどうしたいのか,すなわちブラウンフィールド型の「暮らし起点」が重要ではないかとしている。
 ブラウンフィールド型の事例としてバルセロナが紹介された。バルセロナも当初はテクノロジーが起点であったため、ICTがスタートとなりバラバラに取り組んでうまくいかなかった経緯があったという。その反省を踏まえ,市民を中心としたアプローチに変えた(Decidim(オンライン掲示板)の活用)ところ、市民の70%が参加し,行政との協働でアイデアを出し合い政策に落とし込まれていくという動きがあった。こうした政策転換がバルセロナのスマートシティの成功につながり世界から注目されるようになったという。
 これに対し失敗事例としてカナダのトロントがあげられた。グーグルの関連会社が手掛けた取り組みは,住民起点ではなくテクノロジー起点であったため、データを活用すればこうしたことができる,という視点であった。このプロジェクトにはコロナ以前から住民から激しい反対運動があったため、結果コロナになって,親会社が撤退してしまった。不動産市場の変化を理由にした撤退であったが,伊藤氏からみれば生活者視点の欠如による失敗が本質であったのではないかとしている。
 

 
COVID-19で加速した場所性の変化と具体的なケース
 最後に伊藤氏はプレイス,場所がどうなっていくかについての事例に自社の取り組みを紹介した。そこでは全国に散らばるメンバーからなる混成チームにより,愛媛県のデジタル総合計画策定の支援を行ったが,コロナにより愛媛に集まることは1回しかなく,遠隔地からのコンサルティングが可能となった。また自治体の取り組み事例として,福島県磐梯町における「オンライン審議会」の事例(オンラインを活用した審議会のプラットフォーム化)や,加賀市長によるスマートスタートアップ支援の事例が紹介された。
 講演の最後に,伊藤氏は10年後の未来予測として,①教育のオンライン化が進み,働く場所,暮らす場所の制約から解放される,②経済圏にほど近いところにある人口数万人の町,村がいち早く,スマート化を達成している,③CXを軸にテック,非テックの連合によるスマートシティが実現しているとし,結んだ。
 
 質疑応答ではスマートシティであることは,プレイスの価値になるのか,スマートシティは手段ではないのかという指摘にはじまり,多様性を軸に自治体がアウトカムを適切に設定でき,ブランディングの方向に向かい,多様性を担保していけることにつながるのではないか等が議論された。
 最後にファシリテーターによりプレイス・ブランディングはブラウンフィールドだとの指摘とともに,スマートシティとプレイス・ブランディングがどう向き合うのか,そうしたテーマ設定で再度議論が必要でないかとし会は終了した。

 
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