日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2021」 |
2021.10.17
日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2021」
日本マーケティング学会は、日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2021」を発表しました。これは、マーケティング理論や実践の普及のため、1年間に日本で出版されたマーケティング書籍(翻訳本を除く)を対象に、日本マーケティング学会の会員が推奨する優れたマーケティング書籍として投票形式で選出するものです。「日本マーケティング本 大賞2021」は、10月17日(日)開催の「マーケティングカンファレンス2021」にて、発表および授賞式が行われました。
本年は、10作品がノミネートされ、2次投票の結果、「日本マーケティング本 大賞 2021」の受賞書籍は以下の通りとなりました。なお、以下の推薦理由は、2次投票の際に記入された個別の推薦理由を事務局でとりまとめたものです。
日本マーケティング本 大賞2021 大賞
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:写真上段左より、会長の小林哲氏・司会の八塩圭子氏・圓丸哲麻氏、中段左より鈴木和宏氏・西原彰宏氏・有斐閣の柴田守氏、下段は和田充夫氏
『ブランド・インキュベーション戦略:第三の力を活かしたブランド価値協創』
和田 充夫・梅田 悦史・圓丸 哲麻・鈴木 和宏・西原 彰宏、有斐閣、2020年11月刊行
推薦理由
「ブランド構築に有用な最新知見を提供する研究業績であり指南書」
ブランド研究の系譜に基づいた上で、供給者や受容者とは異なる「第三の力」という新しい視点によって議論を拡張し、実務にも有用な新たな地平を開拓した好著である。
顧客との関係性を考える上での最新の知見が整理されているだけではなく、ブランド構築の方法がブランド育成段階別に理論、実践の両面から検討されており、実務と研究の両方の側面で学びの多いものになっている。ブランド研究の大家と気鋭の若手研究者が実務家とともに形成した研究会の成果であり、事例が豊富に紹介されているとともに、緻密な分析を通じて理論的な貢献が導出されている。
日本マーケティング本 大賞2021 準大賞
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:左上から時計回りに、会長の小林哲氏・司会の八塩圭子氏・畢滔滔氏
『シンプルで地に足のついた生活を選んだ ヒッピーと呼ばれた若者たちが起こしたソーシャルイノベーション :米国に有機食品流通をつくりだす』
畢 滔滔、白桃書房、2020年11月刊行
推薦理由
「消費文化研究に取り組む上での模範となる読み応えのある1冊」
有機食品流通・マーケティングというテーマをソーシャルイノベーションの切り口から論じることで、リソースが有機的に結びつき市場が出来上がる様を示した良書である。
米国における有機食品流通の時間的変化を丁寧に掘り起こし正確に記述することで、サステナビリティへのムーブメントという大きな消費文化・ライフスタイルの転換を示すとともに、本物の文化コンテンツ育成に示唆を与える1冊である。精緻なレビューと長年にわたる丁寧なフィールド調査に基づいた、問いおよび答えが明確に記された第一級の研究書であり、研究視点においても研究方法においても後続する消費文化・マーケティング研究者にとって指針となる希有な書籍である。
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:左上から時計回りに、会長の小林哲氏・司会の八塩圭子氏・写真左より早稲田大学出版部の武田文彦氏・寺﨑新一郎氏
『多文化社会の消費者認知構造:グローバル化とカントリー・バイアス』
寺﨑 新一郎、早稲田大学出版部、2021年2月刊行
推薦理由
「グローバル時代の消費者心理を検討した現代的示唆の多い1冊」
対外感情と消費者行動の背後にあるメカニズムを、質と量の両面から理論的に解き明かした、グローバル化が進展した時代に求められる良書である。
カントリー・バイアスの捉え方をポジティブな側面に焦点を当て発展させることで、国・地域がそれぞれ独自の文化を有する多文化社会の消費者行動を体系的に論じており、グローバル化が進展する中での多文化社会の理解とこれからの実践に多くの示唆を与えている。社会構造に大きく依拠する消費者認知の構造が、多文化社会において如何なるものになっているかを実験や分析によって解明するだけではなく、国際マーケティング研究の最先端を知ることができる数少ない学術書でもある。