日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2023」 |
2023.10.30
日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2023」
日本マーケティング学会は、日本マーケティング学会員が選ぶ「日本マーケティング本 大賞2023」を発表しました。これは、マーケティング理論や実践の普及のため、1年間に日本で出版されたマーケティング書籍(翻訳本を除く)を対象に、日本マーケティング学会の会員が推奨する優れたマーケティング書籍として投票形式で選出するものです。「日本マーケティング本 大賞2023」は、10月29日(日)開催の「マーケティングカンファレンス2023」にて、発表および授賞式が行われました。
本年は、8作品がノミネートされ、2次投票の結果、「日本マーケティング本 大賞2023」の受賞書籍は以下の通りとなりました。なお、以下の推薦理由は、2次投票の際に記入された個別の推薦理由を事務局でとりまとめたものです。
日本マーケティング本 大賞2023 大賞
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:1列目左より、東洋経済新報社の黒坂浩一氏、編著の内田和成氏、会長の西川英彦氏、2列目は共著者の皆様
『イノベーションの競争戦略:優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?』
内田 和成(編著)、東洋経済新報社、2022年4月刊行
推薦理由
「マーケターの実践に示唆を提示する、行動変容としてのイノベーションの理解」
本書では、顧客の行動変容こそがイノベーションの本質であると捉えた上で、それを実現するマーケティング戦略が明快に解説される。社会構造・心理変化・技術革新という「イノベーションのトライアングル」がドライバーとなり、新たな価値を創造し、その新しい価値が顧客の態度を変え、さらには行動を変えることによってイノベーションが創出されるプロセスが豊富な事例と共に描き出される。
従来、新製品・サービスの開発とマーケティングとは区別されることが多かったが、行動変容の達成までを射程に含めることで、著者は、イノベーションの創出のために、マーケターや大企業が何をなすべきかについて、革新的なアイデアと実践的戦略を提示する。
日本マーケティング本 大賞2023 準大賞
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:左より、会長の西川英彦氏・水越康介氏
『応援消費:社会を動かす力』
水越 康介(著)、岩波書店、2022年7月刊行
推薦理由
「応援と消費を結び付ける論理から、新しい消費社会の可能性を描く」
本書は、「応援消費」と呼ばれる新たな消費行動に光を当て、これからの時代の消費を理解するための深く鋭い視点を与えてくれる一冊である。筆者によれば、東日本大震災からコロナ禍にかけて注目されるようになった、苦境の人や企業を消費で支援する動きが生み出された背景には、利他的な感情と経済の論理が対立し、時に調和していく歴史があった。
ふるさと納税のような実際の事例を通じて、「贈与の交換化」という現象が解説されるため、実践的な洞察を得られると同時に、理論的な気付きが促される。新しい消費社会の可能性を明らかにする本書は、今後のマーケティングや本学会のあり方にも大きな影響を与えるものである。
*写真左:受賞書籍(詳細へのリンクあり)
写真右:左より、会長の西川英彦氏・碩学舎の廣田章光氏
『進化するブランド:オートポイエーシスと中動態の世界』
石井 淳蔵(著)、碩学舎、2022年8月刊行
推薦理由
「進化するブランドの本質を、日本的ブランディングと新たな理論視座から探究する」
本書は、「反進化型」と「進化型」という2つのブランディングを比較しながら、ブランドの動態と進化の本質、それを促す文化的土壌について、実践的・理論的に明らかにした大著である。「ブランドらしさ」の形成と進化を、オートポイエーシスや中動態といった新しい視点で探求しており、非常に深い示唆を得られる。同時に、無印良品など日本的なブランディングの豊富な事例を用いながら、平易な筆致で展開されるため、マーケティング初学者にも理解しやすい内容となっている。
著者独自の優れた見解によって示される、ブランドに対する本質的な理解は、研究としての貢献だけでなく、実務者に対しても極めて高い重要性を持つものである。
マーケティング本 大賞 ノミネート作品2次投票結果
*2次投票として学会員はノミネート作品の中から、上位1~3作品を選び専用フォームにて、順位をつけて投票。
*投票の得点換算は、1位=3点、2位=2点、3位=1点。
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