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研究報告会レポート

第2回マーケティング/PRテクノロジー研究報告会レポート「コロナ禍で進むデジタル化: ニューノーマル時代に求められるマーケティングPRテクノロジーとは」

#いまマーケティングができること

第2回マーケティング/PR テクノロジー研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら

テーマ:コロナ禍で進むデジタル化: ニューノーマル時代に求められるマーケティングPRテクノロジーとは

  1. Business Wireを活用した海外PR業務のデジタル化
    岩崎 雄太(ビジネスワイヤ・ジャパン株式会社 カスタマーサクセス アカウントマネージャー)
  2. PRオートメーションを活用したDXの推進
    雨宮 寛二(プラップノード株式会社 COO)
  3. 究極のPESOモデルガイド
    馬見塚 堅(Meltwater Japan株式会社 Enterprise Director)
  4. PR業務デジタル化に関するディスカッション
    織茂 洋介(ITmediaマーケティング 編集長)
    加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

日 程:2021年3月13日(土)10:30-12:00
場 所:Zoom使用によるオンライン開催

 

【報告会レポート】
 今回の報告会では、以下2パートにて構成された。
・PRテクノロジーを提供している3社からのセッション
・PR業務デジタル化に関するディスカッション
 

セッション①「Business Wireを活用した海外PR業務のデジタル化」
岩崎 雄太 氏(ビジネスワイヤ・ジャパン株式会社 カスタマーサクセス アカウントマネージャー)

 デジタルを活用したプレスリリース配信を手がけており、配信ネットワーク160カ国・10万メディアにわたっている。
デジタル化ツールを使うメリット
①エディターによる編集作業
 配信自体は配信システムを使うものの、エディターによる編集作業を取り入れている。誤字脱字のチェックはもちろんだが、配信内容にキーワード付けを行うことで、メディア・ジャーナリストが欲する情報を的確に配信しやすくなっている。
また、海外では、日本と異なる法律を制定していることもあり、商材や内容によっては配信が不可能である。そういった面でもエディターによる編集作業は大きなメリットになる。
②メディアリストの作成やメンテナンスが不要となる
 専門の担当者が新しいメディア開拓とメンテナンスを実施しており、常に最新のメディアリストに配信することができる。
 一人一人のメディアにコンタクトして受け取りを許可しているメディアのみを登録しているので、受け取ってもらいやすい。
 
PR業務のデジタル化による利点
・簡単に一斉に配信できる
・管理ページを共有できて、情報共有も簡単。
 
昨今のプレスリリースのトレンド
 コンテンツ自体がデジタル化が進んでいる。リリースに写真・画像をつけるだけでなく、動画を利用するリリースが非常に増えてきている。
 また、メインのビジュアルの上にyoutubeやSNS情報を取れるようにするなど、リリースの一つのページでより多くの情報が取れるようなインタラクティブなファイルを置いている企業が増えている。このようなインタラクティブなビジュアルコンテンツを活用することで、開封率・シェア率・滞在時間が向上する。
 
 デジタルを活用した情報発信、今後も増えていくと想定。ツールをうまく使って、効率的な広報活動につながるのではないか。
 
ー質疑応答(一部)
・コンテンツのインタラクティブ化は、コロナと関係ある?
コロナだからというわけでもない。ただ、展示会とか直接メディアと会う時間が減っているのでよりインタラクティブな情報を出したいという傾向は出ている。コロナだからこそ発達したきっかけにはなっているかと思う。
 

セッション②PRオートメーションを活用したDXの推進
雨宮 寛二 氏(プラップノード株式会社 COO)

 PRオートメーションは、広報後業務そのものを DX化すべく国内初のPRを自動化する初めてのクラウドツールとして半年ほど前にリリースされたサービス。
 
サービスの背景
 広報の主な業務において使っているアプリケーションは2015年と2005年でほとんど変わっておらず、この状況に危機感を感じていた。
 また、富士キメラ総研の調査によると、DX国内市場(投資金額)は2019年の7912億から、2030年に3兆425億へと拡大すると予測されており、DXはもはや一過性のブーム・流行ではないと考えられる。
 
キーコンセプト
・PRツールとしての現代化
 ターゲットの行動補足、リレーション活動の蓄積、ターゲットのグルーピング、SNS反響のインパクト計測
・単純作業の自動化
 クリッピング自動集計、メディアリスト作成の容易化、リリース配信のフロー化、問い合わせ歴の集積
・成果と過程の見える化
 リリースごとの効果管理、問い合わせパイプライン管理、重要KPIのダッシュボード化、ワンログインで情報共有
→現代的なツール機能を実現し、広報担当者の余計な手を動かす必要がなく、疲弊することなく成果と過程を見える化する。
 
実際のプロダクトの一部
・PR効果を見える化
 メディアの興味・掲載数・社会へのインパクトを一つのグラフで把握することが可能。広告換算や推計リーチも自動算出される。
・対応履歴を見える化
 問い合わせ対応を5つのステータスに分けて1画面で把握できる、ワンタッチでステータス変更ができる。
 いつどれくらいの問い合わせが入っているのかどう動いているのか広報部全体の動きを一つで管理できる。
・リスト作りの効率化
 リスト内容の視覚化し、記者を簡単グルーピング可能。配信リストから指定だけでなく、既存で繋がりのある記者情報のインポートもできる
・メディアとの関係の見える化
 開封や画面リンククリックなど情報をグラフで表示される。ワンクリックでアプローチ歴を管理することもできる。
 
今後の展望
 DX本格化はこれからなので、視認性と見える化の促進など、広報の生産性向上のためにUXを磨きたい。
 
ー質疑応答(一部)
・導入企業の傾向は?
 広報部をしっかり持っている会社。3分の2くらいは中堅から大手。BtoB企業・BtoC企業の割合は半々
 
・広報をある種コストセンターと思われ投資を渋られることは一般論からあるが、経営目線変わってきているか?
 変わってきている。コストセンターをそのままにしておくことが難しくなっているのではないか。
 

セッション③究極のPESOモデルガイド
馬見塚 堅 氏(Meltwater Japan株式会社 Enterprise Director)

 日本では主流のアーンド・ペイド・オウンドといういわゆるトリプルメディアに、拡散力であるシェアードメディアを追加したものがPESOモデル。当たり前だが、各指標それぞれ目的_効果・課題点が違う。強みを生かし、弱みを補填しながら運用することで、相乗効果〜売り上げアップが期待できる。
 
PESOモデルを社内活動に当てはめると課題が見える
 社内活動に当てはめると、現実として課題が多い。
例) オウンドメディア…コンテンツチームが別にいる。コーポレートSNSは広報担当・商品SNSはマーケティング担当
   アーンドメディア…広報担当が記事チェック、マーケティング担当はソーシャルリスニングでチェック
   ペイドメディア…マーケティング部がSNS広告だが、記事広告は広報担当
→別部署で別ツールを使っている・管轄が違うから連携していない・それぞれ別予算などの現実があり、全体の連携が取れていないことで、メディア同士の相乗効果が薄れてしまうことが多々ある。
 
デジタルメディアでの情報の流れ
 コンテンツ制作→オウンドメディア→ニュースメディア→ソーシャルメディアの流れに加え、ソーシャルメディアで消費者の動きを見てニュースメディアが取捨選択してニュースを出す事象も多く、なぜその事象が発生したのかという問いかけをすることが増えている。効果測定に向けた原因分解をすることが大切で、すべてインサイトとして蓄積し、次のコンテンツ制作に役立てることもできる。
 
デジタルメディアから分析
 デジタルメディア上で取得可能な指標は非常に多い。そのため、自社と競合サービス、サービス別の認知度のチェックだけでなく、顧客満足度の分野把握もできる。
 メディア露出傾向・記事数(オウンド発信記事・アーンド記事、その他で分けられる)・ソーシャルシェア数を可視化できる。他社と比較し、なぜバズったか・どんなキーワードの記事がSNSで刺さったのかといった答え合わせができる。
 
正しい分析には何が必要か?
・公平なルールによる比較を徹底する
例)Apple to Appleなキーワード条件(インプットを正しくしないと誤ったデータが出てきてしまう)
指標を正しく捉えているか(自社数値だけでなく、他ブランドを複数比べて成長率を見るべき。同じ数字でも結論が変わってくる)
・「業界」ベンチマークと「相対的」ポジショニングが重要
 他社も同様に数値を伸ばしている可能性や業界自体が増大/減少している可能性を加味し、業界を定義・その全企業に対象に比較する必要がある。Webメディアの数は年々増え、メディアやSNSのデータ量は日々増えているため、全てを取得できるシステムは存在しないことから、相対的シェアで比較する必要があり、リアルを見て次の施策につなげていくことが大切である。
 
デジタルメディア全般におけるパフォーマンス向上のヒント
 デジタルにおけるメディアの強み・弱みを理解し、部門の壁を超えて足りないスキルをオープンに補完する。適切なデータ取得をし、コンテンツ作りにもデータを活かしていくべき。他部門とのコラボレーションをうまくさせていくことでパフォーマンス向上につながる。
 
ー質疑応答(一部)
・PESOモデルを横断的に見るということが重要なのか?
 全体を俯瞰してみていくことがすごく重要。他の分野でどういうメディアに載ってどういうバズりがあるのか?違う業界においてもヒントは隠されている。自社以外のベストプラクティスを可視化できることから調査ツールとしても利用可能。
・ジャーナリストを見つける機能は日本も対応?
 海外、特にアメリカ・ヨーロッパで展開している。将来的にも日本の導入も期待したい。
 

ディスカッション:PR業務デジタル化に関するディスカッション
織茂 洋介 氏(ITmediaマーケティング 編集長)
加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

PR担当の業務は属人的になりやすい
・ツールを使って効率化・仕組み化、そしてデジタル化が必須ではないかと言われている。
・現状としてはPRマーケティング境目が曖昧になり、業務が多様化・増加しており、広報PR担当者の疲弊。さまざまな要望を抱えている。
・広告業界はアドテク・営業ではCRM/SFA・マーケティングではMAでデジタル化が進んでいるが、広報PR領域では遅れている。
 
広報PR領域のテクノロジーツール
 PR Technology landscape in Japan(JP/2021/03)では、主に4つの区分(Tradirional・Social・Research・Other)に分けられている。
 
ー配信を行っている企業(一部)
新規参入ー機能が強化され統合型クラウドに進化?
 ・News Direct 現在北米のみ・地域文字数関係なく一律
 ・Cision 配信+クリッピング 
規模拡大
 ・PRtimes 利用企業者数50000社を超え、記者に届けるプレスリリースよりメディア化が進んでいる。SNSでもPRtimesそのまま拡散する人も増え、メディアとしても強くなってきた。
 
ー仮想記者クラブ/ポータル型
過去にもそういったコンセプトのものはあったが定着はしなかった。コロナ禍で複数社がサービス提供を始めている。
企業広報のニーズは理解できるが、記者の立場で参加のモチベーションを見出せるか?
 
その他:Spark Amplify
AIを使ってユーザー企業の知名度を上げる支援をする企業。進化しているPRテクノロジーとして興味深い。
 
・PRテックを使って、スマートなメディアリレーションを
メディア側としてカテゴリー違いの情報にも関わらず電話での情報連絡も多い。電話かけさせてしまって申し訳ない気持ちも。PRテックを活かしてスマートにやって欲しい気持ちがある。先程のセッション内であった「人手でキーワードタグ付け」も良いが、AIが進化しそれを担ってくれたらすごく良いと感じる。
 
・PRテックがマストハブになってきている
①広報業務のDXという元からあった課題がコロナ禍で健在した
②コストセンターであるPRに何らかの成果の可視化を求めている企業が増えてきている。
 新興のSaas企業はデータを定量的に見るから広報にも求めることが多い。成果を可視化するために投資をすべきという考え方を持っている。
 今までの人海戦術ではなく、Bccにアドレスを入れて1個1個メールを送るのではなく、ツールに任せることも必要。
 
・ BIツールへの連携を求める企業も増えている→会社全体で把握したいというニーズが増えている
 成果を可視化するという部分は、広報の中だけでみているのではなく、会社全体の動きの中に広報のデータも含めてみたいというニーズも増えてきている。経営の意思決定にも広報の数値が関わってくることで、広報のDXだけでなく社内全体のDXにも関わってくるのではないか。
 
・広報部門の問題は予算をあまり持っていない。
 マーケは売り上げにつながるから予算取れやすい。広報はお金を使わずに記者に書いてもらえる文化があるが、ここにきて変化?
 やはり大企業しかPRテックを入れることができていないのが現状。
 Saasの企業と相性がいいというのはデータトリブンのマーケティングを極めているため、マーケティングだけだと限界があると気づいている。長期的に愛される情報発信力が必要だという結論に至っている。本来の広報のバリューを認めていて、そこの可視化が重要だと思う。(PRからリードを取ってこいという話は本末転倒。)
 短期ではなく長期の視点が重要で、PRが本来担うべき役割をしっかり果たした上で成果を認めてもらう。
 
【報告会を終えて】
 新型コロナが影響でPRテックが成長しているのかと感じていたが、今回のセッションでそれは一つのきっかけであって、PRとマーケティングの業務境目が曖昧になってきている部分や、本来の広報バリューを認めマーケティングとともに動かす重要性を理解した企業が増えてきているという側面からPRテックがさらに成長しているという面を強く感じました。
 今後の広報・マーケティングのあり方を考え直すきっかけになりました。ありがとうございました。
 
(文責:高梨 杏奈)

 
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