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研究報告会レポート

第7回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(春のリサプロ祭り)レポート「インダストリー・イノベーションからの問題提起」

第7回 インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(春のリサプロ祭り)
> 研究会の詳細はこちら > 春のリサプロ祭り
テーマ:「インダストリー・イノベーションからの問題提起」
日 程:2019年3月16日(木)
場 所:青山学院大学青山キャンパス
 
【報告会レポート】

論題「データ時代、変化する企業のなりわいとブランド戦略」
朝岡 崇史(株式会社ディライトデザイン 代表取締役)

 データ時代に突入し、企業の「なりわい」は従来のモノやサービスの「売り切りモデル」から、体験型サービスの「サブスクリプションモデル」へと大きく変貌を遂げている。そして今後、これからの企業間競争は、AI・5G・ブロックチェーンなどの導入を前提とした、より大掛かりな社会イノベーションへと戦いのステージを移すことになるだろう。
 その際、覇権を狙う企業に求められるのは「組織の意思」であり社会的な役割を明確に指し示すブランドの「パーパス」の打ち出しである。なぜなら、企業間の競争ルールもGAFAに代表される、卓越した1社が独走する「デファクト・スタンダード」(de facto:事実上の)から、行政も含む複数企業の共創による「デジュール・スタンダード」(de jure:合議の)が主流となるからだ。 
 「パーパス」がデジュール型のイノベーションをひとつに束ね、推進する顕著な事例として、ラスベガスで自動運転タクシーの実証実験を展開するリフト(Lyft)と5G事業化を機会点に先端医療やコミュニケーション革新などを推進する米ベライゾンを取り上げる。そして、データ時代の「企業の活動系システム」を担うブランドの新たな可能性について考察して行く。
 

論題「生活のスマート化への取り組みからの、ブランディングへの問題提起」
徳永 朗(多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授)

 德永からは、「食生活を変えるフードテックへの取り組みが企業に与えるインパクト」のタイトルで報告がなされた。まず、デジタル技術とデータ活用が食体験を変える状況・テーマを1)食べ物そのもの、2)買物や家庭での在庫、3)調理体験、4)外食体験、5)食の価値の増幅という5つの領域で捉えた。同時にそれらについて、欧米での先進事例ではあるものの、近い将来わが国でも普通の人々の暮らしに浸透するであろう事象を紹介したうえで、バリューチェーンの変化や個々のプレイヤーの役割の変化といった視点で捉え直した。例えば、“スマートキッチンの取り組みの本質は、調理行動を起点にしたモノとサービスの統合的な体験設計”、“外食産業のデジタル活用で境界の曖昧化が進む、内食・中食・外食の3層構造”、“買物・在庫まわりで起きている、価値のパッケージングをめぐる顧客起点のビジネスモデル競争”などである。それらは企業が対応すべき、新たに生まれつつある変化に関わる問題提起でもある。
 以上の議論を踏まえて、本論ではデジタル技術とデータ活用の時代の新たな食体験を支えるためのマーケティングの仕組みをどのように変革させるべきか、その課題領域と方向性に関する示唆を行った。さらに、その結果、今後の食に関わる企業等においては、事業が創出する価値に着目してそれをステイクホルダーと共有するブランディングの議論がなじむという仮説の下、ブランド研究の知見を活用しうる領域についての試案も論じた。 

 
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